半側空間無視を運動と感覚から介入する③【評価・検査編①】

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本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

運動と感覚にそれぞれ関係している【空間】と半側空間無視(以下USN)の関連から、USNを第1回、2回で考えてきました。
 今回は、USNと混同しやすい現象とそれらを鑑別するための評価、またUSNの症状をリハビリで介入していくためにカテゴライズしていく方法を書いていきたいと思います。

第1回⇨半側空間無視の運動と感覚から介入する①【運動編】

第2回⇨半側空間無視の運動と感覚から介入する②【感覚編】

USNと混同しやすい現象と見分け方

脳卒中などによってUSNが生じている場合は、その他にも様々な現象が同時に出現している可能性を常に考えなければなりません。
また、似たような現象や混同しても見分けがつきにくい現象は、高次脳機能障害においては非常に多くあります。

 半側空間無視も例外ではなく、前回まで書いてきました運動障害や感覚障害はもちろん、半盲や身体失認との鑑別も非常に重要になります。
運動・感覚障害とのカテゴライズは次で書きますので、ここでは半盲や身体失認について書いていきます。

1.半盲

 半盲は、眼球に入力された刺激を脳に伝達するための視神経が損傷することによって生じます。
 視神経の左右どちらか、どの段階での損傷かなどによって、見えなくなる視野の場所などが変わってきます。
 その中でもUSNと混同しやすいのが、同名半盲による左側の視野の欠損です。

 症状としても「左側が見えにくい」という訴えで、眼科などで行われる視野検査においても、半盲とUSNの鑑別は非常に困難です。
 実際私が経験した患者さんでも、半盲と診断されたものの視野が大きく改善した方がいらっしゃり、無視の要素が含まれていた方が多くいらっしゃいます。

 私は臨床の中で、半盲とUSNの鑑別には以下を考慮しています。

  • 欠損している視野に対して頚部の回旋などの代償が見られているか
  • 欠損している視野を認識出来ないが、その視野において対象物に対して、正確にリーチできないか
  • 見える時と見えない時がないか

この3つを考慮し、検査を実施します。

①においては、半盲の場合「見えない」という自覚がしっかりとあるため、視野を広くするために通常は代償が見られます。
ですが、USNによる視野狭窄では、見えていない事を自覚できないため、視野を広くしようとする代償は慢性期においては見られる人もいますが、回復期では見られないことが多いです。
この事を考慮すると、視野狭窄の原因にUSNがどれくらい影響しているのかを推測することが出来ます。

②は、盲視という現象を考慮しています。
見えていると自覚することと、見えている物に対して運動することでは使用する脳のルートが異なります。
その為、半盲ではそもそも見えていないためリーチングも難しいのですが、盲視では見えている自覚のみが障害されるため、対象物に正確にリーチングすることが出来ます。

③はそのままの意味ですが、半盲は神経損傷なので、一貫して見えません。
ですが、USNでは注意の影響が大きいため、見える時と見えない時にムラが生じることがあります。

これら3つを考慮して検査や介入を行っていくことで、半盲との鑑別を行っています。

2.消去現象

 消去現象とは、麻痺側に感覚障害がないにも関わらず、非麻痺側と麻痺側両側に感覚刺激が加わると、麻痺側の刺激を認識出来ない現象です。
 実際の臨床では、麻痺側のみと非麻痺側を含めた両側とで、知覚の程度が変化する現象がみられます。

文献上は、消去現象を半側空間無視の症状に含める場合もありますが、臨床上は別々で生じる事もあるので、介入していく上で病態解釈する時には分けた方が良いと思います。

消去現象は、視覚性、触覚性が知られておりそれぞれ視野検査の応用とフィンガータッチによって検査可能です。
 さらに、深部感覚においても消去現象が生じることを忘れてはいけません。

例えば、臨床では消去現象のみられる患者さんに立ち上がりの時に左右の体重比を意識してもらうと、これが全くできないんです。
 これは足底の圧覚で消去現象が生じているからなのですが、膝の角度や速度などを聞いても全く分かりません。
 このことから、運動覚においても消去現象が生じている可能性が高くなってきます。

この消去現象は【両側同時に刺激が加わった時】と限定されていて、USNのように常に一側を無視しているわけではありません。
 つまり、行為によって無視様の症状が見られるかどうかが変化して来るということになります。
 もちろん消去現象とUSNがオーバーラップしていることも多くありますが、行為を獲得していくためにUSNと消去現象どちらの影響が強いのかを見極めて介入していく必要がありますね。

 次回は身体失認との関係について書いていきたいと思います!

