感覚の基本中の基本とちょっと豆知識

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本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

 感覚は人が人らしく振る舞う為には、必須な能力です。
運動がどの動物よりも高度であるように見えるのは、道具を使用することが出来る手、2足歩行を可能にしている下肢、そしてそれらの行為を縁の下から支えている体幹の機能が重要なことは言うまでもありません。

 ですが、それらの手・下肢・体幹の高度な行為を遂行する為には、感覚も同様に高度な処理を行えなければなりません。
加えて、感覚は言語との関係が非常に密接で、知覚したものを言語化することで様々なことを認知しています。
そこで今回は、そんな感覚の基本中の基本の部分を簡単に書いた後、感覚がいかに高度なのかの豆知識を書いていきたいと思います。

受容器から知覚まで

 感覚は、体全体のあちらこちらにある様々な種類の刺激に特化した受容器に対し刺激が加わった瞬間から始まります。(知覚は刺激を受容する前の予測から始まります)

  • 視覚:光
  • 聴覚:空気振動
  • 表在感覚:接触、圧、振動、伸張など
  • 深部感覚:筋の伸張

このような具合です。
 さらに、これらの刺激は受容器より後で電気信号に切り替えられ、神経線維を通り脳へ伝達されます。
この脳でも感覚毎に処理される場所が異なっていますね。

  • 視覚:後頭葉
  • 聴覚:側頭葉
  • 表在感覚:頭頂葉
  • 深部感覚:頭頂葉、小脳

これらの脳に刺激が到達するまでに、脳で処理できる状態まで感覚は加工され、脳で処理されていく過程で知覚できるようになります。

 つまり、「目に光が入った!」という状態から、「今何か見ている!」そして、「今見ているのは○○だ!」と脳での処理によって知覚が進んでいきます。
もちろん実際は猛スピードで処理されていて、意識することは出来ませんがイメージするとこんな感じになります。

 感覚の種類によって、どの段階で知覚できるのか(感覚を意識出来るのか)、知覚するためには何が必要なのかなどのプロセスは異なっています。
その為、いわゆる感覚障害における原因は、感覚の種類によっても分けて考えなければなりません。
単純に「感覚麻痺だから」と片付けずに、「どうして感じないんだろう?」を突き詰める姿勢が必要です。

 通常感覚麻痺は、

  • 受容器の損傷
  • 受容器から脳へ伝達する際の障害(神経損傷、シナプスの障害など)
  • 感覚を処理する領域の脳損傷

の3つを指します。
これら以外の原因による感じにくさは、知覚障害と呼ぶことが妥当です。
人の身体の専門家である以上、正確に言葉は使いたいですね。

感覚を知覚し、物事を認知する

 さて、ここまで感覚の基本中の基本を本当に簡単に書いてきましたが、この感覚を非常に高次だと考えている理由を豆知識としてここから書いていきます。

まず【感覚は何のためにあるのか?】から考えていきます。

 感覚の大きな役割は2つあります。

  1. 環境を認知するため
  2. 自分を認知するため

 これら2つは、【地球という環境で生きていくために、行為を遂行する】目的で行われると考えることが出来ます。
つまり、環境と自分を捉え、行為を遂行していくためには感覚は必須であり、最も重要な能力であると言えます。

 スムーズかつ安全に歩くためには、材質や傾斜などの地面の状態を視覚や足底感覚、足関節の深部感覚などから把握し、動いている自分の身体をリアルタイムに知覚した結果から姿勢に昇華しなければなりません。
 このように、感覚は時間的にも空間的にも同時的に発生していて、これらを感覚毎に処理して時に統合し、新しいものを作り出していく必要があります。

個人的には、動く事よりも感じることの方が人間らしさを作り出す要素としては貢献度が高いと思っています。
 その理由はここまで書いてきたような、感覚の役割はもちろん、もう1つ認知という側面からも感覚の重要性が高いことが分かるからです。

知覚と認知と記憶

 感覚は脳に蓄積していきます。
一方運動は、知覚がなければ蓄積することが出来ません。
なぜか?
感覚が無ければ自分が動いたのかどうかすら分からないからです。

記憶によって蓄積された知覚は、いつでも再生できイメージすることが出来ます。
その記憶には運動が含まれており、運動イメージとして再生することも出来ます。

すでに書いた通り、感覚の役割は環境や自分を認知することであり、この認知には記憶が重要になってきます。
今までで見たことがあるのか、感じたことがあるのか、使ったことがあるのか…この記憶に基づいて<今>を知覚することが出来ています。

如何でしょうか?
いかに知覚が大切なのか、また高次なのかが少しでも伝わって頂ければ幸いです。
この知覚が障害されるということはどういうことなのか?
このことをセミナーで話していきたいと思います!

