スムーズに行為をおこなうために-運動と行為の違いから-

スムーズに行為をおこなうために

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プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

スムーズに歩く
スムーズに文字を書く

人は、様々な行為をスムーズに行うことが出来ます。リハビリテーションの目的においてもぎこちない状態からスムーズにできるように介入することも少なくありません。そもそも人はどうしてスムーズに動くことが出来るのでしょうか?そこには人ならではの理由があります。

 そこで今回は、脳卒中の患者さんから行為をスムーズに行うことの難しさを考えて、運動と行為が全く異なる次元であることを書いていきたいと思います。

ぎこちなく歩く患者さんたち

 痛みがあったり動かない関節があると人の歩きはぎこちなくなります。痛みが出ないように動いたり、動きにくい関節を使わなくても良い動き方をしたりするためです。ですが、痛みもない、関節も動かせるにもかかわらずぎこちなく歩く患者さんをみたことがあるのではないでしょうか。

 1つの関節を動かす単関節運動は問題なくできるのに、歩くとぎこちない。膝関節の屈曲伸展は出来るのに歩くと膝関節の動きが見られなくなってしまう…手の指を1本ずつ動かせるのにボタンをしめようとすると指の動きがぎこちなくなってしまう…これらの現象は優位半球である左半球を損傷すると実は高い頻度で見られます。ですが、運動麻痺など【そもそも動かせない】ことがマスキングしてしまい、注意深く観察し加えて検査をしなければ見つけることが出来ません。

 ここで言う検査は模倣検査やパントマイムの検査などを指しています。そうなんです、ぎこちない行為を現象とするのは【失行症】です。運動や感覚に問題がないにもかかわらず、合目的的に動くことが出来ない。つまり、自分の意図によって目的を持った行為が出来ないということです。失行症は【行為を失う】と書くことからも、運動の障害ではなく行為の障害だと捉える必要があります。

 では運動と行為はどう違うのか?について書いていきたいと思います。

運動と行為は全く違う

運動・動作・行為は非常に似ていてごちゃまぜに考えてしまっている人も少なくないと思いますが実は全く違います。これら3つの違いについてはこちらの記事をご参考ください!
→運動・動作・行為を使い分ける!
 少し触れると、太ももに手を置いた状態から前に伸ばすリーチングは

  • 肩関節の屈曲
  • 肘関節の伸展
  • 前腕の回外(中間位へ)
  • 手関節の背屈

 が時間的に連動し行われています。このように、一見運動の足し算で行われているように見えますが実は行為には運動にはない要素が含まれています。
 それは…【目的】です。肘を伸ばす運動の目的は肘を伸ばすことが目的ですが、リーチングは手を前に伸ばす(もっと言うと手を物体へ近付けていく)ことが目的です。そうなんです、関節を動かすことが目的ではないんです。
 そうなると少なくても運動と行為では次のようなことが異なっていることがわかります。

  • 運動は身体に、行為は外部環境に注意を向ける
  • 運動は関節が動いたのかが結果であり、行為は目的が達成できたのかが結果になる

 肘を曲げる時に大切なのは肘が「曲がったのか?」であり肘の感覚に集中し結果を確認します。一方リーチングなどの行為で大切なのは、「手が前に移動したのか」「物体に手が向かっているか」であり、環境と自分の身体の位置関係や動いた関節の知覚など多くの感覚を統合して結果を確認します。つまり、行為は運動と比べても圧倒的に高次であり必要な能力も非常に多くなっています。
 失行症と言われる現象は、この行為をするために必要な能力に問題が生じている状態です。予測が出来ない、結果を確認できない、感覚を統合できないなど原因は様々ですが運動では使われない能力が障害されている可能性が非常に高いです。

 行為を対象に介入することが大切なリハビリにおいて、運動と高次脳機能障害をわけずに行為そのものを観察し分析し介入していく必要があります。
 お読みいただきありがとうございます。

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手のリハビリのポイント

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骨折や脳血管疾患の方のリハビリで特に難しいのが手のリハビリです。
身体の中でも決して大きくないこの部位は、多くの筋や骨から構成されており、その神経系や血管も複雑な構造をしています。

さて、手の中でも特に重要なのは母指です。つまり親指です。
母指は、他の四指と構造が異なり、人間特有の構造をしています。
この特有の構造の核をなしているのが球関節であるCM関節です。肩や股関節と同じ構造になっており、ぐるぐる回せる構造です。
この母指の機能は手の機能そのものと言えるくらい重要で、つまむ・持つなどには母指が安定性や巧緻性をもたらしています。
つまり、リハビリにおいて、この母指の改善こそが必須課題になってきます。

そこで、母指のリハビリで重要なことは、

「CM関節がなぜ球関節なのか」

肩は手と物体、股関節は足と床のように空間的な位置関係を構築するために重要な関節です。
その肩や股関節と同じ構造を持つCM関節は、母指と他の四指との空間的な位置関係を構築する役割があると考えられます。