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理学療法士の私がオンラインサロンを始めてもうすぐ1年

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 理学療法士の私がいろいろな思いで始めたオンラインサロンも、9月で1年を迎えます。
 当初やりたかったことがなかなかできなかったり、反対に思いもよらずに出来たことがあったりと様々なことがあった1年でした。

 そこで今回は、この1年を振り返った感想や今後の予定していることについて書いていきたいと思います!

何も分からずに始めたオンラインサロン

 オンラインサロンという言葉が少し広がり始めていた1年前、ちょうど新型コロナの蔓延もあり、リハビリ業界でも学会やセミナーがオンラインへの意向を強いられていました。
 オンラインでの開催に対する難しさや、誰もやったことがなかったことでもあり、新型コロナが流行したばかりの頃は、学会・セミナーともに軒並み中止になっていました。
 1年間外部からの情報が遮断された時、1日1日がとても大切であるリハビリの領域にいる私はとても不安になりました。

 オフラインでのセミナーが主流であったその頃は、集まって勉強することが出来なくなるなんて想像もしていなかったのですが、実際なってみるとリハビリ業界で【継続して学んでいくために】は、オンラインを積極的に導入していく必要がありました。

 毎年のように、多くの学会やセミナーに参加していた私にとって、それらに参加することは学ぶことと同じくらい、職場以外の人たちとの交流が目的でした。
 一緒に学んできた人たちが今何をしているのか、何に興味があるの、これから何をしようとしているのか…これらの情報は自分が進んでいくためにとても大切な物でした。

 その機会が失われた時の不安な気持ちは今でも忘れませんし、まだまだ不安は残っています。
 ですが、きっと私と同じように不安になっている方がいるのではないか?
 もっといろいろな環境で学ぶ機会を求めている人がいるのではないか?
 そう思ったのがオンラインサロンを始めたきっかけでした。

 ですが、HPの作成や運営については経験もなく、何より同じ思いの人が本当にいるのかなど何も分からない中でのスタートでした。
 加えて、オンラインサロンに対する理解がまだまだ深まっていない中で始めることも不安はたくさんありました。

 理学療法士としてずっと働いてきた私にとって、マーケティングなどの知識は全くなく、1からのスタートでした。

本当にやって良かった

 実際に始めてみるとこの1年間は、驚きの連続でした。
 HPの作成はベースを知り合いの方にお願いし、その後の運用を自分で行っています。
 やはり専門的な部分に関しては自分で試行錯誤していくしかありませんが、徐々に成果が出てくると非常に楽しく出来ています。

 またサロンの運営は、まだまだ未熟なところはありますがメンバーの方の助けもあり、今では累計で40名を越える方にご参加いただいています。
 サロンメンバー以外の方以外の方とも関われる機会を増やすために、外部の方も参加できるセミナーも開始し、満足度100%を達成できました。

 まだまだ知っている人は少ないですし、オンラインサロンのメリットについても理解されていない部分も多くあると思います。
 ですが、言葉でいくら説明しても限界はありますし、一人一人の好き嫌いも当然あります。

 もし一人で悩んでいる人がいたら1度参加してみてください。
 きっと参加して良かったと思っていただけると思います。

 今後は、メンバーの方にもっと楽しく学んでいただけるように実技などの新しいコンテンツの配信を予定しております。
 またもっと多くの人に知ってもらえるように、外部の方向けのセミナーも加速していきます。
 コロナなんかに負けないように、前進していきたいと思います!!

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半側空間無視を運動と感覚から介入する②

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前回より半側空間無視(以下USN)について書いています。
USNを、

  • 一側を見ることが出来ない
  • 動けない
  • 感じない

などの単純な病態ではなく、運動と感覚の側面から考えていくことを目的としています。
前回は、運動と空間、またその空間を認知する能力との関係について書きましたが、今回は感覚と空間との関係性から、半側空間無視を紐解いていきたいと思います。

感覚に関わる空間認知

 感覚は、外部からの刺激や関節が動いたことによって生じる刺激を脳で処理することで知覚します。
この時、空間はどう関係しているのでしょうか?

 例えば、誰かが後ろから自分の肩を叩いたとします。
この時、なぜ叩かれたのが【肩】だと分かるのでしょうか?
この身体のどこに刺激が加わったのかを認識するためには、身体空間認知が関係してきます。

 もう少し具体的に書いていきます。
脳の中には身体再現がされているのは皆さんご承知の通りで、頭頂葉にあります。
この頭頂葉にある身体再現を、ここでは宮本省三先生のお言葉を借りて<脳の中の身体>と呼ぶことにします。
専門的に言うと、身体表象にあたります。

 この脳の中の身体には、様々な意味がありますがその中の身体地図、つまりどこに肩があって肘があってのような感じのものがあります。
身体に刺激が加わり脳に伝達されると、この脳の中の身体とその刺激を比較して、身体のどこに刺激が加わったのかを判断します。