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運動と感覚を分けるのはもうおしまい

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 リハビリでは一般的に、運動と感覚をそれぞれ分けて評価をして介入していきます。
ですが、人が行為を行う上で運動と感覚はそれぞれ密接な関係にあり、お互いに影響を及ぼし合っています。
その証拠に、運動器官である筋は同時に非常に重要な感覚器官であり、その感覚器官である筋紡錘は正確に感覚を受容するために運動を用いています。(α-γ連環)

 そこで今回は、感覚のおさらいと感覚障害について書いていきたいと思います!

感覚が脱失していたらスムーズに動けますか?

私が学生の頃に行わせていもらった臨床実習で、視床出血の患者さんのリハビリを見学していた時の話です。
その患者さんは、非常にぎこちなく動いていて、歩行においては平行棒を両手でしっかりとつかんで目で足元を確認しながら行っていました。

 その時の私は、「何の疾患なんだろう…?」と疑問に思っていましたが、担当の理学療法士の方が、

「感覚だけに障害があると運動に問題はでないと思う?」

と質問してきました。

つまり、運動麻痺がなく感覚麻痺だけがある場合、その人の行為はどうなるのか?という質問だったのですが、私は普通には動けないだろうなと思う程度でした。
実際見学していた患者さんは、脳画像からも評価からも運動障害はなかったのですが、感覚障害によって行為を思い通りに行うことは出来ていませんでした。
このことがきっかけで、私は運動と感覚の深い関係性について考えるようになりました。

人は動物である以上動きますし、環境に適応する必要がある以上知覚します。
この2つは必然なので、人の身体を対象としているリハビリでは外すことが出来ません。
またそれ以上に、人は知覚するために動き、動くために知覚しています。
つまり、運動するためには知覚できなければならず、行為において知覚は非常に重要な役割を持っています。

評価をしていく時に、要素ごとに評価してその結果を統合し問題点を抽出していく作業は非常に一般的ですが、私はこの方法をとっていません。
この方法をとってしまうと運動と感覚の関係性が見えにくく、実際の患者さんの像と少しずつずれて行ってしまうからです。

 ではどうすれば良いのか?
それは、運動と感覚を同じカテゴリーに入れられるような分析の方法を行えばよいのです。

行為をベースに考えて行く

私は、臨床の目的は運動を改善することでも、感覚を改善することでもないと思っています。
関節が曲がるようになっても、その関節の角度を行為で発揮できなければ意味がないように、動くようになってもまた感じるようになってもその人の生活が良い方向に変化しなければ意味がないからです。
つまり、リハビリの臨床においてよく見て、よく考えなければいけないのはあくまで行為であり動作でなければなりません。

 更に、臨床における介入では、患者さんの得意な部分を使えるような方法で展開されていくことが大切です。
例えば、歩行の時に立脚期が安定していない時、筋力トレーニングをするだけではなく、立脚時の足底の圧感覚を使用した介入も引き出しとして持っておく必要があるということです。

 なぜか?
1つは、運動と感覚が関係しあっていて、立脚期の問題が運動だけではない可能性があるからです。
もう1つは、行為の特性を考えていくと、歩行における立脚期では身体を支えている側の足底に荷重され、体幹の立ち直り反応が出現するなどの特異的な関連がみられます。
この時に、股関節周囲には確かに筋収縮がみられるのですが、これは立脚期の時だけに見られる収縮で、他の姿勢や運動ではこの収縮を再現することは出来ません。

 つまり、歩行という行為において、様々な知覚、反応が生じた中で筋が収縮しているのです。

 この事を考えると、運動という側面のみから介入していくのでは不十分で、感覚/知覚を交え姿勢や反応を考慮した介入が必要になってくることが分かります。
そのために、行為をベースに考えいかにその行為の特性を介入に持ち込めるのか?が勝負になってきます。
このことを前提に、観察から評価、分析までを行っていくためには、運動、感覚というコンポーネントではなく、歩行の時の立脚期に必要な能力と、能力同士の関連性を考える必要が出てきます。
 もうすぐリハビリが日本に入ってきて100年…そろそろ運動と感覚を分けて考えるのをおしまいにしませんか?

