学習と再学習からリハビリを考える

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本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

リハビリテーションにおいて、学習はかかせません。

「○○が出来るようになる」

時には、学習が大きく関与しています。

ですが、リハビリにおける学習はそのほとんどが【再学習】によって行われます。
つまり、1度学習したことを再度学習することがほとんどです。

起き上がりや立ち上がりなどの基本動作は、脳卒中などを発症する前は無意識で行われていた動作です。
これらの動作をもう1度出来るようにするのがリハビリの目的になってきます。

この様にリハビリは再学習であることを意識して介入することは大切なのでしょうか?
今回はこの学習と再学習について書いていきます。

1度出来ていたことのメリットとデメリット

経験したことがないことが出来るようになる学習と、1度で来ていたことの再学習とでは何が違うのでしょうか?
学習にはいくつかの理論があり、学習自体の方法も様々です。
報酬を得るために、予測と結果にもとづいて洗練化していく過程をもつ学習は、今までの経験から様々な試行錯誤を行っていきます。

では再学習はどうでしょうか?
例えば立ち上がりを獲得したい時に、発症前の立ち上がりの記憶は役に立つのでしょうか?
答えはイエスです。
脳が損傷し、運動や感覚が発症前と異なっているとは言え、身体の構造などは発症前と当然変わらず、立ち上がりに必要な手順などの大切なポイントは変わりません。
つまり、発症前にどうやって立ち上がっていたのかを参考に、今の脳でどうやったら立ち上がれるのかを考えることは、再学習においてとても大切になってきます。

ですが、発症前と「同じように」立とうとすると、内反や反射などの異常な反応が出現してしまうため、今の脳で身体を認識出来ていることが重要です。

脳卒中における学習の落とし穴

先ほど書いた通り、学習にはいくつかの理論があります。
これらを参考に、リハビリを組み立てていくことは非常に重要です。
ですが、ここで1つ重要なことが見落とされてしまうことが多々あります。
それは…

【リハビリは病気を患ってしまった方を対象としていること】

 どういうことでしょうか?
つまり、学習理論がそのまま使用出来ない人が多くいるということです。

例えば、学習は今よりも効率よく出来るようになることが大切ですが、脳卒中などの疾患では効率よく出来るようになるではなく、動作をどんな方法でも出来るようになることが目的とされることがあります。

その代表例が分回し歩行です。
股関節や膝関節が上手く動かせず、歩行の時に下肢を振り出せない時に骨盤から動かすことで振り出しを行おうとします。
これは非常に効率が悪いはずですが、学習され定着していきます。

 このように、効率面ではなく動作を何とかして行うことが目的となってしまうのです。

このことに加え、脳に疾患をお持ちの方は、学習そのものが健常者とは異なる方法で行われる可能性があることを考えなければなりません。

  • この患者さんはどうやって学習していくのだろう?
  • 何が手掛かりなんだろう?

と考えて患者さんの解釈をしていくことが大切です。

 論文や知見をそのまま取り入れるだけではなく、患者さんのリハビリの参考にするという意識も大切です。

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予測なしで動くのは大変…?

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人は運動しながらいろいろなことを感じ、感じるために動いて生きています。
日常生活においても実感できるこのサイクルは、行為を行っていくためにはなくてはならないものです。
例えば、

  • シャンプーがあとどれくらい残っているのかを確かめるためにボトルを持つ
  • ベッドを買うときに、硬さを確かめるために座る
  • タオルの手触りを確かめるために優しく触る

この時、思っていた感じと違っていた時の驚きを誰もが感じたことがあるのではないでしょうか?

  • シャンプーが思っていたより少なくて、軽かった
  • ベッドのマットレスが思っていたより柔らかくて、座ると凄く沈んだ
  • タオルの手触りが思っていたより硬く、手触りが悪かった

このような現象はどうして生じるのでしょうか?
これを知っておくと、人の動きのメカニズムを知っていく上で大切な手掛かりとなります。
今回はこの「予測」について書いていきたいと思います。

視覚からいろいろなことを予測している

人には五感があります。

 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚(体性感覚)の5つですが、人が行為を行う上で最も多くの情報量を脳に提供しているのが「視覚」です。
 <百聞は一見に如かず>という諺があるように、人の視覚に対する信頼度は非常に高いことがうかがえます。

では、人は行為において視覚からどんな情報を得ているのでしょうか?
いくつかの行為で考えて行きたいと思います。

上肢と視覚

1.コップを持つ

 コップなどの物を持つ時には、視覚はどの様な情報を脳に提供しているのでしょうか?