 この時、肘より外側に手があるといったような、身体の地図は空間的な要素が含まれています。
同時に、

「目を閉じて左肘に集中してください」

と指示をした時、指示された側は

「顔の斜め下ぐらいかな?」

と空間に対して注意を向けます。
このように、身体に注意を向けること自体にも空間の認識が重要になってきます。

半側空間無視と感覚と空間認知

ここまで書いてきたように、感覚を知覚するためには様々な空間の認知が必要です。
よって、半側空間無視の影響で、何らかの刺激を知覚できない時その原因は様々なものが考えられるということです。

 これらを見極めるためには、それぞれの要素が原因であるというための検査や評価を考えられなければなりません。
もちろん既存の検査や評価を使用するのでも大丈夫ですが、患者さんによって含まれる病態も違いますし、年齢や性別などによっても個人差があります。

 よって、患者さん毎に必要かつ有効な検査や評価を自分で考えられる能力が必要になってきます。
そこで次回は、この検査や評価について書いていきたいと思います!

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半側空間無視を運動と感覚から介入する①

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 半側空間無視(unilateral spatial neglect:以下USN)は、右半球損傷における高次脳機能障害のうちの1つです。
あらゆる空間の正中(真ん中)より左側をあたかも無視しているかのように振る舞う現象で、特に回復期において頻繁に出会います。
USNは、ADLに大きな影響を及ぼすため、リハビリテーション(以下リハビリ)では介入において重要なファクターとなります。

近年では、縦上束との関連が指摘され、USNが長期化し残存するかどうかなどの予後が予測できるようになり、リハビリの介入方法についても明確になってきています。
一方で、人が生きていく上で、【空間】という概念は非常に幅広く、様々な場面や文脈で空間処理が求められている影響で、USNの病態も多様化してしまっています。

そこで今回は、USNを視覚ではなく<運動と感覚>という側面で介入に落とし込む方法を、何回かに分けて書いていきたいと思います。
第1回は、USNと運動と感覚との関係について書いていきます。

USNの運動的側面と感覚的側面

 運動と感覚には、空間処理が必須です。
その為、それぞれに関わる空間認知にはUSNが大きな影響を及ぼします。
そこで、運動と感覚それぞれに関わる空間認知からUSNを考えていきます。

運動に関わる空間認知

 前方に手を伸ばす。
いわゆるリーチングをすると、手が外部空間の中を移動していきます。
また、肩・肘・手首・前腕・指などの関節が動き、身体空間そのものが変化していきます。

 通常リーチングの時には、視覚で物体を捉えて位置を把握し、その方向へ運動を行います。
 この時、右手をリーチングしていくのであれば、右肩よりも物体が内側なのか外側なのかそれとも正面なのかによって、肩関節の運動方向が決定づけられます。
 同時に、自分の身体からどれくらいの距離にあるのかによって、肩関節と肘関節の運動距離も決定されます。

 このように、外部空間においては視覚とのマッチングが重要で、USNにおいては

【左側が見えているのにリーチングが出来ない】

という現象はあまり見られません。
一方で、

【左側を視覚で認識出来ず、左側への運動も同時に困難】

という現象は多くみられます。

 では身体空間についてはどうでしょうか?
座っている時よりも立っている時の方が身体空間は広がりますし、上記したようにリーチングをすればリーチした方へ身体空間は広がっていきます。
つまり、左側へリーチングすれば身体空間は左側へ広がっていき、認知しなければならない身体空間は無視側へと広がっていきます。

よって、USNが見られる方の場合、身体空間において無視が見られるかどうかによって、無視側への運動にも大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。
左身体の知覚は出来るのに左側への運動が見られない、歩いている時に左側へ向かうときに体全体で左を見る等の現象が関係しています。

 

 この様にUSNを見ていく時に、どの運動の時に無視が影響しているのか?
どの空間認知に無視が影響しているのか?
これらを考えて行く必要があります。

 次回は、感覚の空間認知について書いていきます!

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失行症の患者さんに悩んだら読むブログ

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 脳卒中の後遺症を持つ患者さんのリハビリは悩むことが本当に多いです。
お読みいただいてる皆さんの中で、右半球損傷と左半球損傷とでどちらかに苦手意識をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
 もし苦手意識がない方は非常に素晴らしいですし、お持ちの方も仕方がないことかと思います。

 今回は、左半球損傷の患者さんのリハビリが苦手な方に失行症に焦点を当てて書いていきたいと思います。

左半球損傷=言語障害の先入観をなくそう!

