筋力ってリハビリではどうすれば良いの?

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本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?です。

人が動くためには、関節が動かなければなりません。
その関節が動くためには、筋肉が収縮する必要があります。
筋収縮のパワーを筋力といいますが、筋力を決定する要素には様々なものがあります。

今回は、その筋力がどのように決定され、どう向上していけば良いのかを臨床にそくした形で書いていきたいと思います!

筋力を決める要素

~ミクロからマクロまで~

筋は、神経によって活動します。
この神経は大きく分けて2つあります。

  1. 脳から脊髄についている運動神経
  2. 脊髄から筋についている神経

です。
これらが正確に働くことで、目的に合った運動を行うことが出来ます。

これらの筋収縮に関わる神経ですが、発火様式(神経の活動方法)によって筋出力を決定しています。

詳細は専門書(生理学)を参考にして頂きたいですが、この発火様式は3つあり、

  1. リクルートメント
  2. シンクロナイゼーション
  3. レートコーディング

になります。
発火させる運動単位をコントロールしたり、発火の頻度をコントロールしたりと、様々な方法になっています。

またこれらとは別に、筋出力は目的に応じてコントロールされています。
例えば、食パンを持つときの力とフランスパンを持つときの力では、食パンの方が優しく繊細にもつことが求められます。
つまり、視覚によってこれから何に働きかけるのかを認識することで、力をある程度決定していることになります。

このように、今から行う動作/行為に必要な力は、脳と脊髄のコンビネーションによって決定づけられています。

リハビリでの筋力の考え方

ここまで書いてきた通り、筋力はいろいろな要素で決定されています。
では、リハビリではどのように介入していけば良いのでしょうか?

リハビリにおいては、まず【何のために筋力を向上する必要があるのか】を明確にする必要があります。
「○○骨折だから中殿筋を鍛える」
「立ち上がれるようになるために膝伸筋群を鍛える」
これでは、単純な筋力トレーニングになってしまいます。

  • 筋出力なのか
  • 筋持久力なのか

また、

  • どの動作の時の筋出力なのか
  • どの感覚とセットで訓練しなければならないのか

これらは最低でも明確にし、患者さんと共有しておく必要があります。
この辺の詳細はこちらをご参考ください→脳は体をどう動かしてる?

筋力を鍛えるトレーニングには、正しい動きを学習する目的も含まれます。
ぜひ試してみてください

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筋緊張を整理しよう!

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
寒暖差が激しく疲労が抜けない理学療法士の唐沢彰太です。

理学療法士・作業療法士(セラピスト)の方と話していると、結構頻繁に【筋緊張】という言葉をよく聞きます。

皆さんもよく聞いたり、言ったりしていませんか?

そこで今回は、そんなよく使うけどあまりよく分からない筋緊張について、骨折後と脳卒中後で具体例を挙げながら、整理していきたいと思います。

 

筋緊張ってそういうものなの?

例えば、私が以前いた回復期での臨床では、最初の20分~30分でリラクゼーションという名のマッサージやストレッチをほとんどのセラピストが行っていました。

入職して間もない私は当然疑問に思ったので聞いてみたところ…
「緊張が高くなっているから、正常化してから介入したほうが良い」
と説明されました。

「でも、臥位でリラックスしても起きたら戻らない…?」
と思ったのを今でも覚えています。

実際皆さんも経験したことがあると思いますが、筋緊張というものは姿勢によって大きく変化します。

安静時筋緊張、動作時筋緊張という言葉があるように、動いていない時と動いた時の筋緊張はことなるんですよね。
もし動いている時に筋緊張が亢進するのであれば、筋緊張が亢進しない動き方を学習してもらう必要があります。

ところで、こんな筋緊張ですが次の現象と混乱しやすいです。

  • 筋の柔軟性の低下(立位で前屈した時のハムストリングスや大腿二頭筋などのツッパリ感)
  • 硬結(血流が悪くなったことによる現象)
  • 持続的収縮による筋の膨隆
私は専門家ではないのであまり詳細は書けませんが、臨床上これらと筋緊張は混乱しやすいです。
そこで、整形外科疾患で生じやすい現象と脳血管疾患で生じやすい現象に分けて書いていきたいと思います。

骨折後の「硬さ」は筋緊張?