  • 物の同定:これから持つために見ている物が「コップ」だと認識するための情報
  • 物の位置の同定:
    コップがある場所がどこかを認識するための認識。自分から見て正面かどうか?机のどこにあるか?など様々な空間内で認識が必要
  • コップの重さの予測
    今まで持ったことのあるコップなどから今から持つコップの重さを予測することで、どれくらいの力で持ち上げれば良いのかの手掛かりとする。
  • コップの触覚の予測
    コップに触れたときの手触り、硬さ、温度などを予測して、コップを持った時の力加減や触れる面積などの手掛かりとする。

コップを持つ時の視覚の特徴としては、コップを認識して手を伸ばす方を決定するリーチングに関することと、コップを持つことに必要な<予測>をすることにあります。

2.鍵穴に鍵を入れる

  • 鍵穴を認識する:コップの認識と同様
  • 鍵穴の位置と向きを認識:コップの時の位置と同様
  • カギを入れた時、また回したときの感覚の予測
    鍵穴に入っているか、また入れた鍵で合っているかなどの手掛かりに使用されます。

コップの時のような【持つ】動作がないため、何かを持った時の予測はありません。一方で、カギを回したときの感覚の予測がされています。

全身運動と視覚

3.段差昇降する

  • 段差があることを認識する:
    歩行から段差昇降をするための動作に変更する手掛かりに使われます。
  • 段差の位置を認識する:
    今の自分の位置からどれくらい先に段差があるのかを認識します。
  • 段差の高さを認識する:
    どれくらいの高さなのかを手掛かりに、足を上げる高さを予測します。

 段差昇降の時の視覚は、段差に関する情報収集を中心に行われます。
安全にかつスムーズに段差をのぼるために必要な情報を視覚が脳に伝えてくれます。

4.外を歩く

  • 周囲環境の情報収集:
    車などの危険はないか、自分の進む方向はどっちかなど環境の把握を行います。
  • 歩行速度・歩行の自覚:
    周囲で流れていく景色と体性感覚と合わせて、自分がどれくらいの速さで歩いているのか、自分の足で今前に進んでいるといった自覚をします。
  • 路面・床面の形状を認識する:

これから歩くところの形状の上を歩くとどんな感じがするのか、その感じに必要な姿勢の制御は何なのかを予測するために使用されます。

予測で動けるようになると動きはスムーズになる!

4つの行為で視覚の役割を見てきましたが、全ての行為で共通しているのが<予測>です。
この予測は、今までの経験や記憶をもとにされるのが前提で、雪の上を歩いたことがない人と毎年歩いている人では、今から雪の上を歩くときにされる予測は全く異なるのは想像に難しくないと思います。

歩いたことがある人は、ほとんど普通の道を歩くように歩けますし、歩いたことがない人はひっぺり越しで全身に力を入れてへんてこりんな歩き方になります。
これは、雪を歩いた経験から、これから雪の上を歩く!という状況ですでに、踏みしめた感覚などを予測することが出来るからなのです。

 この予測は、初めて行った動作の時は働きにくく、動作が習熟すればするほど出来るようになってきます。
つまり、習熟した動作であればあるほど、予測のみで動けるくらい脳の負担は減っていきます。
学習とのつながりが強いんです。
いわゆるルーティーンに似たような感じかなと考えています。

 人がいかに予測で生きているのか、反対に言えば予測が出来なければ人はスムーズに動く事すら出来ないのかがお分かりいただけたと思います。
この予測がもし違うことに使われていたら…痛みがある人が動く前から痛みを予測したり…脳血管疾患の人が代償運動を予測していたら…。

介入に新しい視点を得られるきっかけになれば幸いです。

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そもそも認知ってなに?