 右片麻痺の患者さんと言えば失語症が浮かぶのではないでしょうか?
失語症の影響でコミュニケーションがうまく取れない方のリハビリは確かに難しいです。
 このような場合は、言語聴覚士がいるのであれば積極的に連携を取っていくのはもちろん、失語症でも全失語でなければコミュニケーションを取ることは十分に可能です。
まずは、コミュニケーションを取ることが出来た経験を積み重ねていってください。

 別の視点で考えた場合では、言語障害の有無にかかわらず、動作や行為、生活を観察し分析していくプロセスは変わりません。
 失語症に気を取られすぎず、いつも通りの介入をまずはしていきます。
 その上で、言語を障害されていることによって動作にどの様な影響が出るのかも勉強していくと、さらにより良い介入が出来るようになってきます。

失行症と考えず、患者さんの特徴を捉えよう!

 失語症とは別に、右片麻痺の患者さん左片麻痺の方と比べて様々な特徴があります。
例えば、

  • 動きがぎこちない
  • 関節の動きに動きすぎ、動かなさすぎなどの違和感がある
  • 介入の効果が持続しない
  • 動作の変化がなかなか見られない
  • などなど

これらのほとんどに影響していることが多いのが、失行症です。

 動作のスムーズさ、効率性、学習など様々なことに悪影響を及ぼし、リハビリの効果を低くしてしまいます。
ですが、よくある間違いとして上にあげたような特徴が見られた時に、失行症に関する検査を行って「この人は失行症だ!」と障害名を付けることが目的となってしまうことです。

 このような手続きをすると、失行症に対するアプローチになり、

  • 失行症について詳しくないとダメ
  • 失行症に対する介入方法を知らないとダメ

となってしまいリハビリが進まなくなってしまうことが多いんです…。

 高次脳機能障害を改善する!ではなく、高次脳機能障害をお持ちの患者さんの生活を変化する!と考えるべきですし、高次脳機能障害がどう行為に影響しているのか?を考えるべきです。
 このことを考えると、失行症があるかどうかは検査するべきですが、患者さんの動きや認知面などの特徴をしっかりと捉えて、その特徴をベースに介入を考えていくことが重要です。もちろん失行症に詳しいことに越したことはありませんが、必要なことから勉強していくことも出来ます。

 ぜひ意識してみてください!!

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半側空間無視と空間認知

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半側空間無視は非常に有名であるため、臨床において安易に【半側空間無視がある】と考えがちです。ですが、その本質を理解していないと、他の減少と間違えてしまうことも少なくありません。

そこで今回は、混同しやすい注意点を書いていきたいと思います。

半側空間無視(USN)の落とし穴?!

半側空間無視(unilateral spatial neglect:以下USN)とは、「大脳半球病巣と反対側の刺激に対して,発見して報告したり,反応したり,その方向を向いたりすることが障害される病態である(Heilman ら 1993)」と定義されています。
USNの多くは右半球損傷によって生じるため、反対の左側からの刺激を無視してしまうことになります。
よく聞くのは、左側からの呼びかけに反応しなかったり、左側を見落としたりという現象ですね。

一般的にUSNは、視覚性の無視を指すことが多く、先述したような左側を見落とす症状が取り上げられることが多くなっています。

一方で、定義の中で無視する対象は【刺激】とされており、体性感覚的な刺激も無視の対象となります
つまり、麻痺側の身体に対する刺激を【無視してしまう】状態が考えられるということです。

よって、感覚麻痺や身体失認などの現象と混同しやすいことは想像に難しくなく、その判別が必要になる事は言うまでもありません。

また、半側空間無視は回復期で多くが改善した【ように見える】症状でもあり、生活期においては回復期と比べると症状が顕在化している人は少ないと思われがちです。
ですが、半側空間無視の本質は【空間認知の障害】であり、その状態で生活をしていた時期があれば、空間認知に問題が残らない訳がありません

よって、生活期においても【USNの影響】は残っていることが多く、セラピストはそのつもりで評価・介入をすることが大切です。

空間認知を評価する

では、半側空間無視を有している患者さんの病態を理解していく時には、どういうことを考えて、評価をしていけば良いのでしょうか?

ここで大切なのは、USNが様々な空間を認知することの障害であるということです。
その空間が、視覚空間なのか、体性感覚空間なのかなどによって行う評価が変わってきます。

この時に注意しなければならないのが、

  • 視覚性無視と半盲
  • 体性感覚性無視と身体失認
  • 体性感覚無視と感覚麻痺
  • USNと消去現象

これらの混同です。
体性感覚の空間認知に関しては記事(→左片麻痺の体幹の崩れの原因とリハビリの方法)を参考にして頂きたいですが、右半球損傷では空間性注意に問題が生じるため、これらのような混同しやすい現象がみられます。

また、リハビリの目的はUSNがあるということを確定することではなく、高次脳機能障害が行為にどの様な影響を及ぼし、ADLを阻害しているのかを考え、介入していくことにあります。
この正確性をあげていくために、評価があるということを忘れてはいけません。

患者さんが麻痺側の刺激を認知できないのはどうしてなのか?
その事によって空間認知がどう障害されているのか?
その結果、どの行為や動作にどう影響を及ぼしているのか?
これらを考えていくことが大切です。

実際にどう評価していくのか?
その評価結果をどう解釈して介入にいかしていくのか?

