見えていないけど…視覚と盲視の不思議

見えてないのに… 視覚と盲視の不思議

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プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
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脳血管疾患の中で、脳梗塞や脳出血においては半側空間無視や半盲など視覚障害が生じます。運動障害や感覚障害の改善にフォーカスすることが多いため、あまり注目されませんが実は視覚の問題は思っているより多いんです。その中でも盲視と呼ばれる現象は非常に難解で見逃されやすい上に、ADLを大きく障害します。

そこで今回はこの盲視に関する内容とリハビリテーションについて書いていきたいと思います!

視覚の基礎

網膜に写った【光刺激】は電気信号に変換されて視神経を伝達していきます。その過程で、いくつかの経路を通り脳へと到達していきます。その過程を図式化したものが図1になります。この図を見ると、上丘と外側膝状体でまずわかれていて、いわゆる視覚情報は外側膝状体の経路のことを言い、上丘の経路はサッケードと呼ばれる無意識の眼球運動に関与していると言われています。この経路が今回の盲視と関与しているという報告があり、口述します。

また外側膝状体の経路は1次視覚野で更に分かれているのが分かります。図1では1次視覚野から2つに分かれていますが、図2では3つに分かれています。これらは【what】と【How】の経路とも呼ばれていて、側頭葉にいく経路は物の名前や知識に関与していて、上頭頂小葉にいく経路は物の位置など空間の処理や道具の使い方に関与していると言われています。つまり、「これはハサミだな」と「ハサミの使い方はこうだな」は経路が異なるということです。また図2にある真ん中の下頭頂葉に行く経路は背側と腹側の経路それぞれから情報を受け取るハブの役割と手の行為とのつながりが強いと報告されています。

このように視覚と上肢の行為は深いつながりがあり、視覚障害は行為障害の原因となりうることが分かります。

図1 眼球から脳への伝達経路(A Goodale,et al,2004改変引用)

図2 視覚の3つの経路(G Rizzolatti,et al2006より改変引用)

盲視の不思議

盲視とは、視覚の自覚がないにも関わらず物体へ正確にリーチングできる現象のことです。例えば視野検査を行った時、左下の視野にある検者の指が【見えない】と回答したとします。そして、その【見えていないはずの】指を掴むように指示すると正確につかむことができるんです。

 これは、患者さんは【見えない】と自覚している場合においては、階層性が存在する可能性があります。つまり、本当に見えていない場合と見えているけど見ている自覚がない場合があるということです。この現象は非常に難解で、何より見えていない視野の物体に正確にリーチできても、患者さんは一切驚かない点が最もやっかいです。

 盲視に対するリハビリテーションは全く確立されていませんが、見えていない視野を運動覚や触覚からイメージしていく課題で改善した例を数例経験しています。具体的には、左の視野が見えない場合において、閉眼した状態で見えていない視野で図形を指でなぞる課題です。この課題中患者さんは、体性感覚によって図形を無意識でイメージします。いつもは見えない視野と空間的に一致した場所でイメージをするため、視覚情報が構築しやすくなります。

 この様に、視覚障害においても体性感覚を入り口に視覚イメージを有効に活用していくことが有効なケースが存在しています。もし興味がある方は問い合わせやSNSのDMからご連絡ください!!

 

 

引用文献

1.Melvyn A Goodale,David A Westwood.An evolving view of duplex vision: separate but interacting cortical pathways for perception and action.Current Opinion in Neurobiology 203-211,2004

2.G Rizzolatti, V Gallese.Do perception and action result from different brain circuits? The three visual systems.hypothesis – 23 problems in systems neuroscience, 2006

 

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無意識で行っていた行為を再獲得するためのポイント

無意識で行っていた行為を再獲得するためのポイント

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リハビリテーションは、全人間的復権を目指し病前行っていた行為を再獲得することが目的の根幹にあります。基本動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり)、歩行、階段昇降、上肢行為など様々な行為が対象となり患者さんのニーズや文脈によって決定されます。
 そのような臨床の中で大切なのは、セラピストが「もともと無意識で行っていた行為を再獲得するためにはどうすれ良いのか?」を知っていることです。皆さん今日の朝どうやって起き上がったのか覚えていますか?もし脳卒中になったらその起き上がり方思い出せますか?今回はこの点について書いていきます。

意識していた行為が自動化していく

 無意識に行える行為で最も有名なのは歩行です。歩いている時にはCPG(central pattern generator)と呼ばれるリズム生成器のシステムが働き無意識で下肢が交互に振り出されます。ですが、脳卒中や下肢骨折などにより歩行が思うように行えなくなると、前頭葉が本来よりも大きく活動することが分かっています。つまり足をどう出そうか、どう支えようか、どうバランスを取ろうかと考えるためです。
 ここで1つ大切なのは、この前頭葉が過活動している歩行を繰り返していれば自動化するのか?ということです。学習によって本来の歩行のときと同じ脳活動に戻るのか?ですね。答えは戻る人と戻らない人がいるです(ちょっとずるい答えですが…)。ここの違いには高次脳機能障害と歩行能力が大きく関わっています。転倒リスクが高い人や失行症などは歩行の自動化を阻害します。その場合ただ歩く練習を繰り返すだけではいつまでたっても歩行中に前頭葉が過活動し、実用的な歩行の獲得が難しいということになります。