骨折の中でも、介入の頻度が高い疾患のうちの1つが大腿骨頸部骨折です。
頚部骨折後は、動作時痛が強く股関節を動かしたくない状態になります。
すると、足を閉じた状態で寝ていたり起きたりするため、股関節内転筋群に持続的な収縮による【硬さ】が生じます。
この硬さがなかなか改善しないんです。
セラピストが股関節を外転しようとすると、内転筋が伸張され痛みも生じる人もいる。

そこで大事なのがこれが筋緊張の亢進なのかどうか?です。
ストレッチやマッサージで【ほぐす】手法が効果的かどうかも含めてですね。

結論から言うと、このケースでは筋緊張よりも防御性収縮と捉えた方が介入がスムーズになると思います。
股関節の動作時痛に対する無意識的な収縮です。
このケースで言えば、足を開いたりするといたいから、閉じた状態でキープしたい!だから常に力んでいる状態です。

そうなると当然血流も悪くなりますし、筋の伸張性も低下(伸びにくい)してしまいます。
この状態でストレッチは激痛ですし、マッサージも一時的に血流の改善はしますがまた戻ってしまうことが多いです。

つまり、筋緊張の亢進ではなく痛みの予測に伴う無意識的な収縮が原因と考えた方が分かりやすいですね。

脳卒中後の関節の硬さは筋緊張?

脳出血・脳梗塞を発症すると、関節を他動的に動かした時に抵抗感を感じる現象が頻発します。
別名ジャックナイフ現象と呼ばれるものですね。

これは伸張反射の異常亢進によるものと考えられていて、筋が急激に伸張された時に生じる伸張反射が敏感になっている状態です。
伸張反射は速度依存的で、早く動かせば動かすほど抵抗感が強くなったり抵抗を感じるタイミングが早くなったりします。

神経系の異常であるため、筋緊張異常の一種として考えることも出来ますが、マッサージでは改善が難しく、効果が出ない場合がほとんどです。
また発症初期では、ストレッチによって伸張反射の亢進を助長する可能性もあって、慎重に行う必要があります。

神経系の問題による一次性の問題なのか、その状態が継続したことによる生理学的な二次性の問題なのかを整理して、的確な介入をしたいところです。

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運動・動作・行為を使い分ける!!

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
プロリハ研究サロンを運営しております、理学療法士の唐沢彰太です。

リハビリテーションの専門家として言葉を正しく理解して使用することはとても大切です・
臨床の中ではもちろん、多職種での連携が大切なリハビリではその面においても重要です。
その中でも、

運動・動作・行為

の3つは、なんとなく似ているように見える言葉ですが、実は全く意味が異なっている用語です。
そこで今回は、これら3つを意識的に使い分けることで、頭が整理されてリハビリの臨床がスムーズになったり他職種の方への説明がしやすくなるなど、非常に便利ですのでぜひご参考ください。

運動・動作・行為

まずは簡単に3つの言葉の違いに触れていきたいと思います。リハビリの臨床で頭を整理しやすくする目的で、少し解釈をアレンジしています。

1,運動

<力が作用することで物体が動くこと>
人でいいますと、関節を動かすことからランニングなどまで幅広く運動ということが多いです。
『運動しましょう』のような使われ方です。
ではリハビリの臨床の中ではどう考えれば良いでしょうか?
動作や行為と分けるために、『肘を曲げる』のような【重心の移動を伴わない動き】を運動と理解すると分かりやすいと思います。
リハビリにおいて、この運動の獲得をゴールにすることはまずありません。
観察・分析・評価をしていく過程で、どの運動に問題があるのかを考える時に使用していきます。
立ち上がり獲得を目標にした場合、膝関節の【運動】に問題があると言った具合です。

2,動作

<いくつかの身体部位が同時に運動することで重心移動が生じること>
重心移動が生じるのと同時に支持基底面(身体を支持する外部環境と接している面積)の変化も生じます。
時間軸としては、動き始めてから動き終わるまでを動作としていて、起き上がり動作、立ち上がり動作のように使います。
また行為との使い分けとして、この動作自体には目的を含まないようにしています。

具体的には、何のために起き上がったのか?起き上がって何をしたいのか?などの目的は含まずに、起き上がること自体を動作として指しています。
よって、リハビリの臨床では日常生活の起き上がりは起き上がりそのものが目的とならず、目的を達成するために起き上がるといった思考が大切になります。