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予測なしで動くのは大変…?

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人は運動しながらいろいろなことを感じ、感じるために動いて生きています。
日常生活においても実感できるこのサイクルは、行為を行っていくためにはなくてはならないものです。
例えば、

  • シャンプーがあとどれくらい残っているのかを確かめるためにボトルを持つ
  • ベッドを買うときに、硬さを確かめるために座る
  • タオルの手触りを確かめるために優しく触る

この時、思っていた感じと違っていた時の驚きを誰もが感じたことがあるのではないでしょうか?

  • シャンプーが思っていたより少なくて、軽かった
  • ベッドのマットレスが思っていたより柔らかくて、座ると凄く沈んだ
  • タオルの手触りが思っていたより硬く、手触りが悪かった

このような現象はどうして生じるのでしょうか?
これを知っておくと、人の動きのメカニズムを知っていく上で大切な手掛かりとなります。
今回はこの「予測」について書いていきたいと思います。

視覚からいろいろなことを予測している

人には五感があります。

 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚(体性感覚)の5つですが、人が行為を行う上で最も多くの情報量を脳に提供しているのが「視覚」です。
 <百聞は一見に如かず>という諺があるように、人の視覚に対する信頼度は非常に高いことがうかがえます。

では、人は行為において視覚からどんな情報を得ているのでしょうか?
いくつかの行為で考えて行きたいと思います。

上肢と視覚

1.コップを持つ

 コップなどの物を持つ時には、視覚はどの様な情報を脳に提供しているのでしょうか?

  • 物の同定:これから持つために見ている物が「コップ」だと認識するための情報
  • 物の位置の同定:
    コップがある場所がどこかを認識するための認識。自分から見て正面かどうか?机のどこにあるか?など様々な空間内で認識が必要
  • コップの重さの予測
    今まで持ったことのあるコップなどから今から持つコップの重さを予測することで、どれくらいの力で持ち上げれば良いのかの手掛かりとする。
  • コップの触覚の予測
    コップに触れたときの手触り、硬さ、温度などを予測して、コップを持った時の力加減や触れる面積などの手掛かりとする。

コップを持つ時の視覚の特徴としては、コップを認識して手を伸ばす方を決定するリーチングに関することと、コップを持つことに必要な<予測>をすることにあります。

2.鍵穴に鍵を入れる

  • 鍵穴を認識する:コップの認識と同様
  • 鍵穴の位置と向きを認識:コップの時の位置と同様
  • カギを入れた時、また回したときの感覚の予測
    鍵穴に入っているか、また入れた鍵で合っているかなどの手掛かりに使用されます。

コップの時のような【持つ】動作がないため、何かを持った時の予測はありません。一方で、カギを回したときの感覚の予測がされています。

全身運動と視覚

3.段差昇降する

  • 段差があることを認識する:
    歩行から段差昇降をするための動作に変更する手掛かりに使われます。
  • 段差の位置を認識する:
    今の自分の位置からどれくらい先に段差があるのかを認識します。
  • 段差の高さを認識する:
    どれくらいの高さなのかを手掛かりに、足を上げる高さを予測します。

 段差昇降の時の視覚は、段差に関する情報収集を中心に行われます。
安全にかつスムーズに段差をのぼるために必要な情報を視覚が脳に伝えてくれます。

4.外を歩く

  • 周囲環境の情報収集:
    車などの危険はないか、自分の進む方向はどっちかなど環境の把握を行います。
  • 歩行速度・歩行の自覚:
    周囲で流れていく景色と体性感覚と合わせて、自分がどれくらいの速さで歩いているのか、自分の足で今前に進んでいるといった自覚をします。
  • 路面・床面の形状を認識する:

これから歩くところの形状の上を歩くとどんな感じがするのか、その感じに必要な姿勢の制御は何なのかを予測するために使用されます。

予測で動けるようになると動きはスムーズになる!