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リハビリテーション(以下リハビリ)に携わっていると、認知という言葉に頻繁に触れると思います。
例えば<身体認知>や<空間認知>などのように<○○認知>は皆さんもよく聞くのではないでしょうか?
また【認知症】のように疾患名になっていたりもします。

このように、様々な使われ方をしている認知とはそもそもなんなのでしょうか?
今回は、この認知について書いていきたいと思います。

認知とは自分なりに解釈して対象を知ること

まず認知ということばを考えていく時に最も分かりやすいのは、感覚に関する認知です。
感覚は次のような順序があります。

  1. 刺激が身体にある受容器に加わる
  2. 受容器それぞれに対応した神経を通じて脳に伝達する
  3. 視覚なら後頭葉、体性感覚なら頭頂葉、聴覚なら側頭葉といったように、受容器に応じた脳の領域で処理されていく
  4. それぞれの処理過程で、知覚される段階まで来ると【意識出来る】ようになる
  5. 刺激が【何なのか】を記憶をもとに解釈することで、環境や自己身体を<認知>する

この過程は、感覚-知覚-認知を少し詳しく書いたものです。
視覚なら光、聴覚なら振動、体性感覚なら物理的な力といった刺激を脳で処理していくことで、ただの刺激が意味のある感覚へと変化していきます。

さて、もう少し簡潔にみていきたいと思います。

<感覚>

まずここで言う感覚とは、刺激が脳に伝達された時点でのものになります。
まだ意識もされておらず、絶え間なく脳に入力されているのが感覚です。
例えば視覚では、視野に入っている物は脳に伝達されていますし、座っていれば座圧や接触などの感覚も同時に伝達されています。

<知覚>

この脳に入力されている感覚に対して注意を向けて意識すると、知覚が生まれます。
例えば、視覚で今何かを見ている自覚がある、明るい/暗いなどの差が分かるなどが知覚です。
また、感覚は意識しなくても運動やバランス保持などに使用されていて、正確に使用されていれば知覚と呼ぶこともあります。

<認知>

この知覚を元に、知覚した対象を知ることが認知になります。
この認知には能動性が必要で、自分で認知する対象に注意を向ける必要があります。
注意を向けると、今知覚している物と自分の記憶を比較することで、【解釈(=意味を与える)】します。
例えば、今見ているのは椅子だ。椅子は座るものだ。あの椅子は背もたれがないなどの他の椅子との差が分かるなどが挙げられます。

このように、人は知らず知らずのうちに記憶と比較して知覚を認知し、いろいろなことを知っていきます。

これが【認知】です。

この認知に問題が生じるのが高次脳機能障害になります。

高次脳機能障害は行為を障害する

先ほど書いたように、認知には能動性が必要で、基本的にはこの能動性は行為として現れます。

コップの重さを知るために持つ、反対に持つためにはコップの重さを知る必要があります。ですが、持ってから重さを知るのでは間に合わないので、視覚でコップを認知した時点で、今まで持ったことのあるコップの記憶から、これから持つコップの重さを予測します。

これも【 認知 】です。

このように、行為には認知が必要不可欠で、高次脳機能障害は行為を障害していきます。
この行為を観察/分析することで高次脳機能障害を見抜いていくことが大切です。

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半側空間無視と空間認知

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半側空間無視は非常に有名であるため、臨床において安易に【半側空間無視がある】と考えがちです。ですが、その本質を理解していないと、他の減少と間違えてしまうことも少なくありません。

そこで今回は、混同しやすい注意点を書いていきたいと思います。

半側空間無視(USN)の落とし穴?!

半側空間無視(unilateral spatial neglect:以下USN)とは、「大脳半球病巣と反対側の刺激に対して,発見して報告したり,反応したり,その方向を向いたりすることが障害される病態である(Heilman ら 1993)」と定義されています。
USNの多くは右半球損傷によって生じるため、反対の左側からの刺激を無視してしまうことになります。
よく聞くのは、左側からの呼びかけに反応しなかったり、左側を見落としたりという現象ですね。

一般的にUSNは、視覚性の無視を指すことが多く、先述したような左側を見落とす症状が取り上げられることが多くなっています。

一方で、定義の中で無視する対象は【刺激】とされており、体性感覚的な刺激も無視の対象となります
つまり、麻痺側の身体に対する刺激を【無視してしまう】状態が考えられるということです。

