筋力トレだけでは動作改善しない?

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

リハビリテーション(以下、リハビリ)の臨床の中で組まれるプログラムには、筋力トレーニング(以下、筋トレ)がほぼ入っています。実際、私が学生の頃の実習から新人まで筋力トレは積極的に行っていました。
リハビリでの筋トレは、単関節運動やキッキング(臥位や座位で蹴るような運動)、ブリッジ、腹筋などいわゆる運動トレーニングを指すことが多いです。その他にも、動作練習=筋トレのようなプログラムもあります。
つまり、たくさん立ち上がりを繰り返して、立ち上がりに必要な筋力を向上していくイメージです。

このように、リハビリと筋トレは切っても切り離せない関係ですが、ここに運動学習を絡めて考えて行くといろいろなことが見えてきます。
今回はこの点に関して考えて行きたいと思います。

筋トレは筋トレ

長期間寝ていたことによる廃用性症候群のような、筋が細くなって筋力が低下してしまい動作を安全に行うことが難しくなっている人や、運動耐容能(持久力のようなもの)が低下している人は、筋力や基礎体力の向上が必要です。そのため、筋トレや有酸素運動をプログラムに入れていくことは大切です。

筋力を向上するためには、十分な栄養とトレーニングが必要です。その人に合った負荷でトレーニングをすることで、筋出力を調整する3つの要素のうちリクルートメント(運動単位の動員数)の効率化が生じ、見かけ上の筋力の向上がみられます。
つまり、1つの運動神経で多くの筋を動かすことが出来るようになってきます。

一方で、筋力さえつけば動作はできるようになるのでしょうか?
この点を考えていく時に大切なのは、【あくまで筋トレは筋トレ】だということです。

つまり立ち上がりが出来ない人が、いくら下肢の筋トレを行っても立ち上がりが出来るようになるわけではないということです。特に脳の病気である脳卒中では顕著です。
ここでいう立ち上がりが出来るは、左右下肢へ同じ量を荷重出来て安全に立ち上がることを指しています。

これはどういうことなのでしょうか?
筋力自体が足りない人は実際たくさんいて、筋トレは必要です。
このことと同じくらい、動作の学習も大切だということです。

動作の獲得には、運動学習が必須です。
立ち上がりを実際に行い、大切なところに注意を向け、修正点を自覚して次の動作にいかしていく。このサイクルを回していくことで動作は学習されていきます。
つまり、筋トレと運動学習を目的とした動作練習の2つがセットで行わなければ、動作獲得には繋がりません。さらに、筋力向上を目的として代償がある状態で立ち上がり動作を繰り返すことは、学習によって代償が固定化してしまい、楽な立ち上がりの獲得を難しくしていきます。

このように、筋トレはあくまで筋トレであり、目標としている動作を獲得するためには、動作学習のための介入が別途必要になってきます。

脳血管疾患では筋トレは有効?!

では、脳卒中のような脳を損傷した病気ではどうなのでしょうか?
結論から言います。脳血管疾患は、動作獲得のために筋トレは有効ではありません。

あくまで<動作獲得のために>限定ですが、立ち上がりがふらつく、歩行が不安定な方に筋トレを行ってもそれらが解消することはほとんどありません。
ここで大切なのは、筋力向上を目的に行ったトレーニングが、筋力向上以外の効果をもたらすことで動作が改善することはあるという点です。
例えば、立ち上がりの時の股関節と膝関節の伸展のタイミングが、キッキングによって学習できて【自分で】立ち上がりに応用できた場合がそれにあたります。

そうなんです。
筋力トレーニングの時の動きを自分で考えて立ち上がりにいかせる患者さんは本当に稀です。更に、高次脳機能障害があるとほぼ不可能になります。
脳血管疾患における運動障害の本質は、筋力低下ではなく身体の動かし方、動いたときの知覚など他にあります。これらに介入しながら、異常な筋緊張の亢進や運動単位の動員異常、反射の亢進など脳血管疾患に特有な現象がみられない状態で動作を遂行できるようになって初めて、筋出力が向上していきます。

筋は収縮しなければ萎縮して行きます。なぜ動かないのか?の原因を明確にしていく手続きを踏まずにただ動かす、ただ動作を行うなどの介入では本質的な問題点の改善は難しいです。

介入に至るまでの手続きが、脳血管疾患ではとても大切です。

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