4つの行為で視覚の役割を見てきましたが、全ての行為で共通しているのが<予測>です。
この予測は、今までの経験や記憶をもとにされるのが前提で、雪の上を歩いたことがない人と毎年歩いている人では、今から雪の上を歩くときにされる予測は全く異なるのは想像に難しくないと思います。

歩いたことがある人は、ほとんど普通の道を歩くように歩けますし、歩いたことがない人はひっぺり越しで全身に力を入れてへんてこりんな歩き方になります。
これは、雪を歩いた経験から、これから雪の上を歩く!という状況ですでに、踏みしめた感覚などを予測することが出来るからなのです。

 この予測は、初めて行った動作の時は働きにくく、動作が習熟すればするほど出来るようになってきます。
つまり、習熟した動作であればあるほど、予測のみで動けるくらい脳の負担は減っていきます。
学習とのつながりが強いんです。
いわゆるルーティーンに似たような感じかなと考えています。

 人がいかに予測で生きているのか、反対に言えば予測が出来なければ人はスムーズに動く事すら出来ないのかがお分かりいただけたと思います。
この予測がもし違うことに使われていたら…痛みがある人が動く前から痛みを予測したり…脳血管疾患の人が代償運動を予測していたら…。

介入に新しい視点を得られるきっかけになれば幸いです。

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運動と感覚と記憶と学習と

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リハビリを行っていると、患者さんに覚えて欲しいことと出来るようになって欲しいことがあります。
例えば、起き上がる時に麻痺側上肢をお腹の上においてから起き上がって欲しいときに、動作手順を覚えてもらうための介入を行います。

この時、患者さんは

<記憶すれば良いのか?>
<学習すれば良いのか?>

どちらになるのでしょうか?
今回はこの記憶と学習を臨床上しっかりと選択する大切さを書いていきたいと思います。

覚えてもらえないのは実は学習が必要かもしれなない

最初にも書いたような動作手順を覚えて欲しい時、皆さんはどういった方法で行っていますか?

多くの方は、声掛けによる気付きを与えて覚えてもらう方法を取っているのではないでしょうか。
例えば、麻痺側上肢の管理について教えたあとに起き上がる時、患者さんが麻痺側上肢を忘れていたら、

「〇〇さん、左手忘れていませんか?」

のような感じです。
ですが、麻痺側の感覚障害が重度であったり、無視や失認などの高次脳機能障害がある場合なかなか動作変容が生じないケースがあります。

このような時、声掛けや張り紙などの「記憶」に頼る方法ではなく、体性感覚に基づく運動学習が必要になってきます。

例えば、声掛けだけではなく必ず非麻痺側上肢をセラピストが介助して麻痺側上肢をお腹の上に移動してもらうといった流れになります。
このひと工夫を加えることで、学習が生じやすくなり動作変容がみられてくる方がいらっしゃいます。

体性感覚をどう考えるか

私がまだ学生だった頃の実習で行った病院で、セラピストとして働かれていたPTの方にある質問をされました。

「全く運動に障害がないけれど、感覚が消失している患者さんはどんな風に動くと思う?」

まだ学生だった私は、運動に障害がないなら、感覚が消失していたとしても視覚で代償したりでほぼ普通に動けるのではないか?と。

この運動と感覚の関係性は行為や動作を考えていく上で切っても切り離せない関係です。
動作を洗練していく、エラーに気付く根本は基本的には体性感覚が必須です。
その感覚を、患者さんがどう使うのか?を考えていく事はリハビリテーションにとっては非常に重要であることは間違いありません。

つまり…

感覚があるかどうかの先には、感覚が上手く動作に使われているのか?

を考えていくということです。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない感覚をどう考えていますか?
実は動作から感覚を観察することも出来るんですけどね…。

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運動・動作・行為を使い分ける!!

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言葉って大事ですよね?
専門家として、言葉や用語を正しく使うことはとても大切で、多職種での連携が大切なリハビリではその面においても重要です。
その中でも、

  • 運動
  • 動作
  • 行為
の3つは、似ている言葉ですが、絶対的に中身が異なっている用語です。
これら3つを意識的に使い分けることで、頭が整理されてリハビリの臨床がスムーズになるなど非常に役立ちますのでぜひご参考ください。

3つの違いは?

まずは簡単に3つの言葉の違いに触れていきたいと思います。

1,運動

物体がある力によって動く事ですね。
人で言うと、関節を動かす事からランニングなどまで広い範囲で運動って言います。
『運動しましょう』のような使われ方ですね。
一方で、『肘を曲げる』のような【重心の移動を伴わない】動きを私は運動と定義しています。
リハビリにおいて、この運動の獲得をゴールにすることはまずありませんよね。
観察や分析をしていく過程で、どこの運動に問題があるのかを考える時に使用するイメージです。

2,動作

運動が様々な身体部位で同時的に動くことで、重心が移動することと考えています。
同時に支持基底面(身体を支持する、外部環境と接している面積)の変化も生じます。
ただ基本的には、この動作自体には目的はないことが重要です。
例えば、起き上がりは動作ですが、起き上がることが目的となることは日常生活ではありません。