よって、感覚麻痺や身体失認などの現象と混同しやすいことは想像に難しくなく、その判別が必要になる事は言うまでもありません。

また、半側空間無視は回復期で多くが改善した【ように見える】症状でもあり、生活期においては回復期と比べると症状が顕在化している人は少ないと思われがちです。
ですが、半側空間無視の本質は【空間認知の障害】であり、その状態で生活をしていた時期があれば、空間認知に問題が残らない訳がありません

よって、生活期においても【USNの影響】は残っていることが多く、セラピストはそのつもりで評価・介入をすることが大切です。

空間認知を評価する

では、半側空間無視を有している患者さんの病態を理解していく時には、どういうことを考えて、評価をしていけば良いのでしょうか?

ここで大切なのは、USNが様々な空間を認知することの障害であるということです。
その空間が、視覚空間なのか、体性感覚空間なのかなどによって行う評価が変わってきます。

この時に注意しなければならないのが、

  • 視覚性無視と半盲
  • 体性感覚性無視と身体失認
  • 体性感覚無視と感覚麻痺
  • USNと消去現象

これらの混同です。
体性感覚の空間認知に関しては記事(→左片麻痺の体幹の崩れの原因とリハビリの方法)を参考にして頂きたいですが、右半球損傷では空間性注意に問題が生じるため、これらのような混同しやすい現象がみられます。

また、リハビリの目的はUSNがあるということを確定することではなく、高次脳機能障害が行為にどの様な影響を及ぼし、ADLを阻害しているのかを考え、介入していくことにあります。
この正確性をあげていくために、評価があるということを忘れてはいけません。

患者さんが麻痺側の刺激を認知できないのはどうしてなのか?
その事によって空間認知がどう障害されているのか?
その結果、どの行為や動作にどう影響を及ぼしているのか?
これらを考えていくことが大切です。

実際にどう評価していくのか?
その評価結果をどう解釈して介入にいかしていくのか?

これらを知って目の前の患者さんの改善可能性をもっと引き出したい方、ぜひ一緒に成長していきましょう!!

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注意の分配性って間違えやすい。大丈夫かな…??

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昨日オンラインサロンのメンバーで症例検討を行っているなかで<注意機能>の話題になりました。

昨日書いたブログにも書きましたが(注意障害には注意が必要?!)、注意機能には様々な種類があります。

その中で昨日話題にあがったのが、<注意の分配性>に関することでした。

注意を分配するってどういうこと?

注意の分配性とは、2つ以上の対象に注意を向けることです。
その2つの対象に対する注意の量は調整することができて、1:1、2:1などどちらかを多くしたり、少なくしたりが出来ます。
この配分量は、何に基づいて決まるかというと、<意図><難易度>によって決まります。

今から自分が何の目的でどう行動するのか?
そしてそれはどれくらい難しいのか?

によって、目的を達成するためには何に注意を向けなければならないのか?が決定されるということです。

例えば、食事の場面を想像した時に、左手で茶碗を持ち、右手で箸を操作しているとします。(もちろん左利きの方は反対です)
この時、お茶碗を持っている左手と箸を操作している右手では、右手(正確には箸)の方が多く注意が向けられていると思います。
これは、箸で食べ物を掴み口に運ぶことが目的であり、より難しい操作が求められているためだと考えられます。

この注意の配分と併せて話にあがるのが、ダブルタスク課題です。
このダブルタスク課題は、2つのことを同時に遂行する課題で歩きながら話すなどがそれにあたります。
これも注意の配分の機能が重要で、2つのことに適切な注意を配分する必要がある。と考えられますが…。

意識の制限と注意の分配の矛盾

ここで1つ気を付けなければならないのが、

【人は1つのことしか意識することが出来ない】

ということです。

つまり、歩きながら話すといった2つのことを同時に行っていたとしても、話している時は歩行は意識されていません。
先ほどの食事の時も、箸で食べ物を運んでいる時は、お茶碗を持っていることは意識されていません。