これらを知って目の前の患者さんの改善可能性をもっと引き出したい方、ぜひ一緒に成長していきましょう!!

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注意の分配性って間違えやすい。大丈夫かな…??

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昨日オンラインサロンのメンバーで症例検討を行っているなかで<注意機能>の話題になりました。

昨日書いたブログにも書きましたが(注意障害には注意が必要?!)、注意機能には様々な種類があります。

その中で昨日話題にあがったのが、<注意の分配性>に関することでした。

注意を分配するってどういうこと?

注意の分配性とは、2つ以上の対象に注意を向けることです。
その2つの対象に対する注意の量は調整することができて、1:1、2:1などどちらかを多くしたり、少なくしたりが出来ます。
この配分量は、何に基づいて決まるかというと、<意図><難易度>によって決まります。

今から自分が何の目的でどう行動するのか?
そしてそれはどれくらい難しいのか?

によって、目的を達成するためには何に注意を向けなければならないのか?が決定されるということです。

例えば、食事の場面を想像した時に、左手で茶碗を持ち、右手で箸を操作しているとします。(もちろん左利きの方は反対です)
この時、お茶碗を持っている左手と箸を操作している右手では、右手(正確には箸)の方が多く注意が向けられていると思います。
これは、箸で食べ物を掴み口に運ぶことが目的であり、より難しい操作が求められているためだと考えられます。

この注意の配分と併せて話にあがるのが、ダブルタスク課題です。
このダブルタスク課題は、2つのことを同時に遂行する課題で歩きながら話すなどがそれにあたります。
これも注意の配分の機能が重要で、2つのことに適切な注意を配分する必要がある。と考えられますが…。

意識の制限と注意の分配の矛盾

ここで1つ気を付けなければならないのが、

【人は1つのことしか意識することが出来ない】

ということです。

つまり、歩きながら話すといった2つのことを同時に行っていたとしても、話している時は歩行は意識されていません。
先ほどの食事の時も、箸で食べ物を運んでいる時は、お茶碗を持っていることは意識されていません。

よって、注意の分配を考えていくと、2つのことに同時に注意を向けている中で、それぞれ異なる注意をしているということです。

異なる注意とは何か?ですが、端的に言うと能動的注意と受動的注意になります。

  • 能動的注意とは、自分が意図的に注意を向けている状態で、食事場面でいえば箸を持っている側への注意になります。
  • 受動的注意とは、センサーの様な物で、食事の場面でいえばお茶碗を持っている側への注意で、お茶碗が落ちそうになったり、傾き過ぎたりした時に感知できるように働いています。つまり、いつでも注意を向けられる状態を保つ感じです。

このように、1つのことしか意識できない制限をクリアするために、人はいつでも意識する場所を変えられるようにセンサーを張り巡らせながら行動しています。

この意識の制限は他の方法でもクリアすることが出来ます。
例えば、股関節/膝関節/足関節が同時に動いた時、これらすべての関節の動きを知覚するためには、すべての関節に注意を分配しなければならないように思います。ですが、先ほど書いた通り意識できる関節は一つです。

ではどうすれば良いか…?
それは、下肢全体を視覚的にイメージすれば可能となります。
詳しくはサロン内で話していますが、簡単にいうとイメージが各関節の運動覚に基づいているからと言えます。

このように、注意と意識の特徴を捉えて、その制限をクリアし介入を考えて行く。
そのためには、患者さんを正確に理解し、病態を解釈しなければなりません。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない注意をどう考えていますか?
実は動作から注意を観察することも出来るんです…。

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注意障害には注意が必要?!

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<注意障害>は臨床現場では毎日のように聞く言葉です。
実際、脳血管疾患の患者さんでは非常に高い割合で注意に関する能力が低下しています。
ですが、この注意障害に頻繁にあうこと、病態が一見単純に見えることから安易に「患者さん注意障害あるよね」と言ってしまいがちです。

そこで今回は、注意障害を整理しながら、知覚との関係や行為との関係を書いていきたいと思います。

注意障害の本当に大切なことは…

注意はいろいろな分類がなされています。
その中でも最も有名なのが、

  • 持続性:注意を喚起した状態を保つ能力
  • 分配性:2つ以上の物事へ注意を払う能力
  • 転換性(転導):注意の対象を変えるなどの変化させる能力
  • 選択性:注意する対象を意図に応じて選択する能力

です。
この分類が浸透したことによって、臨床では患者さんがどの注意能力の低下が生じていることを判断することが第1段階とすることが多いです。
もちろん検査を実施した上で判断することはとても大切ですが、その前に1つ考えなければならないことがあります。

それは…

【注意ってそもそもどんな役割を持っているの?】

例えば、起き上がる時に注意はどういった役割を持っているのか?
歩行の時はどうか、上肢での道具使用の時はどうか…。

これらを考えなければ、注意障害とリハビリによる介入は大きな距離を持ってしまいます。

これらのことから、患者さんを観察していく上で、

  1. 注意障害が行為や動作にどう影響しているのか?
  2. それは改善出来る可能性があるのか?
  3. 介入の対象になりうるのか?