3,行為

目的や意図に応じて、2つ以上の動作を組み合わせて遂行されるものです。
つまり、行為は意図や目的が先行していて、様々な機能や能力が同時的に働いています。
リハビリでは、この行為の獲得が目標となります。
「動作じゃないの?」と思われた方がもしいらっしゃれば、リハビリの時は出来るのに病棟では出来ない問題を考えてみてください。
この問題の重要な点は2つです。
 
1つは、環境が違うこと。
これはいろいろなところで言われているのでなじみ深いかと思います。
もう1つは、意図と目的が違うことです。
リハビリの時は、セラピストに指示をされて行われる動作ですが、病棟では自分の意図に基づいて行われます。
この目的と意図が異なる場合、行為そのものが異なると考えた方が無難です。
つまり、病棟での行為をいかにリハビリに持ち込み、介入出来るのかが大切になります。

どういう場面で使い分ける?

このように見ていくと、それぞれ特徴のある言葉だということがお分かりいただけると思います。
では、実際にこの3つをどう使い分けるのか?
 
結論から言いますと、分析時と介入時です。
患者さんの問題点と出来ている点を、それぞれ運動レベル、動作レベル、行為レベルでみていくことが大切です。
 
また介入時にも、今のリハビリがどのレベルで何を対象に行っているのかを、療法士は整理していくことが大切です。
介入の結果、どの様な変化が生じたのかを細かく見ていく為にも重要なことになります。
 
いかがでしょうか?
いつも何気なく使っている言葉かもしれませんが、すこし意識して使うだけで頭が整理されていくことを実感できると思います。
是非お試しください!!

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脳は身体をどう動かしている?

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人の脳が、どうやって身体を動かしているのかご存知ですか?
【○○筋を動かす】
のように、筋レベルでコントロールしているのか?
それとも
【膝を伸ばす】
のように、関節レベルでコントロールしているのか?
本記事では、この点について書いていきたいと思います。

筋力トレーニングの落とし穴

歩行獲得を目指す整形外科疾患の患者さんでは、骨折をした側の安定性を向上するために、中殿筋の筋力トレーニングがよく行われます。
歩行中の立脚期において、ふらつかないためには中殿筋が重要だと考えられているためです。
これは、リハビリの中では中殿筋の筋力低下が原因と考えられていることが一般的で、介入においても【中殿筋の筋力強化】が行われます。
これは、学校で教育されており重要な視点です。

このようにリハビリにおいて、ある動きが難しい時にその動きを主動する筋に問題があると考えられます。
問題には、筋力不足や運動麻痺などがあり、それぞれ介入方法が分かれてきます。
一見自然な流れの様に見えるこの考え方ですが、ここで1つ疑問が生じます。

目的志向型の脳

最初に書きました通り、身体を目的に沿って動かすためには、脳からの指令が必要です。
よって、目的に応じて指令が変化するとなると、筋力トレーニングの時は筋力トレーニングのための指令、歩行の時は歩行のための指令があることが分かります。

となると…
【筋力強化で得た、中殿筋の筋力は本当に歩行の時に使用されるのか?】
が気になってきます。

これは、簡単に言えば、横向きで寝ている時に、歩行の時と同じように中殿筋に力を入れてみてくださいと言われても、何を言われているのか分からないのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、歩行の時の中殿筋の働きは、歩行の時にしか発揮できないという事になります。

これは歩行中の中殿筋に限らず、立ち上がりをスムーズにするために大腿四頭筋を鍛えることは、立ち上がりの時に使用される大腿四頭筋や大殿筋の筋出力を上げるだけでは不十分な可能性が高いのです。

リハビリに一工夫を

ではどうすれば良いのでしょうか?
神経学の父と呼ばれている、ジョン・ヒューリングス・ジャクソンはこう言っています。

脳は筋の事など知らない。
運動を知るだけである。

つまり、
どの筋を動かすか?
ではなく、
どう動こうか?
を脳はコントロールしているということです。

筋力トレーニングを含めた動作によって脳の指令が異なるのであれば、筋力トレーニングの時に鍛えている筋を意識することに加えて、どの動作の時のどの時のためのリハビリなのかを患者さんは知っていた方が効果が出やすくなります。

脳の知識を整形外科疾患の患者さんに活かしていく。
ここにリハビリの個別性があるのかもしれません。

自分だけの臨床を。

筋感覚ってこんなに大事!!