例えば、ペットボトルを握った時、母指は他の四指のどの前に位置するでしょう。
ほとんどの人が、中指の前に位置していると思います。
また、小さいものをつまむときは薬指や小指ではなく、示指とつまむと思います。

これらは手の構造が関係していますが、それ以外にも実は理由があります。
皆さん今、テーブルでPCで読んでいただいている方、電車でスマホで読んでいる方がいらっしゃると思いますが、自分のズボンの素材の手触りを確かめてみてください。

何指で触りましたか?ほとんどの方が示指なでるように手触りを確かめたのではないでしょうか。
そうです。示指は材質を確かめる触覚に優れています。

中指は掌や母指と協力して物を安定させることに優れています。

薬指は、物を握った時に物の傾きや摩擦を感じることに優れています。

小指は、手全体の力量のコントロールに優れています。

この様に、4指にはそれぞれ得意分野があり、それを考慮して母指がそれぞれの指と関係性を持っていきます。
手のリハビリではこのような特徴を理解して、介入を考えていく事が求められます。
興味がある方はぜひプロリハ研究サロンへお越しください。

第3回オンラインセミナーvol2

運動障害がテーマのセミナー開催決定!!

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運動障害の評価と介入

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脳卒中後の内反は改善できる(介入編)

内反は改善できる【介入編】

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評価編での内容をもとに書いていきますので、評価編からお読みいただけると読みやすいと思います。
脳卒中後の内反は改善できる【評価編】

内反をいくつかに分類して、それぞれ介入方法をわけていくことをお話しました。その中でも今回は2つの種類の分類に対する介入について書いていきます。

足関節を動かすと内反してきてしまう

まず初めに、介入していく上で患者さんの内反に関する自覚度を必ず確認してください。視覚で確認しないと分からないのか、足関節の運動覚で分かるのか、収縮感で分かるのか、人に言われて気付くのか。この自覚の程度によってまず初めに何をするのかが決まってきます。

  1. 人に言われて気付く、知っている
    もっとも自覚度が低い状態のため、まずは自分で確認して気付けるようになることを目指す
  2. 視覚で確認して気付く
    歩行中下を見ているなどある特定の動作中に内反してくることを「知っている」状態。足首の運動覚で気付けるようになることを目指す
  3. 足関節の運動覚で気付く
    言われなくても見なくても内反に気付くことができる状態。介入していく場合はこの状態まで自覚度を上げることからまず行っていく

3の状態であることを前提に今回は書いていきます。

 脳卒中の患者さんは足関節の自動運動が難しい方が非常に多いです。特に背屈が困難な患者さんが多く歩行のクリアランスに大きく影響します。背屈が難しい理由はいくつかありますが、徐々に足関節の背屈が出来るようになってくると背屈が内反になってしまうこととがあります。この場合は、足の裏の面と足首の運動をマッチングさせていく介入を行います。足首を動かす主な理由は、足の裏のどこを床に接地させるのかを決定することです。よって、足関節の角度と足の裏が今どこに向いているかを認識する介入が足関節の運動の細分化を進めていきます。

 具体的には座位でセラピストが患者さんの足を持ち上げます。この状態で足関節を他動的に動かし、
「この状態で足を下ろしていったら足の裏のどこが床に着きますか?」
と聞いていきます。この時患者さんは足関節の運動覚から足部のイメージをしなければならず、自然と足関節の運動の洗練化が生じてきます。この介入の後に自動運動で背屈して、足の裏のどこを接地する予定かを聞きながら介入を進めていきます。

他の関節を動かしたときに内反してしまう

 座位で股関節を屈曲して足を浮かすと内反してしまう、膝を屈曲すると内反してしまうなど足関節を動かしていないのに内反してきてしまうケースです。このケースでは足関節そのものに問題があるのではなく、内反が出現してしまう他の関節の動かし方に問題がある場合が多く、その関節へアプローチしていきます。

 例えば膝関節を屈曲した時に内反してしまうケースでは、足の裏を床に滑らせるような運動をしてもらう時、足の裏に注意をしてもらう介入を行います。足の裏に絨毯など床とは摩擦が異なるものを入れて、その上を足を滑らせたときの足の裏の感覚を聞いていきます。最初は他動で行い、すべすべしている物の上を滑らせた時とざらざらしてい物の上を滑らせたときでどちらの方が滑らせやすいかがわかってきたら自動運動へと移行していきます。この時もう1つ大切なのは、足の裏全体が擦れているのがわかるかどうかです。内反すると小指側しか擦れないのでこの違いを内反が出ない膝の屈曲の方法を学習していくイメージです。

 この内反が出ない関節の動かし方を全身に拡張していき、最終的には歩行へと繋げていきます。歩行へ介入していくためには、歩行のどの時に出現しその理由は何なのかを明確にしておく必要があります。
 これら内反への介入についてプロリハ研究サロンでお話していますので、興味のある方はぜひHPをご覧ください。お問い合わせも随時受け付けております。

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脳卒中後の内反は改善できる(評価編)

内反は改善できる(評価編)