よって、注意の分配を考えていくと、2つのことに同時に注意を向けている中で、それぞれ異なる注意をしているということです。

異なる注意とは何か?ですが、端的に言うと能動的注意と受動的注意になります。

  • 能動的注意とは、自分が意図的に注意を向けている状態で、食事場面でいえば箸を持っている側への注意になります。
  • 受動的注意とは、センサーの様な物で、食事の場面でいえばお茶碗を持っている側への注意で、お茶碗が落ちそうになったり、傾き過ぎたりした時に感知できるように働いています。つまり、いつでも注意を向けられる状態を保つ感じです。

このように、1つのことしか意識できない制限をクリアするために、人はいつでも意識する場所を変えられるようにセンサーを張り巡らせながら行動しています。

この意識の制限は他の方法でもクリアすることが出来ます。
例えば、股関節/膝関節/足関節が同時に動いた時、これらすべての関節の動きを知覚するためには、すべての関節に注意を分配しなければならないように思います。ですが、先ほど書いた通り意識できる関節は一つです。

ではどうすれば良いか…?
それは、下肢全体を視覚的にイメージすれば可能となります。
詳しくはサロン内で話していますが、簡単にいうとイメージが各関節の運動覚に基づいているからと言えます。

このように、注意と意識の特徴を捉えて、その制限をクリアし介入を考えて行く。
そのためには、患者さんを正確に理解し、病態を解釈しなければなりません。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない注意をどう考えていますか?
実は動作から注意を観察することも出来るんです…。

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注意障害には注意が必要?!

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<注意障害>は臨床現場では毎日のように聞く言葉です。
実際、脳血管疾患の患者さんでは非常に高い割合で注意に関する能力が低下しています。
ですが、この注意障害に頻繁にあうこと、病態が一見単純に見えることから安易に「患者さん注意障害あるよね」と言ってしまいがちです。

そこで今回は、注意障害を整理しながら、知覚との関係や行為との関係を書いていきたいと思います。

注意障害の本当に大切なことは…

注意はいろいろな分類がなされています。
その中でも最も有名なのが、

  • 持続性:注意を喚起した状態を保つ能力
  • 分配性:2つ以上の物事へ注意を払う能力
  • 転換性(転導):注意の対象を変えるなどの変化させる能力
  • 選択性:注意する対象を意図に応じて選択する能力

です。
この分類が浸透したことによって、臨床では患者さんがどの注意能力の低下が生じていることを判断することが第1段階とすることが多いです。
もちろん検査を実施した上で判断することはとても大切ですが、その前に1つ考えなければならないことがあります。

それは…

【注意ってそもそもどんな役割を持っているの?】

例えば、起き上がる時に注意はどういった役割を持っているのか?
歩行の時はどうか、上肢での道具使用の時はどうか…。

これらを考えなければ、注意障害とリハビリによる介入は大きな距離を持ってしまいます。

これらのことから、患者さんを観察していく上で、

  1. 注意障害が行為や動作にどう影響しているのか?
  2. それは改善出来る可能性があるのか?
  3. 介入の対象になりうるのか?

これらを考えていくことが、注意障害において大切なことになります。

行為では注意はこんな役割がある!の例

そこで、少し例を出して考えて行きたいと思います。

①注意は知覚するためには必須の能力であること

触れている、動いているなどの知覚は注意によって引き起こされます。
例えば、掌がベッドに触れていることを知覚するためには、掌に注意を向けた上で掌を意識しなければなりません

起き上がる時に、ベッドに掌が触れ、圧が加わっていることが知覚されると、自分がどれくらい掌に体重を乗せているのかを認知することが出来ます

もし、掌に注意を向けることが出来なければ、掌を意識することも、触れていることを知覚することも、どれくらい体重が乗っているのかを認知することも出来ません。
こういった状態で、掌をベッドに付けてスムーズに起き上がることが難しいのは想像に難しくありません。
もしかしたら手をベッドにつかないように起き上がるかもしれません。

このように、自分の身体に注意を向けることが出来ない場合は、知覚が上手く行えない可能性が考えられるため、動作や行為に大きな影響を及ぼします。

②行為を行う時に注意する場所は介入の時とは違うことが多い

リハビリの介入では、セラピストが患者さんに注意して欲しい所があります。
その箇所へ注意を向けてもらうために、声掛けや感覚刺激を入力することは珍しくありません。

ですが、その注意して欲しい場所は実際に行為を行うときに注意する場所とは異なることが多いんです。

その代表例が歩行訓練でしょう。
介入では、足底や関節覚など自分の身体に注意を向けるような指示をすることが多いですが、実際の歩行では視覚性の注意を中心に使用しているため大きな差が生まれます。
よって、膝に注意を向けていれば上手く歩けるけど病棟ではうまく出来ないといった、難題にぶつかってしまうということです。