 ではどうすれば良いのか?通常行為は無意識で行われますが、獲得していく時には身体や環境に注意を向け情報収集し学習していく必要があります。立ち上がる時の両下肢の位置、体幹の前傾など立ち上がりに必要なコンポーネントを文脈に沿って学習していくことで立ち上がりが獲得できるイメージです。ですが立ち上がりの最中に「両下肢の位置…」「体幹をこれくらい傾けて…」と考えてしまうと、自動化が遅くなってしまう可能性があります。もちろん動作練習は動作を習熟させていくためには必要です。ですが、繰り返す=改善ではないことは知っておく必要があります。

無意識の行為は意識出来ることが大切

 歩行中に皮質が全く働いていないかというとそうではなく、しっかりと前頭葉は働いています。前述したような「足をどう振り出そう…」という思考ではなく、いつでも歩行をコントロールできるようにモニタリングしていると考えられています。例えば横から突然人が出てきて止まる、方向を転換する、ちょっとした段差を越える、少しスピードを速くするなどリズムが変わる瞬間には前頭葉が重要です。
 よって無意識で行っている行為でも、人は必要に応じて意識することが出来ます。ここが大事なんです。自分が意識したい所に注意を向け適切な情報を得ることができる。だからこそ行為が自動化しているんです。

 本記事の冒頭で書いたように、今日の起き上がりの仕方は思い出せませんが明日起きたときに意識すればどう起き上がっているのか分かると思います。これは適切に注意を向けられ意識できて記憶できるからです。つまり起き上がりが学習されているからなんです。自動化された行為はいつでもマニュアルに切り替えられます。この両側性が行為には必要です。しかし道具を使用する行為は道具がなければマニュアルに切り替えられない行為も存在します。箸の持ち方などが典型例です。このような行為には接触情報がとても大切です。よって介入でも接触を取り入れた介入が大切になります。

 いかがでしたでしょうか?無意識で行っていた行為を再獲得し自動化するにはいろいろな工夫が必要です。反復に加えて注意を向けるところや意識することなどを考えて介入を組み立てていくと患者さんの学習を促していきやすいと思います。

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論文引用=根拠?

論文=根拠?

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先日理学療法ガイドラインが発行され話題になっていますが、そもそもリハビリテーションにおいてよく耳にする「根拠(エビデンス)」とは何なのでしょうか?人そのものを対象にしている医療に属するリハビリにおける根拠は、人体を対象としている医学の根拠とは分けて考えなければならないと思っています。

そこで今回は、リハビリにおける根拠について書いていきたいと思います。

論文は参考資料

最近の学会での症例発表では、たくさんの論文を引用して臨床を形作っているものを見かけます。私も学会で発表する時には、自分の臨床が客観的に見て効果があるのかどうかを証明するために論文を引用します。これには3つの意味があると思っています。

  1. 自分以外にも同じ意見の人がいる
  2. 自分以外にも同じ臨床をして患者さんが改善した経験の人がいる
  3. 研究などの知見が自分の臨床を後押ししている

自分が一人で言っているわけではない、知見を参考にしているという姿勢を見せるためには論文を引用するのが最も有効な手段になります。

 ですが、私は研究者ではありませんし研究には詳しくありません。さらに、ケーススタディのケースの患者さんには当然会ったこともありませんし見たこともありません。つまり論文の知見はあくまで参考程度に留めておかなければならないと思っています。

 例えば、「歩行の立脚期において中殿筋が活動している」は多くの人の歩行中の筋活動をみたり物理的な観点から説明されたりしています。また「話す時にはブローカ野が活動する」も多くの人で証明されています。このような、「人」である限り共通の【機能を有している】ことで臨床に参考資料として使用できます。ですが、これらの知見も「どう臨床でいかすのか?」については、患者さんの背景や文脈、目標などの個人因子や環境因子が大きく関わり論文の知見をそのまま引用するには限界があります。
 これらのことから、論文をたくさん引用する=根拠があるわけではなく引用しないよりは引用したほうがよく根拠があるかどうかを考えるためにはもっと大切なことがあると思っています。

言語化出来ないことは根拠を証明できない

 私は臨床を言語化する作業をとても重要視しています。なぜそう考えたのか?どうしてその介入をしようと思ったのか?患者さんに何が生じて変化したのか?これらを言語化できるかできないかは、根拠をもって臨床に臨めるかどうかを大きく左右すると思います。
 この言語化するということは、説明できることと言い換えられます。患者さんに説明する、セラピストとディスカッションするなど自分の臨床を説明する場面は多くあります。その中で明確に説明できるかどうかは、根拠を持って臨床出来るかと密接につながっていることになります。つまり、みんなが納得できるかどうか?が重要です。この言語化していく作業の中で、論文の知見を取り入れられることが出来れば、非常に効率的に臨床を組み立てることができます。

 このような私が大切にしている臨床思考を「ロジカルシンキング」を用いて行うことから「ロジカルアプローチ」と呼んでいます。根拠がある臨床を行っていきたい人は是非ご参考ください!!

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