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脳卒中患者さんが安全に歩行が出来ない理由の中でも「内反」は改善が難しい現象の1つです。足首が内反してしまい、床との接地面が小指側だけになり荷重が十分に行えないため歩行は不安定になってしまいます。
 そんな内反ですが、実は改善できることを皆さんは知っていますか?実際私は臨床の中で多くの患者さんの内反を改善し装具を簡易的なものに変更したり、外したり出来ています。
 そこで今回はそんな脳卒中後の内反について書いていきたいと思います。

内反を分類して紐解いていく

私は脳卒中後の内反を分類して考えています。足部に生じる現象として類似している物が混在しているため、整理する目的です。

  1. 内反:放散による前脛骨筋の異常収縮による現象
  2. 内反尖足:内反に後脛骨筋を中心とした筋による底屈が加わったもの
  3. 足指の屈曲を伴う内反:内反にクロートゥーと呼ばれる足指の屈曲が加わったもの
  4. 1と3の同時出現

どの筋が関与しているのか、どの運動が見られているのかの視点での分類です。①は更に分類していきます。

  • 股関節運動時に出現する
  • 膝関節運動時に出現する
  • 麻痺側荷重時に出現する

つまり、足関節を動かした時以外にどの関節を動かしたときに内反が見られるのかを見ていきます。この理由は口述しますが介入する対象を決めるためです。

 この他に内反の改善を目指すために必要な評価は次のようなものになります。

  • 足関節の底背屈の運動評価
  • 足底の知覚評価
  • 内反の体性感覚的な自覚の有無

ここまでの現象による分類と、評価結果による分類から介入方法を決めていきます。この時大切なのは内反が患者さんのHOPEとなる動作の獲得に直結しているかです。立ち上がりが目標の方に内反の介入はしないイメージです。

内反は起きちゃってるのではなく起こしている

内反へのアプローチにおいて、患者さんが内反の自覚しているかどうかはとても重要な要素になります。歩行のように内反していると歩きにくいと言った文脈であれば気付くかもしませんが、起き上がりの時、靴を履くとき、立ち上がる時など内反が出現していることに気付いていないことが多いです。そうなると、介入しても動作に汎化しない結果になりがちなので内反に関する自覚の質問は必須です。

例えば、歩行の時にどのタイミングから内反が出現しているのか?股関節の屈曲時に内反が出現していることに気付いているか?など1つ1つ聞いていきます。この時の自覚は、人に言われて知っているではなく運動覚などの体性感覚によって気付けるかに注意してください。

 患者さんの内反に関する発言で良く聞かれるのは、「足首がひっくり返っちゃう」「勝手になっちゃう」など内反に対する主体感のなさです。つまり、自分が内反が出てしまう様な動き方をしているという思考になれるかどうかが大切です。これは介入において重要なので患者さんの発言を注意深く聞いて下さい。

次回介入について書いていきますのでお楽しみに!!

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どこからが身体失認?

どこからが身体失認?

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脳血管疾患など脳の疾患で、右半球を損傷した時にみられる身体失認。
皆さんは担当されたことありますでしょうか?
麻痺側の身体を認識出来なくなる病態ですが、感覚障害や同じく右半球損傷で多くみられる半側空間無視とこんがらがってしまう人も少なくないと思います。

そこで今回は、混同しやすい右半球損傷による病態をどう考えていけば良いのかを書いていきたいと思います!

動作時に麻痺側上肢を忘れるのは身体失認?

 片麻痺患者さんのリハビリにおいて難渋する現象の1つに、起き上がりや寝返りなど動作を行うときに麻痺側上肢を忘れて巻き込んだり、ぶらりとしてしまうものがあります。特に発症初期から回復期においては、麻痺側上肢の筋緊張が低下しているため管理が不十分になると怪我に繋がる恐れもありリハビリにおいて介入すべき対象となります。
 では動作時に麻痺側上肢を忘れてしまう原因は何なのでしょうか?身体失認が原因なのでしょうか?このことを考えていく前に、注意と身体図式について簡単にお話したいと思います。

  1. 動作時における注意について

    麻痺側上肢を忘れてしまう原因の1つに、麻痺側に注意を向けることが出来ないことが挙げられます。
    「自分の左肩に触れてください」
    「自分の左肘を見てください」
    など、そもそも左上肢に注意を向けることが出来なければ管理をすることは難しいからです。
    では身体失認との違いは何か?ですが、身体失認は身体に注意を向けられないという次元ではなく、健常者の感覚から言えば右半身が身体である感覚に近いと思われます。つまり、月は球体の形をしていると認識しているのが通常ですが、身体失認では半月を月と認識していて球体の形の月は【月ではない】と認識していることになります。
    この注意で考えれば、そもそも注意を向ける対象がないため肩や肘などの認識は非常に困難であると考えられます。
    鏡を見て自分を確認しようが、非麻痺側で麻痺側上肢に触れてもらおうがそれが、【自分の身体だ】ということには繋がらないのです。
    なんとなく注意障害と身体失認の違いが分かっていただけたでしょうか

     

