長期間寝ていたことによる廃用性症候群のような、筋が細くなって筋力が低下してしまい動作を安全に行うことが難しくなっている人や、運動耐容能(持久力のようなもの)が低下している人は、筋力や基礎体力の向上が必要です。そのため、筋トレや有酸素運動をプログラムに入れていくことは大切です。
筋力を向上するためには、十分な栄養とトレーニングが必要です。その人に合った負荷でトレーニングをすることで、筋出力を調整する3つの要素のうちリクルートメント(運動単位の動員数)の効率化が生じ、見かけ上の筋力の向上がみられます。
つまり、1つの運動神経で多くの筋を動かすことが出来るようになってきます。
一方で、筋力さえつけば動作はできるようになるのでしょうか?
この点を考えていく時に大切なのは、【あくまで筋トレは筋トレ】だということです。
つまり立ち上がりが出来ない人が、いくら下肢の筋トレを行っても立ち上がりが出来るようになるわけではないということです。特に脳の病気である脳卒中では顕著です。
ここでいう立ち上がりが出来るは、左右下肢へ同じ量を荷重出来て安全に立ち上がることを指しています。
これはどういうことなのでしょうか?
筋力自体が足りない人は実際たくさんいて、筋トレは必要です。
このことと同じくらい、動作の学習も大切だということです。
動作の獲得には、運動学習が必須です。
立ち上がりを実際に行い、大切なところに注意を向け、修正点を自覚して次の動作にいかしていく。このサイクルを回していくことで動作は学習されていきます。
つまり、筋トレと運動学習を目的とした動作練習の2つがセットで行わなければ、動作獲得には繋がりません。さらに、筋力向上を目的として代償がある状態で立ち上がり動作を繰り返すことは、学習によって代償が固定化してしまい、楽な立ち上がりの獲得を難しくしていきます。
このように、筋トレはあくまで筋トレであり、目標としている動作を獲得するためには、動作学習のための介入が別途必要になってきます。