これらを考えていくことが、注意障害において大切なことになります。

行為では注意はこんな役割がある!の例

そこで、少し例を出して考えて行きたいと思います。

①注意は知覚するためには必須の能力であること

触れている、動いているなどの知覚は注意によって引き起こされます。
例えば、掌がベッドに触れていることを知覚するためには、掌に注意を向けた上で掌を意識しなければなりません

起き上がる時に、ベッドに掌が触れ、圧が加わっていることが知覚されると、自分がどれくらい掌に体重を乗せているのかを認知することが出来ます

もし、掌に注意を向けることが出来なければ、掌を意識することも、触れていることを知覚することも、どれくらい体重が乗っているのかを認知することも出来ません。
こういった状態で、掌をベッドに付けてスムーズに起き上がることが難しいのは想像に難しくありません。
もしかしたら手をベッドにつかないように起き上がるかもしれません。

このように、自分の身体に注意を向けることが出来ない場合は、知覚が上手く行えない可能性が考えられるため、動作や行為に大きな影響を及ぼします。

②行為を行う時に注意する場所は介入の時とは違うことが多い

リハビリの介入では、セラピストが患者さんに注意して欲しい所があります。
その箇所へ注意を向けてもらうために、声掛けや感覚刺激を入力することは珍しくありません。

ですが、その注意して欲しい場所は実際に行為を行うときに注意する場所とは異なることが多いんです。

その代表例が歩行訓練でしょう。
介入では、足底や関節覚など自分の身体に注意を向けるような指示をすることが多いですが、実際の歩行では視覚性の注意を中心に使用しているため大きな差が生まれます。
よって、膝に注意を向けていれば上手く歩けるけど病棟ではうまく出来ないといった、難題にぶつかってしまうということです。

この時に気を付けなければならないのは、患者さんが自然歩行の時に何に注意を向けているのかを知ることです。
もしそこに注意障害が影響しているのであれば、そこを考慮して介入を進めていく必要があります。

このように、行為と注意、注意と介入、介入と行為はそれぞれの関係性を考えて観察し評価をし、介入していく必要があるということですね。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない注意をどう考えていますか?
実は動作から注意を観察することも出来るんです…。

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【高次脳機能障害を観察する!!】

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高次脳機能障害と行為を関連付ける方法

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今回は、皆さんより多く声をいただいている高次脳機能障害について書いていきたいと思います。
その中でも特に、高次脳機能障害と動作をどう関連付けて行けば良いのか?に焦点を当てて行きたいと思います。

本テーマはトレンドでもあり、先日開催された日本神経理学療法士学会のカンファレンスでも取り上げられていました。
本学会では、半側空間無視と歩行についての関連性についての討論がされており、多くの療法士が悩んでいる現状を知るきっかけにもなりました。

実際、私の職場の療法士も、どうしても高次脳機能障害と動作を分けて考えてしまう人が多く、リハビリも悩んでいるという声を聞いています。
なぜこのような事態になってしまうのでしょうか?
この点を踏まえて書いていきたいと思います。

高次脳機能障害を一言でいうと…?

そもそも高次脳機能障害の診断基準は日本ではどうなっているのでしょうか?
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障碍者リハビリセンターによると、

  1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
  2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。(省略)

とされています。
つまり、高次脳機能障害は、

  1. 何かを認知することが出来ない
  2. 何かを認知しようとすると上手くいかず、エラーが生じる
  3. 認知できることに偏りがある

これらに加え、

  1. 認知した結果を動作に反映できない
  2. ある動作において必要な認知が出来ない

と考えることが出来ます。

リハビリの臨床において、高次脳機能障害を特定していく為には、検査が必要です。
検査結果から、ある高次脳機能障害が疑われれば、追加の検査を実施したりしながら病態の解釈へと進んでいくと思います。
それらを統合し、疑いがある〈高次脳機能障害へのアプローチ〉が開始されていきます。
もちろん正確に高次脳機能障害を理解するためには検査や評価は必須です。
それは言うまでもありません。
ですが、ここには大きな落とし穴が隠されています。それは…