  2. 動作開始時の身体図式の役割

    「それでは立ち上がってください」と言われた時、誰もがスムーズに立ち上がれると思います。言われるまでご飯を食べていても本を読んでいても立ち上がれない人はいないと思います。
    ここで1つ疑問なのは、今の座っている姿勢を意識しなくても立ち上がるための準備が無意識で出来るのはなぜか?ということです。
    例えば、だらーんと両足を投げ出して仙骨座りで座っていたら1度座りなおす動作が無意識で入るのがこれにあたります。
    つまり、人は意識しなくても自分が今どんな姿勢でいるのかを常にアップデートしている仕組みが備わっている仮説が立ちます。これが身体図式(ボディスキーマ)と言われているもので、動いたことで入力される感覚に基づいて常にアップデートされていると考えられています。
    では、麻痺側上肢を忘れてしまう人ではどう考えられるでしょうか?もう簡単ですね。動き出す時の身体図式に麻痺側上肢が含まれていない可能性が高いということになります。この身体図式に含まれない理由は3つあります。

①麻痺側上肢の知覚に異常がある場合

身体図式は、入力された感覚刺激を正常に知覚することでアップデートされていくため、感覚障害によって知覚が上手くいかなければ麻痺側上肢の身体図式がアップデートされず動作時に反映できない可能性が考えられます。

②半側空間無視による麻痺側上肢の無視がある場合

先ほどの注意障害に近しいのですが、半側空間無視(身体空間無視含む)によって麻痺側上肢を無視している場合も知覚に異常がある場合と同様に身体図式がアップデートされません。

③身体失認による身体図式の変質

そもそも左半身の存在を認識出来なければ身体図式がアップデートされることは難しいです。反対に、この身体図式に麻痺側上肢が含まれないことが身体表象を作り出している可能性も考えられます。

これらの原因を鑑別するのは非常に難しく熟練が必要です。その為、麻痺側上肢の知覚の状態を確認し知覚出来ているのに忘れてしまうのか、そもそも知覚出来ていないのかを評価することが大切です。現に、感覚障害の改善に比例して麻痺側上肢の忘れが軽減する症例は多くいらっしゃいます。ですがこの場合は身体失認の可能性は低く、感覚障害による影響が強かったと考えるのが妥当です。

 起き上がりや寝返り以外にも麻痺側上肢の管理が問題となる動作は存在していて、動作ごとに問題点を考えていかなければなりません。また、パラフレニーといった所有感を言語する病態もあり右半球損傷の高次脳機能障害を理解するには多くの知識が必要です。

プロリハ研究サロンでは、これらの知識を1から学ぶことが出来る数少ないオンラインサロンです。日々の臨床を1歩ずつ前進させてみませんか?

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失行症のリハビリテーション

失行症のリハビリテーション

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運動障害も感覚障害もないのに、意図した行為をスムーズかつ効率的に行うことが出来ない。失行症はそんないろいろな現象を引き起こす症状の総称です。教科書で使用した本にのっているような、「歯ブラシで髪を梳かしてしまう」「手で狐を作ったものを模倣できない」は一部でしかありません。

近年少しずつ解明されてきた失行症に対するリハビリテーションはまだまだ発展途上と言えます。そこで今回は、失行症を有する患者さんとのリハビリテーションについてポイントを整理しながら書いていきます。

失行症を見逃さない。それが大前提

はじめに、失行症について軽く触れておきたいと思います。
1920年代、Liepmanが失行症を定義し、観念失行、観念運動失行、四節運動失行に分類しました。後頭葉から前頭葉に向かって少しオーバーラップしながら【観念失行】【観念運動失行】【四節運動失行】を責任病巣と位置付けました。現在でもこの3つの分類は残っていて、<古典的分類>と言われています。臨床現場でもまだ使用されている名称であり、失行症を勉強していくと必ず聞くのではないでしょうか。その後Rothi、Ochipa、Heilmanらの素晴らしい貢献もあり失行症の研究は前進してきたようです。

このような歴史の中で最も重要なことは、<失行症とは何か?>がまだ定まっていないことです。これは、失行症の症状が多岐に渡ることが大きな要因で研究分野においても、失行症と一言でいっても様々な研究がなされている段階です。先述したような古典的分類では説明が難しい現象や新しく発見される現象など、失行症はまだまだ解明途中だと言えます。

このことは臨床にも大きな影響を及ぼしています。失行症が他の高次脳機能障害と比べて特徴的なのは、「なんとか行為が出来てしまう」ことです。もう少し分かりやすく言うと、「立ち上がれるけど何か変」「歩けるけど何かぎこちない」こういった程度の現象であることが多いのです。

すると、臨床においては<失行症を見逃してしまう>ことがよくあります。何とか出来るのならその動作を繰り返せば改善していく…臨床思考としては間違いではありません。ですが、失行症においてはこれは絶対に行ってはいけません。動作を繰り返して改善していくのは、運動学習が正常に行えるからで、失行症があるとこの運動学習が正常に行えずに動作が改善しない、むしろ悪化していくこともあります。

リハビリテーションの臨床では、まず失行症を見逃さないことが大切です。

検査をする、失行症がありそう…それから?