3,行為

<目的や意図を持って遂行される、複数の運動や動作が組み合わさったもの>
行為には意図や目的が先行していて、注意機能やバランス能力など様々な機能や能力が同時的に働いていることになります。
リハビリでは、この行為の獲得が目標となります
「動作じゃないの?」と思われた方がもしいらっしゃれば、リハビリの時は出来るのに病棟では出来ない問題を考えてみると分かりやすいと思います。
この問題の重要な点は2つです。
1つは、リハ室と病棟では環境が違うこと。
これは病院と自宅など、いろいろなところで言われているのでなじみ深いかと思います。
もう1つは、リハ室と病棟生活や日常生活では、意図と目的が違うことです。
リハビリの時に行っているのは<動作が目的>であり、病棟生活や日常生活で行うのは<目的を達成するために行われた行為>だということです。
リハビリの時は、動作を獲得するために様々な練習が行われていて、その動作を行うこと、更に言うと練習を行うことが目的になってきます。
患者さんは、自分が<立ち上がってトイレに行きたい>といった意図に基づいて立ち上がるわけではありません。
一方で病棟では、それこそトイレに行くために立ち上がると言った意図があります。
そうなると、リハ室で行っていた動作では不十分で、意図や目的を達成するために行う行為が必要になります。
これらを考えて行くと、リハビリ中にいかに意図や目的を持ちこんで、病棟の時の<行為>を改善するのかが重要になってきます。

どういう場面で使い分ける?

このように見ていくと、それぞれ特徴のある言葉だということがお分かりいただけると思います。
では、実際にこの3つをどう使い分けるのか?
 
結論から言いますと、仮説を立てる時と介入する時です。
患者さんの問題点と出来ている点を、それぞれ運動レベル、動作レベル、行為レベルでみていくことで介入していく対象が明確になるなどメリットがあります。
 
また介入時にも、今行っているプログラムが運動・動作・行為どのレベルを対象に行っているのかを、療法士は整理していくことが大切です。
これは重心移動を含めるのか、注意機能はどうか、意図や目的をイメージする必要はあるかをプログラムに含めるかどうかを考える必要がある為です。
また介入の結果、どの様な変化が生じたのかを細かく見ていく為にも重要なことになります。
 
いかがでしょうか?
いつも何気なく使っている言葉かもしれませんが、すこし意識して使うだけで頭が整理されていくことを実感できると思います。
この考え方を臨床で実際にどう生かしていけば良いのかを知りたい方は、ぜひプロリハ研究サロンにお越しください!
お待ちしております。

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脳は身体をどう動かしている?

お読みいただいている皆さんこんにちは。
本サロンを運営しております、理学療法士の唐沢彰太です。

人の脳が、どうやって身体を動かしているのかご存知ですか?
【○○筋を動かす】
のように、筋レベルでコントロールしているのか?
それとも
【膝を伸ばす】
のように、関節レベルでコントロールしているのか?
本記事では、この点について書いていきたいと思います。

筋力トレーニングの落とし穴

歩行獲得を目指す整形外科疾患の患者さんでは、骨折をした側の安定性を向上するために、中殿筋の筋力トレーニングがよく行われます。
歩行中の立脚期において、ふらつかないためには中殿筋が重要だと考えられているためです。
これは、リハビリの中では中殿筋の筋力低下が原因と考えられていることが一般的で、介入においても【中殿筋の筋力強化】が行われます。
これは、学校で教育されており重要な視点です。

このようにリハビリにおいて、ある動きが難しい時にその動きを主動する筋に問題があると考えられます。
問題には、筋力不足や運動麻痺などがあり、それぞれ介入方法が分かれてきます。
一見自然な流れの様に見えるこの考え方ですが、ここで1つ疑問が生じます。

目的志向型の脳

最初に書きました通り、身体を目的に沿って動かすためには、脳からの指令が必要です。
よって、目的に応じて指令が変化するとなると、筋力トレーニングの時は筋力トレーニングのための指令、歩行の時は歩行のための指令があることが分かります。

となると…
【筋力強化で得た、中殿筋の筋力は本当に歩行の時に使用されるのか?】
が気になってきます。

これは、簡単に言えば、横向きで寝ている時に、歩行の時と同じように中殿筋に力を入れてみてくださいと言われても、何を言われているのか分からないのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、歩行の時の中殿筋の働きは、歩行の時にしか発揮できないという事になります。

これは歩行中の中殿筋に限らず、立ち上がりをスムーズにするために大腿四頭筋を鍛えることは、立ち上がりの時に使用される大腿四頭筋や大殿筋の筋出力を上げるだけでは不十分な可能性が高いのです。

リハビリに一工夫を

ではどうすれば良いのでしょうか?
神経学の父と呼ばれている、ジョン・ヒューリングス・ジャクソンはこう言っています。

脳は筋の事など知らない。
運動を知るだけである。

つまり、
どの筋を動かすか?
ではなく、
どう動こうか?
を脳はコントロールしているということです。

筋力トレーニングを含めた動作によって脳の指令が異なるのであれば、筋力トレーニングの時に鍛えている筋を意識することに加えて、どの動作の時のどの時のためのリハビリなのかを患者さんは知っていた方が効果が出やすくなります。

脳の知識を整形外科疾患の患者さんに活かしていく。
ここにリハビリの個別性があるのかもしれません。

自分だけの臨床を。