  1. 検査を行わなかったものに関しては、見逃してしまう可能性がある
  2. 動作との関連性を考えることが非常に難しくなってしまう

この2点をクリアできなければ、本来の目的である生活の改善を目指すことが出来なくなってしまいます。
ではどうすれば良いのか?私なりの考えを書いていきます。

【情報】の落とし穴

リハビリでの介入は、情報収集から始まります。
年齢・性別などの基礎情報に加え、疾患名・障害部位・画像所見などの医学的情報、家族構成・家屋情報・職業などの社会的情報などを包括的に収集していきます。
その中でも、医学的情報の障害部位や画像所見は、介入前に情報を得ることで、患者さんの病態予測を行うことが出来ます。
そして、高次脳機能障害の検査の選択もある程度この時点で目星をつけていきます。
効率的かつ根拠をもって介入していく為には必要な手続きになりますし、必須であることは間違いありません。
ですが、先ほど書いた落とし穴の1番である、障害の見落としが発生する可能性は否定できません。

先入観の無い観察の大切さ

事前情報を最大限に生かしていく為には、【観察】が必要になります。
事前情報は予測する事を可能にしてくれますが、時には先入観となって観察内容に干渉してきてしまうことがあります。
錐体路が損傷していないから運動は問題ないだろうという考えが代表的でしょうか。
運動障害の原因は麻痺だけではありません。
補足運動野が損傷していたり、機能解離1)によって機能停止している場合では、運動を遂行できないケースも存在します。

私は、この様な事態を避けるために、観察と分析を分けて考えています。

  • 観察:観察者の主観を入れずに、患者さんに生じている事象をそのまま記述する手続き
  • 分析:事前情報、観察結果、検査結果などを統合し、病態を解釈していく手続き

この場合、先入観によって観察内容がズレることはありませんが、記述内容には工夫が必要です。
学生の頃に習った様な、「股関節が屈曲し…」の様な、関節運動学に基づいた観察だけではなく、むしろ患者さんの【振る舞い】そのものを記述していきます。
その中には、立ち上がりの時にはどこを見ていたか、何に気を付けていたのかなどの患者さんの1人称による発言も記述していく事も大切です。
この観察の中で気になった事、違和感程度のことでも構いません。それを記録として残しておき、検査の対象にしていきます。すると、検査の対象は、

  • 事前に得た情報に基づいた検査(右の中大脳動脈の梗塞だから、半側空間無視の検査など)
  • 観察や検査、評価を行っていて気付いたこと、違和感を解釈するために必要な検査(単関節では動きは良好なのに、歩行ではぎこちない:失行症の検査など)

と幅が広がっていきます。

高次脳機能障害と行為を結び付ける

ここまで書いてきた観察と分析を分けて考える方法は、障害の見落としが減るのはもちろんですが、もう1つ利点があります。
それは、

観察の中で気付いた点や動作の違和感であるため、動作と結びつけやすい

ことです。
「本患者さんには、半側空間無視がある」ではなく、
「歩行の時に麻痺側の振り出しがぶらぶらしているように見えるのは、全身動作において麻痺側に注意喚起が難しいからだ」
と、行為において生じている現象を理解するために、認知機能や注意機能の検査を行っていきます。

介入の一連の流れに、観察を取り入れ、検査の持つ意味合いを少し工夫すると、高次脳機能障害と行為とのつながりが見えやすくなるのではないでしょうか?
もちろん、この観察はすぐに出来るようになるわけではありません。
特に関節運動を中心に観察する方法を学校で習ってきた理学療法士は、観察の方法を工夫したり、時には1から組みなおす必要もあるかもしれません。

ですが、このような観察は訓練の幅そのものも広げてくれると考えています。
動作と高次脳機能障害の関係性が理解できていれば、訓練もおのずと認知的な側面(高次脳機能障害は認知障害であることを前提に)を考慮したものへと変化していきます。
つまり半側空間無視への介入、歩行への介入ではなく、

半側空間無視を呈している人への歩行改善を目的とした介入

です。
つまり、もっと歩きやすくなってもらう為には、患者さんを半側空間無視がある人として捉えて、訓練を工夫していくイメージです。

現在のリハビリでは、

  • 歩行を改善していくためには、半側空間無視を改善していかなければならない
  • 半側空間無視のあるなし関係なく歩行練習をおこなっていかなければならない

など、いろいろな考え方があります。
その中でも私は、高次脳機能障害を認知の癖として考えて、介入方法や関わり方、コミュニケーションまで全てをプランニングしていきます。

『こんな観察できるようになりたい!!』
『そんな訓練どうやってやるの??』

そう思っていただいた方、一緒に勉強してみませんか?