失行症を見逃さないためには、検査をすることが最も有効です。標準高次動作性検査(SPTA)など様々な検査があり、それぞれ特徴があります。それゆえに、検査結果から何を読み取ってどう介入にいかしていくかがとても大切です。

またそれとは別に、観察や動作分析から失行症を検出しにくいがために、失行症と行為の関係性を理解することが非常に難しくなっています。
つまり、模倣が出来ないことと歩きにくそうなことはどう関係しているのか?がわかりにくいということです。このことが、リハビリテーションを難しくしてしまい、本来のリハビリの目的である<生活・行為の改善>ではなく<模倣の改善>へと舵を切らせてしまいます。すでにお分かりかと思いますが、これではダメですよね?検査・評価結果から患者さんの病態を考えて、目標を達成するために介入しなければなりませんから。

そのためにも、失行症を理解するための知識と発見するための検査、それらを統合する思考方法を知り実践していく必要があります。

多くの失行症の症状は改善出来ます。これは私が臨床の中で多くの利用者さんを相手に実証してきました。皆さんの患者さんは失行症ではありませんか?動作練習では限界があります。適正で根拠のある介入をしていきたいと心から思います。

失行症のセミナーやっています

現在プロリハ研究サロンの週1回の定例セミナーは、失行症をテーマに開催しています。

少しでも興味のある方は是非1度入会してみてください!!

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筋力トレーニングと運動学習を分けて考えよう!

筋力トレーニングと運動学習を分けて考えよう!タイトル

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リハビリテーション(以下、リハビリ)の臨床の中で組まれるプログラムには、筋力トレーニング(以下、筋トレ)がほぼ入っています。実際、私が学生の頃の実習から新人まで筋力トレーニングは<積極的>に行っていました。
この時の筋トレは、単関節の運動やキッキング(臥位や座位で蹴るような運動)、ブリッジ、腹筋などいわゆるトレーニングを指すことが多いです。これに加えて、動作練習=筋トレのようなプログラムもあります。つまり、たくさん立ち上がりを繰り返して、立ち上がりに必要な筋力を向上していくイメージです。

このように、リハビリと筋トレは切っても切り離せない関係ですが、ここに運動学習を絡めて考えて行くといろいろなことが見えてきます。
今回はこの点に関して考えて行きたいと思います。

筋トレは筋トレ

筋力を向上するためには、トレーニングが必要です。その人に合った負荷をかけてトレーニングすることで、筋出力を調整する3つの要素のうちリクルートメント(運動単位の動員数)の効率化がみられ見かけ上の筋力の向上がみられます。つまり、1つの運動神経で多くの筋を動かすことが出来るようになってきます。
 リハビリにおいて、廃用症候群のような筋力自体が低下して動作を安全に行うことが難しくなっている人や運動耐容能が低下している人は、筋力や基礎体力の向上が必要です。そのため、筋力トレーニングや有酸素運動をプログラムに入れていくことは大切です。

 一方で、運動器疾患の方に筋力トレーニングは必要なのでしょうか?この点を考えていく時に大切なのは、【あくまで筋トレは筋トレ】だということです。つまり、立ち上がりが出来ない人に立ち上がりに必要な筋力を向上するトレーニングを行えば、立ち上がりが出来るようになるわけではないということです。ここでいう立ち上がりが出来るようになるというのは、左右対称に荷重出来て安全に立ち上がることを指しています。

 これはどういうことなのでしょうか?
筋力自体が足りない人は実際たくさんいて、筋力トレーニングは必要です。
このことと同じくらい、動作の学習も大切だということです。

動作の獲得には、運動学習が必須です。立ち上がりを実際に行い、大切なところに注意を向け、知覚し次の動作にいかしていく。このサイクルを回していくことで動作は学習されていきます。
つまり、筋力トレーニングを目的としたトレーニングと運動学習を目的とした動作練習の2つがセットで行わなければ、全く意味がないということです。もっと言えば、筋力向上を目的として立ち上がり動作を繰り返すことは、正しい立ち上がりが繰り返されていれば問題ありませんが、代償が出現している状態で繰り返されれば代償が固定化し、立ち上がりの改善を難しくしていきます。

このように、筋トレはあくまで筋トレであり、目標としている動作を獲得するためには、動作学習のための介入が別途必要になってきます。

脳血管疾患では筋トレは有効?!