この時に気を付けなければならないのは、患者さんが自然歩行の時に何に注意を向けているのかを知ることです。
もしそこに注意障害が影響しているのであれば、そこを考慮して介入を進めていく必要があります。

このように、行為と注意、注意と介入、介入と行為はそれぞれの関係性を考えて観察し評価をし、介入していく必要があるということですね。

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運動と感覚と記憶と学習と

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リハビリを行っていると、患者さんに覚えて欲しいことと出来るようになって欲しいことがあります。
例えば、起き上がる時に麻痺側上肢をお腹の上においてから起き上がって欲しいときに、動作手順を覚えてもらうための介入を行います。

この時、患者さんは

<記憶すれば良いのか?>
<学習すれば良いのか?>

どちらになるのでしょうか?
今回はこの記憶と学習を臨床上しっかりと選択する大切さを書いていきたいと思います。

覚えてもらえないのは実は学習が必要かもしれなない

最初にも書いたような動作手順を覚えて欲しい時、皆さんはどういった方法で行っていますか?

多くの方は、声掛けによる気付きを与えて覚えてもらう方法を取っているのではないでしょうか。
例えば、麻痺側上肢の管理について教えたあとに起き上がる時、患者さんが麻痺側上肢を忘れていたら、

「〇〇さん、左手忘れていませんか?」

のような感じです。
ですが、麻痺側の感覚障害が重度であったり、無視や失認などの高次脳機能障害がある場合なかなか動作変容が生じないケースがあります。

このような時、声掛けや張り紙などの「記憶」に頼る方法ではなく、体性感覚に基づく運動学習が必要になってきます。

例えば、声掛けだけではなく必ず非麻痺側上肢をセラピストが介助して麻痺側上肢をお腹の上に移動してもらうといった流れになります。
このひと工夫を加えることで、学習が生じやすくなり動作変容がみられてくる方がいらっしゃいます。

体性感覚をどう考えるか

私がまだ学生だった頃の実習で行った病院で、セラピストとして働かれていたPTの方にある質問をされました。

「全く運動に障害がないけれど、感覚が消失している患者さんはどんな風に動くと思う?」

まだ学生だった私は、運動に障害がないなら、感覚が消失していたとしても視覚で代償したりでほぼ普通に動けるのではないか?と。

この運動と感覚の関係性は行為や動作を考えていく上で切っても切り離せない関係です。
動作を洗練していく、エラーに気付く根本は基本的には体性感覚が必須です。
その感覚を、患者さんがどう使うのか?を考えていく事はリハビリテーションにとっては非常に重要であることは間違いありません。

つまり…

感覚があるかどうかの先には、感覚が上手く動作に使われているのか?

を考えていくということです。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない感覚をどう考えていますか?
実は動作から感覚を観察することも出来るんですけどね…。

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脳の右半球と左半球は結局どう違うの?

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脳の大脳皮質は左右で分かれており、機能が異なっている…。
左半球が言語で右半球は空間。

ここまではご存知の方は多いと思いますが、結局どう違うの?具体的には?と悩まれている方も多いと思います。
そこで今回は、本を読んでも分かりにくい部分を、私が経験した1000人弱の右半球損傷と左半球損傷の患者さんを中心に書いていきたいと思います!