1)機能解離:限局性脳病変から離れて発生する神経生理学的変化を説明するために、1914年にvon Monakowによって提唱された概念。機能的に連結している部分などの脳血流量の減少や過剰興奮などが観察されている(E Carrera,et al 2014)

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失行症を<見抜く>観察を

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
理学療法士の唐沢彰太です。

脳卒中後の後遺症の1つである【高次脳機能障害】には、皆さんからよくいただく問題点があります。
それは、高次脳機能障害の検査は主に机上で行われるため、実際の動作や行為との関係性が理解しにくいことです。

例えば、机上検査では問題がなかったのに、病棟や自宅での生活場面になると注意障害の影響がみられるなどがあります。
反対に、机上検査では問題が見られたのに、日常生活場面では影響がみられない場合もあり、この時はリハビリとして介入する必要があるかどうかも考えなければなりません。

今回は、この高次脳機能障害の中でも特に観察から感知することや、実動作との関係が難しい【失行症】について書いていきます。

失行症って難しい…?

<失行症>って聞くと、皆さんどんなイメージでしょうか?
私が学校で習った失行症で記憶に残っているのは、手で狐を作ってマネしてもらう検査だけでした…。(お恥ずかしい)
セラピストとして働き始めてから、高次脳機能障害について勉強し始めましたが、失行症に関しては検査はもちろん、介入が難しくなかなか臨床に持ち込めずにいました。

これは皆さん同じなのではないでしょうか?

最近では、失行症に関する書籍や論文が急増している事もあり、私が新人だった頃よりも理解を深めやすい環境かもしれません。
ですが、いまだに介入は確立されておらず、検査と実行為、介入と実行為の距離はあまり縮まっていません。

これは以下の3つの原因があります。

  1. 机上での検査がメイン
  2. 簡易的に行える検査の「模倣」と実行為との関係の情報が著しく少ない
  3. 介入方法が明確ではなく、検査をしても臨床で訓練として実施しにくい

1は失行症に限らずですが、冒頭で書いた通り高次脳機能障害の検査が机上で行われることが多いため、実行為との差が生じることです。
この事については、近日中に別記事で書いていきますのでそちらをご参考ください。

2は、私が学校で習った記憶のある、狐をマネしてもらうなどの【模倣検査】についてになります。
この模倣検査は、失行症の検査で最も簡易的に行える検査で、私も臨床の中でスクリーニングとして使用することが多いです。
ですが、この模倣検査にも落とし穴があります。
それは、模倣が出来ない原因を考えなければ意味がないということです。
この模倣検査を行い、何かしらのエラーが見られた時、【どうしてそのエラーがみられたのか】の原因を考えます。
その原因が、実行為におけるエラーの原因と関係性があれば介入の対象になっていきます。
つまり、

  • 模倣でのエラーの原因
  • 実行為のエラーの原因

これらがわからないと意味がないということです。
失行症において、この点が最も難しく、重要な点になります。

2で書いたように、失行症は介入までの分析と考察が非常に重要になります。
加えて3の効果的な介入が未だに確立されていないことで、リハビリにおいて失行症はまだまだ難しい領域なのです。

失行症見逃してませんか?

そんな失行症ですが、一番の問題は半側空間無視などとは違い、観察から見つけることが困難な症状です。
言い換えると、検査を行わなければ【見逃してしまう】可能性が高いのです。

私が高次脳機能障害に関する勉強会で話をさせていただくときは、必ず

「失行症の患者さんを担当したことがありますか?」

と質問します。
すると、担当したことがある人は半分もおらず、ある勉強会では100人ほど参加者がいたにもかかわらず、10人も担当したことがないこともありました。

文献にもよりますが、失行症は左半球損傷の3~5割、失語症を呈している場合は7割もの罹患率です。
つまり、先ほどの勉強会のときの割合では数が少ないのです。

今お読みいただいている方も自分の担当患者さんを思い出してみてください。
もしかしたら、あの人失行症だったのかも…という患者さんがいるのではないでしょうか?

これらのことからも、失行症を検査をせずに見つけることは非常に困難であることは明らかです。
ですので、左半球損傷の方にはスクリーニングとして模倣検査を行うことをお勧めします。

もちろん、動作や行為の中で、失行症の徴候を見つけることも出来ますが、少し練習が必要です。
最初は全員にスクリーニングを行い、その方の動作や行為の特徴を覚えていってください。

すると、失行症の方の動作や行為の特徴が徐々に見えてきます。

ですが先述したように、模倣検査しただけでは意味がありません。
原因を考えて行くプロセス、その結果を実際の行為と結びつけるプロセス、最終的には介入までの一連の流れを知っている必要があります。

もしこの点について勉強していきたい方がいらっしゃればぜひオンラインサロンへご参加ください!!
一緒に勉強していきましょう!!

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