ここまでは運動器疾患のような、脳に損傷がなく動作を行えば学習が生じやすい疾患について書いてきました。では、脳を損傷した場合はどうなのでしょうか?
結論から言います。脳血管疾患は、動作獲得のために筋トレは有効ではありません。

あくまで<動作獲得のために>はですが、立ち上がりがふらつく、歩行が不安定な方に筋力トレーニングを行ってもそれらが解消することはありません。
ここで大切なのは、筋力向上を目的に行ったトレーニングが、筋力向上以外の効果をもたらすことで動作が改善することはあるという点です。例えば、立ち上がりの時の股関節と膝関節の伸展のタイミングが、キッキングによって知覚でき【自分で】立ち上がりに応用できた場合がそれにあたります。

そうなんです。筋力トレーニングの時の動きを自分で考えて立ち上がりにいかせる患者さんは本当に稀です。更に、高次脳機能障害があるとほぼ不可能になります。
脳血管疾患における運動障害の本質は、筋力低下ではなく身体の動かし方、動いたことの知覚など他にあります。これらに介入しながら、異常な筋緊張の亢進や運動単位の動員異常、反射の亢進など脳血管疾患に特有な現象がみられない状態で動作を遂行できるようになって初めて、筋力が向上してきます。

筋が収縮しなければ萎縮して行きます。なぜ動かないのか?の原因を明確にしていく手続きを踏まずにただ動かす、ただ動作を行うなどの介入では本質的な問題点の改善は難しいです。

介入に至るまでの手続きが、脳血管疾患ではとても大切なのが少しでもおわかりいただけたでしょうか?参考になれば幸いです。

1周年記念セミナーやります!

プロリハ研究サロンは、2021.9.1で1周年を迎えました。
1周年記念として、<著書に書ききれなかった臨床について話す会(リハビリテーション)>を開催します。

本には書くことが出来なかった内容を、話していく予定ですので読んでいただいた方も、もちろん読んでいない方も、私の臨床思考を是非1度お聞きください。

お申込み・詳細はこちら↓
著書に書けなかった臨床について話す会(リハビリテーション)

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おすすめの勉強方法-リハビリテーション-

おススメの勉強方法

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皆さんはどうやって勉強していますか?本を読むのが苦手、休日に勉強会に行くのはちょっと…、論文ってなんか敬遠しちゃう…などなど人それぞれ得意不得意があると思います。
でも、実は何で勉強するかによっていろいろな違いがあるんです!
そこで今回は、いろいろな勉強方法があるリハビリテーションにおいてどうやって勉強するのが良いのかをそれぞれメリット・デメリットから紹介します。

こちらも是非ご覧下さい!

勉強方法の一覧

まずはこちらの図をご覧ください。
たくさんある勉強方法のメリット・デメリットをまとめてみました。(表1)
私の主観ですので参考程度でお願いいたします。

勉強方法一覧

表1 リハビリテーションの勉強方法一覧

ご覧の通り全てメリットとデメリットが存在することが分かります。
情報があふれているからこそ、その情報の特徴を一人一人が理解して取り扱っていくことが大切です。何より、正しい情報でもその活用方法を間違えると、最も影響を受けてしまうのは患者さんであることを忘れてはいけません。

おすすめの勉強方法

ここからはおすすめの勉強方法をご紹介していきます。
ここでは、私と同じ臨床現場で働いている、理学療法士・作業療法・言語聴覚士の方向けの勉強方法になりますのでご了承ください。

はじめに、臨床に必要なことは3つあります。

  • 知識:ヒトを理解する、病態を理解する、臨床を安全に構築するための知識
  • 技術:触れ方、動かし方、コミュニケーションなど
  • 思考力:プログラムの組み立て方、統合と解釈など

これら1つでも欠けてしまうと、患者さんの可能性を最大限に引き出すことが出来ません。その為、勉強していく時もこれら3つを常に勉強していく必要があります。
この事を前提に勉強方法を考えて行くと2つの流れが考えられます。

  1. 知識探求心タイプ
    • 今興味のある分野の本・文献を読む
    • その分野がテーマのセミナーや本の著者、文献の著者のセミナーに参加する
    • これら知識を臨床にいかすためのセミナーに参加、先輩に聞く
    • 臨床に活かす
    • ア~エを繰り返す
  2. 臨床追及タイプ
    • 臨床の中で疑問を持つ
    • 書籍や文献で調べる
    • これら知識を臨床にいかすためのセミナーに参加、先輩に聞く
    • 臨床に活かす
    • ア~エを繰り返す
  3. 臨床で悩んでしまうタイプ
    • 臨床で介入や病態解釈で悩む
    • 先輩に聞く→解決出来れば臨床に戻る
    • 解決できなければ、書籍・文献で調べるorセミナーに参加する
    • これら知識を臨床にいかすためのセミナーに参加、先輩に聞く
    • ア~エを繰り返す

勉強するきっかけや動機は人それぞれです。
加えて、得意不得意から自分にあった勉強方法もそれぞれなんですね。
このようにいくつかのタイプに分けて自分がどのタイプに近いのかを考えてみると、楽しく勉強できると思います!

是非ご参考ください!!

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そのリハビリ、脳はどう働いてますか?

そのリハビリ、脳はどう働いてますか?