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロン運営者、理学療法士の唐沢彰太です。
今回は臨床で忘れやすい筋の持つ大切な役割の1つである、【感覚】について書いていきたいと思います。

筋の役割

筋の役割は、学生の頃に生理学や解剖学で習ったと思いますが主だったところを簡単に挙げていきたいと思います。

  1. 運動
  2. 緩衝作用
  3. ポンプ作用
  4. 発熱作用
  5. 水分の貯蔵
  6. 感覚
このように、筋には様々な役割があります。
リハビリにおいては全て重要な役割となりますが、なかなかプログラムに活かすことが難しいのではないでしょうか?
ですが、筋には非常に豊富かつ重要な感覚を受容する役割があることを忘れてはいけません。

筋に存在する感覚器

皆さんご存知の通り、筋には筋紡錘とゴルジ腱器官の感覚受容器があります1)。
それぞれ、
  • 筋紡錘は速度依存(筋がどれくらいの速度で伸ばされたのか)
  • ゴルジ腱器官は筋にかかる張力依存(今筋がどれくらい張っているのか)

と感知できる内容が異なっています。
筋紡錘に関しては、筋紡錘を常に一定の張力に保つ<αーγ連環>があり、伸張反射においても重要な役割を持つなど、運動・感覚ともに大切な器官です。
ゴルジ腱器官においても、Ib抑制など、主動作筋と拮抗筋の調整を行う重要な役割があります。
これらは、筋紡錘やゴルジ腱器官が正しく感覚を受容することにより働く反射であり、運動を遂行していく上では欠かせない仕組みになっています。

運動覚と筋紡錘

更に忘れてはならないのが、運動覚における筋紡錘の重要性です。
結論から言いますと、

筋紡錘の情報が四肢の動いている知覚において、最も重要な役割を果たしていることが分かっています2)3)。

つまり、自分の身体が動いていることを知覚するためには、筋にある感覚器官である筋紡錘からの情報が必須になるという事です。
このことから、臨床上頻繁に遭遇する様々な以下の様な症状において知覚が変質している可能性が考えられます。
  • 脳血管疾患後の筋緊張異常
  • 伸張反射の異常な亢進
  • 整形外科疾患後の疼痛による防御性収縮
  • 術後の創の影響による皮膚の伸張性の低下
これらはまだまだ一部ですが、最低でも上にあげた現象においては、知覚の変質を考えなければなりません。
また、これらとは別に筋収縮の状態が運動覚に影響を及ぼす報告もあります4)。
このことを考慮すると、運動障害そのものが運動覚の知覚に影響を及ぼす可能性が高いということになります。

リハビリにおける筋感覚の考え方

ここまで書いてきた通り、筋にある受容器が受容する感覚は、ヒトが行為を遂行していく上で非常に重要な役割があります。
これは、臨床において筋の緊張や反射、更に収縮そのものに問題が生じた場合、運動覚を始めとした知覚に大きな影響を及ぼす可能性をはらんでいます。
つまり、リハビリを進めていく上で、緊張にアプローチする、運動にアプローチするだけでは不十分であり、同時的に生じている知覚にまで目を向ける必要があります。
知覚の側面から介入し、運動や緊張を変化させていく事も可能になります。
 
今回は割愛しましたが、運動覚は頭頂葉や小脳で処理された結果、身体像(身体図式や運動イメージなどに関与する)を作り出していきます。
そのベースになっているのが筋感覚なのであれば、筋の役割において感覚を無視する事は到底出来ません。
今担当している患者さんでなかなか改善がみられない時、筋の役割をもう一度見直してみると光が見えるかもしれません。

【参考文献】

  1. 藤井克彦,赤沢堅造:骨格筋の構造とそのモデル.計測と制御, Vol18, No1,(1979)
  2. Roll, JP.and Vedel, JP.:Kinaesthetic role of mucsle afferent in man, Studied by tendon vibration and microneurography. Exp Brain Res, 47, 177-190,(1982)
  3. Roll, JP., Vedel, JP. and Ribot, E.:Alteration of proprioceptive messages induced by tendon vibration in man:a microneurograpic study. Exp Brain Res, 76, 213-222,(1989)
  4. 金子文成, 速水達也:筋収縮に影響される運動感覚.バイオメカニズム学会誌, Vol 35, No3, (2011)
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