右半球損傷と左半球損傷は全く別の病気

脳の右半球と左半球の違いを知る時に、最も役立つのは脳血管損傷です。
つまり、右半球損傷と左半球損傷のそれぞれの患者さんの特徴を捉えて、比較することでたくさんのことが見えてきます。

こういう時の比較は、違いが見えてくるのと同時に、共通点も見えてきます。
例えば、皮質脊髄路の損傷で運動麻痺が生じることなどが共通点です。
この共通している病態や特徴は、左右の脳で大きな機能の差がないことを教えてくれます。

一方で、比較することで見えてくる違いは非常に多く、同じ脳卒中でも左と右どちらの半球を損傷したのかによって全く異なる疾患になっていきます。
ここで重要なのは、血管が詰まる、血管が破れるなどは共通しているけど、後遺症が異なっているという点です。
「左右どちらの脳の」
「どの領域を」
「どれくらいの範囲」
障害されたのかによって、見られる症状が決まってきます。

例えば、頭頂葉を損傷すると次のような症状が見られます。(図1)

図1 頭頂葉損傷による高次脳機能障害の一例

これらを見ると、左半球は言語で、右半球は空間なことが分かります。

では、高次脳機能障害以外で左半球と右半球の違いは生じるのでしょうか?
私の経験が中心にはなりますが、皆さんの臨床と照らし合わせながら読んでみて下さい。

体幹はどこよりも高次脳機能をあらわす

左半球損傷と右半球損傷で、私が最も違いを感じるうちの1つが「体幹」です。
全ての行為の軸となる体幹ですが、その機能の中心は「正中性」です。
つまり、左右対称に保持することが出来る機能です。
安定して楽に座る/立つためには必須の能力です。

この体幹の機能は、左右の半球どちらの損傷をしたのかで大きな違いを見せます。

  • 左半球損傷:硬く回旋がしにくい
  • 右半球損傷;左右どちらか一側がつぶれ非対称

半球間の機能は、それまでの経験や個人差が多いため全員ではありませんが、患者さんの多くがこの傾向がみられています。
理由は定かではありませんが、実際にこのような傾向はあり、空間性の欠如の問題、下行性線維の左右差の問題などいくつかありますが、まだ仮説の段階です。

このように、高次脳機能障害のような特徴的なものから、身体的または感覚的な機能まで、左右半球で違いがみられています。

ぜひ、リハビリを行っていく上での新しい視点としてご活用ください。

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脳の右半球と左半球の違いを整理する

<脳は左右にわかれている>

脳について勉強したことがある皆さんは、ご存知だと思います。
脳が左右にわかれていて、それぞれ役割を持っている結果、左片麻痺/右片麻痺の方の症状が異なったり、左下肢/右下肢どちらを骨折するかによって痛みに関する症状が異なったりします。

ですが、左半球と右半球のそれぞれの機能はまだまだわかっていないことが多く、日々アップデートされていて新しい情報の収集が間に合わなかったり、新しい知識を臨床に取り込むのが難しかったり…
なかなか実際の臨床場面でいかせていない人が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、右半球と左半球の機能を簡単に整理して、臨床場面でいかしていく方法を紹介したいと思います。

優位半球と劣位半球

こんな呼び方聞いたことありませんか?

  • 左半球を優位半球
  • 右半球を劣位半球

これは、人の特徴でもある【言語】の座があるかどうかで優劣を表現しています。

では、右半球は左半球に劣っているのかどうか?ですが、全くそんなことはありません。
これは、右半球を損傷された患者さんのリハビリを行ったことがある、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士(以下セラピスト)の方であれば経験されていると思います。

よって優劣のようなイメージよりも大切したいのは、

  1. 左右それぞれ役割分担がある
  2. 左右の半球が機能して初めて能力を発揮する

ということになります。

この左右の脳は【脳梁】と呼ばれる非常に太い神経束によって結ばれています。
この脳梁には様々な役割がありますが、その中でも左右の脳がお互いに情報共有することで、より円滑に働けるようにする役割を持っています。

ちなみに、最近ではよく耳にするようになった【半球間抑制】は、左右の脳がそれぞれ抑制と促通をしあっているメカニズムになります。

このように、左右の脳がどう関係しているのかなどの脳全体の特徴を知ったうえで、左右半球それぞれの役割を知ることが大切です。

左は言語、右は…?