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

私は、自己紹介にも書いてあります通り、脳血管疾患の後遺症や慢性的な痛みに悩まれている方のリハビリを中心に行っています。
脳血管疾患も慢性痛も脳が関与している疾患のため、今自分が行っているリハビリは<患者さんが脳のどこを働かせているのか?>をとても重要視しています。
そのことを理解していく手掛かりは患者さんの話されることや振る舞いの中にあります。(こちらもご参考ください⇒患者さんの1人称

そこで今回は、脳の基本的な構造と役割について簡単に整理し、それを臨床に活かしていくポイントを書いていきたいと思います。

脳の歴史とリハビリテーション

脳に関しては学生の頃、解剖学や生理学などの授業で習うと思います。その時に習う脳は「機能局在論」と呼ばれる理論が多いのではないでしょうか?
前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉それぞれに機能があり、ホムンクルスはこの代表例です。この機能局在論の起源は、18世紀まで遡ります。
その頃ヨーロッパを中心に、フランツ・ヨーゼフ・ガル(Franz Joseph Galll, 1758-1828)の「骨相学(phrenology)」と呼ばれる理論が流行していました。
18世紀から19世紀にかけて西洋で流行したこの学問は、専門家たちからは「脳の生理学」と呼ばれていたほどでした。
骨相学については、多くの書物がありますので詳細はそちらをご参考いただければと思いますが、この骨相学が脳の機能局在論の走りと言われています。

脳損傷の新しい視点

その後、ペンフィールドやブローカ、ブレインなど多くの研究者の功績によって様々なことが分かってきた脳ですが、わかってくることが多くなればなるほど脳に関する情報はより細かくなっていきます。
脳に関する研究を行っている研究者は理解できるかもしれませんが、臨床現場で働いている理学療法士や作業療法士たちにとっては、到底理解出来ない困難な情報もどんどん増えてきています。
そうなると、視床はどんな役割があるか、下頭頂小葉は何をしているかなど部分的な知識のみが独り歩きしてしまい、局在的な機能のみの知識が増えて行ってしまいます。。
この様な脳科学の知見は非常に素晴らしく、医学の領域に対する貢献も計り知れなと思います。
ですが、いざリハビリにこのような脳科学の知見を取り入れるのは容易ではありません。
これらの知識は、脳画像との親和性の高さは言うまでもなく、予後予測や症状の予測に役立てるなど全てがリハビリに持ち込むことが難しいわけではありません。(こちらもご参考ください⇒高次脳機能障害と行為の関連

では、脳画像にいかす他にリハビリに取り入れられる場面はあるのでしょうか?
そこで1つ、視点を変えて考えてみます。
脳出血や脳梗塞の様に、脳を直接損傷した場合や、慢性痛などの様に器質的に脳が変化していく場合では、「どこを損傷したのか」「どこが機能不全を起こしてるのか」に着目します。
ですが、脳を損傷したり機能不全を起こしたりしている患者さんは、損傷や機能不全を免れた部位で生きています
つまり、患者さんの振る舞いや一人称(言葉)は、

  • 損傷している脳部位が悪さをしている視点
  • 生き残っている部位が何とか頑張っている視点

の2つの考え方があるのです。

例えば、側頭葉を損傷すると言語による「意味」に関する認知に問題が生じることがあります。(コップを見れば「これはコップだ」と言わなくて頭では理解しています。このように自分の感覚を知覚し、それを認知することを意味付けと言います)
そうなると、「意味付け」をしないように脳は活動していくという考え方です。(コップを見てもコップだという意味付けではなく、水を飲む道具のような具合。もちろん反対も考えられる)
この考え方に基づくと、患者さんの話す言葉や振舞いは、今生き残っている脳でどうにかして意図通りに行為を遂行しようと動いた結果と考えられます。
つまり、患者さんの振る舞いや話す言葉を紐解いていけば、患者さんの生き残っている脳の状態を理解できて、どういうリハビリをすれば患者さんが理解でき改善に向かっていけるのかを考えられるようになります。
反対に、正常の行為や振舞いと患者さんの行為や振舞いを比較することで、実際の患者さんの問題点(ネガティブ面)と得意な点(ポジティブ面)を抽出することが出来るのです。

このことを応用すると、リハビリの介入場面で患者さんの脳のどこが働いているのかを推測できるようになります。

患者さんの思考を思考する

介入中に患者さんが何を考えているのか?想像したことはありますか?
触れている感じが分からない…動いている感じがわからない…動かし方がわからない…患者さんはリハビリをしながらいろいろなことを考えています。
私たちセラピストは、患者さんの感覚-知覚を通して接しています。今患者さんが何をどう知覚しているのか?を考えることは、患者さんの脳を想像することと非常に近しいプロセスになっていきます。

例えば、麻痺側の肘関節をセラピストが他動的に屈曲伸展しながら「動いているのはわかりますか?」と聞いたとします。この時セラピストは、患者さんの前頭葉と頭頂葉を中心に働かせていることになります。
患者さんは動いている【だろう】肘関節に注意を向け、感覚を処理する頭頂葉からくる情報を前頭葉で待つことになります。
この時、患者さんには、

  • 肘に注意を向けるべきなのか
  • 肘が動くことで生じる感覚に注意を向けるべきなのか
  • 肘を動かすことで移動する手に注意を向けるべきなのか

の選択肢が生じることがわかります。このどれに注意を向けたのかを患者さんに聞くことで患者さんの注意の癖を掴むことが出来ます。

このように、自分が今脳のどこに働きかけているのかを念頭に置いて、患者さんに質問をしながら、また振舞いを良く観察していくことが脳血管疾患の患者さんや慢性疼痛の患者さんとのリハビリでは特に大切です。

科学が発展する中、リハビリテーションには今以上に情報があふれかえっていきます。
それらの情報をいかに自分の臨床にいかしていけるのかが、今後のセラピスト人生を大きく変えるかもしれません。
自分の臨床にどういう情報がいかされているのかが、自分だけの臨床の基盤になっていきます。
あなたに合った情報はなんですか?