先ほど書いた通り、左半球は言語に深く関わっています。
これは、ブローカが左半球に言語の中枢があることを発見した時から周知されています。
また、臨床上でも左半球を損傷すると【失語症】といった言語障害が生じることからも経験できます。

では、右半球はどのような役割があるのでしょうか?
失語症のように、脳損傷に伴う症状から考えて行くと、半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)や身体失認といったものがみられます。
これらの点から考えると、右半球は<身体への注意と、空間への注意を向ける能力>があると言えます。
つまり、目で見ている物に集中する、動いている身体に集中するなどの能力です。

このままだとまだややこしいので…
一言でいうと<空間認知能力>の基盤の多くが右半球にあるとなります。
前にも書いた通り、右半球だけで空間を認知しているわけではなく、左半球と連携していますが、右半球が重要な役割を持っているイメージです。

このように、左右の役割の大枠を掴んでおくと次に書く臨床でのいかし方がわかりやくなります。

左右半球の特徴から臨床を深化する

では、ここからは臨床について書いていきたいと思います。

ここまで書いてきた通り、左右の脳にはそれぞれ役割があり、特徴を持っています。
これらを考慮して、観察/分析/介入を行っていくとより深く臨床を組み立てることが出来ます。

私は、左半球損傷、右半球損傷それぞれの患者さんは全く別の疾患だと考えています。
それぞれ行う観察、情報収集、介入をわけています。
さらに、コミュニケーションや介入中の声掛けまで全て工夫しています。
実際にどうやっているのかはオンラインサロンでお話していますので是非!!

いかがでしたでしょうか?
本記事では本当にさわりの部分しか書いていないので具体的ではありませんが、楽しく臨床が出来る秘訣でもありますので、興味がある方は是非下のお問い合わせフォームからご連絡ください!!

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脳は身体をどう動かしている?

お読みいただいている皆さんこんにちは。
本サロンを運営しております、理学療法士の唐沢彰太です。

人の脳が、どうやって身体を動かしているのかご存知ですか?
【○○筋を動かす】
のように、筋レベルでコントロールしているのか?
それとも
【膝を伸ばす】
のように、関節レベルでコントロールしているのか?
本記事では、この点について書いていきたいと思います。

筋力トレーニングの落とし穴

歩行獲得を目指す整形外科疾患の患者さんでは、骨折をした側の安定性を向上するために、中殿筋の筋力トレーニングがよく行われます。
歩行中の立脚期において、ふらつかないためには中殿筋が重要だと考えられているためです。
これは、リハビリの中では中殿筋の筋力低下が原因と考えられていることが一般的で、介入においても【中殿筋の筋力強化】が行われます。
これは、学校で教育されており重要な視点です。

このようにリハビリにおいて、ある動きが難しい時にその動きを主動する筋に問題があると考えられます。
問題には、筋力不足や運動麻痺などがあり、それぞれ介入方法が分かれてきます。
一見自然な流れの様に見えるこの考え方ですが、ここで1つ疑問が生じます。

目的志向型の脳

最初に書きました通り、身体を目的に沿って動かすためには、脳からの指令が必要です。
よって、目的に応じて指令が変化するとなると、筋力トレーニングの時は筋力トレーニングのための指令、歩行の時は歩行のための指令があることが分かります。

となると…
【筋力強化で得た、中殿筋の筋力は本当に歩行の時に使用されるのか?】
が気になってきます。

これは、簡単に言えば、横向きで寝ている時に、歩行の時と同じように中殿筋に力を入れてみてくださいと言われても、何を言われているのか分からないのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、歩行の時の中殿筋の働きは、歩行の時にしか発揮できないという事になります。

これは歩行中の中殿筋に限らず、立ち上がりをスムーズにするために大腿四頭筋を鍛えることは、立ち上がりの時に使用される大腿四頭筋や大殿筋の筋出力を上げるだけでは不十分な可能性が高いのです。

リハビリに一工夫を

ではどうすれば良いのでしょうか?
神経学の父と呼ばれている、ジョン・ヒューリングス・ジャクソンはこう言っています。

脳は筋の事など知らない。
運動を知るだけである。

つまり、
どの筋を動かすか?
ではなく、
どう動こうか?
を脳はコントロールしているということです。

筋力トレーニングを含めた動作によって脳の指令が異なるのであれば、筋力トレーニングの時に鍛えている筋を意識することに加えて、どの動作の時のどの時のためのリハビリなのかを患者さんは知っていた方が効果が出やすくなります。

脳の知識を整形外科疾患の患者さんに活かしていく。
ここにリハビリの個別性があるのかもしれません。

自分だけの臨床を。

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