感覚障害に関するセミナー行います!!

8/31の20:00~、感覚障害」をテーマにセミナーを開催します!

主に脳卒中後の感覚障害についての内容になります。

興味がある方はぜひこちらご覧ください!
第2回オンラインセミナー「感覚障害の評価と介入」

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運動と感覚を分けるのはもうおしまい

運動と感覚を分けて考えるのはもうおしまい

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

 リハビリでは一般的に、運動と感覚をそれぞれ分けて評価をして介入していきます。
ですが、人が行為を行う上で運動と感覚はそれぞれ密接な関係にあり、お互いに影響を及ぼし合っています。
その証拠に、運動器官である筋は同時に非常に重要な感覚器官であり、その感覚器官である筋紡錘は正確に感覚を受容するために運動を用いています。(α-γ連環)

 そこで今回は、感覚のおさらいと感覚障害について書いていきたいと思います!

感覚が脱失していたらスムーズに動けますか?

私が学生の頃に行わせていもらった臨床実習で、視床出血の患者さんのリハビリを見学していた時の話です。
その患者さんは、非常にぎこちなく動いていて、歩行においては平行棒を両手でしっかりとつかんで目で足元を確認しながら行っていました。

 その時の私は、「何の疾患なんだろう…?」と疑問に思っていましたが、担当の理学療法士の方が、

「感覚だけに障害があると運動に問題はでないと思う?」

と質問してきました。

つまり、運動麻痺がなく感覚麻痺だけがある場合、その人の行為はどうなるのか?という質問だったのですが、私は普通には動けないだろうなと思う程度でした。
実際見学していた患者さんは、脳画像からも評価からも運動障害はなかったのですが、感覚障害によって行為を思い通りに行うことは出来ていませんでした。
このことがきっかけで、私は運動と感覚の深い関係性について考えるようになりました。

人は動物である以上動きますし、環境に適応する必要がある以上知覚します。
この2つは必然なので、人の身体を対象としているリハビリでは外すことが出来ません。
またそれ以上に、人は知覚するために動き、動くために知覚しています。
つまり、運動するためには知覚できなければならず、行為において知覚は非常に重要な役割を持っています。

評価をしていく時に、要素ごとに評価してその結果を統合し問題点を抽出していく作業は非常に一般的ですが、私はこの方法をとっていません。
この方法をとってしまうと運動と感覚の関係性が見えにくく、実際の患者さんの像と少しずつずれて行ってしまうからです。

 ではどうすれば良いのか?
それは、運動と感覚を同じカテゴリーに入れられるような分析の方法を行えばよいのです。

行為をベースに考えて行く

私は、臨床の目的は運動を改善することでも、感覚を改善することでもないと思っています。
関節が曲がるようになっても、その関節の角度を行為で発揮できなければ意味がないように、動くようになってもまた感じるようになってもその人の生活が良い方向に変化しなければ意味がないからです。
つまり、リハビリの臨床においてよく見て、よく考えなければいけないのはあくまで行為であり動作でなければなりません。

 更に、臨床における介入では、患者さんの得意な部分を使えるような方法で展開されていくことが大切です。
例えば、歩行の時に立脚期が安定していない時、筋力トレーニングをするだけではなく、立脚時の足底の圧感覚を使用した介入も引き出しとして持っておく必要があるということです。

 なぜか?
1つは、運動と感覚が関係しあっていて、立脚期の問題が運動だけではない可能性があるからです。
もう1つは、行為の特性を考えていくと、歩行における立脚期では身体を支えている側の足底に荷重され、体幹の立ち直り反応が出現するなどの特異的な関連がみられます。
この時に、股関節周囲には確かに筋収縮がみられるのですが、これは立脚期の時だけに見られる収縮で、他の姿勢や運動ではこの収縮を再現することは出来ません。

 つまり、歩行という行為において、様々な知覚、反応が生じた中で筋が収縮しているのです。

 この事を考えると、運動という側面のみから介入していくのでは不十分で、感覚/知覚を交え姿勢や反応を考慮した介入が必要になってくることが分かります。
そのために、行為をベースに考えいかにその行為の特性を介入に持ち込めるのか?が勝負になってきます。
このことを前提に、観察から評価、分析までを行っていくためには、運動、感覚というコンポーネントではなく、歩行の時の立脚期に必要な能力と、能力同士の関連性を考える必要が出てきます。
 もうすぐリハビリが日本に入ってきて100年…そろそろ運動と感覚を分けて考えるのをおしまいにしませんか?

感覚障害のセミナー行います!!

まだ先ですが、8/31に、

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