スムーズに行為をおこなうために-運動と行為の違いから-

スムーズに行為をおこなうために

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

スムーズに歩く
スムーズに文字を書く

人は、様々な行為をスムーズに行うことが出来ます。リハビリテーションの目的においてもぎこちない状態からスムーズにできるように介入することも少なくありません。そもそも人はどうしてスムーズに動くことが出来るのでしょうか?そこには人ならではの理由があります。

 そこで今回は、脳卒中の患者さんから行為をスムーズに行うことの難しさを考えて、運動と行為が全く異なる次元であることを書いていきたいと思います。

ぎこちなく歩く患者さんたち

 痛みがあったり動かない関節があると人の歩きはぎこちなくなります。痛みが出ないように動いたり、動きにくい関節を使わなくても良い動き方をしたりするためです。ですが、痛みもない、関節も動かせるにもかかわらずぎこちなく歩く患者さんをみたことがあるのではないでしょうか。

 1つの関節を動かす単関節運動は問題なくできるのに、歩くとぎこちない。膝関節の屈曲伸展は出来るのに歩くと膝関節の動きが見られなくなってしまう…手の指を1本ずつ動かせるのにボタンをしめようとすると指の動きがぎこちなくなってしまう…これらの現象は優位半球である左半球を損傷すると実は高い頻度で見られます。ですが、運動麻痺など【そもそも動かせない】ことがマスキングしてしまい、注意深く観察し加えて検査をしなければ見つけることが出来ません。

 ここで言う検査は模倣検査やパントマイムの検査などを指しています。そうなんです、ぎこちない行為を現象とするのは【失行症】です。運動や感覚に問題がないにもかかわらず、合目的的に動くことが出来ない。つまり、自分の意図によって目的を持った行為が出来ないということです。失行症は【行為を失う】と書くことからも、運動の障害ではなく行為の障害だと捉える必要があります。

 では運動と行為はどう違うのか?について書いていきたいと思います。

運動と行為は全く違う

運動・動作・行為は非常に似ていてごちゃまぜに考えてしまっている人も少なくないと思いますが実は全く違います。これら3つの違いについてはこちらの記事をご参考ください!
→運動・動作・行為を使い分ける!
 少し触れると、太ももに手を置いた状態から前に伸ばすリーチングは

  • 肩関節の屈曲
  • 肘関節の伸展
  • 前腕の回外(中間位へ)
  • 手関節の背屈

 が時間的に連動し行われています。このように、一見運動の足し算で行われているように見えますが実は行為には運動にはない要素が含まれています。
 それは…【目的】です。肘を伸ばす運動の目的は肘を伸ばすことが目的ですが、リーチングは手を前に伸ばす(もっと言うと手を物体へ近付けていく)ことが目的です。そうなんです、関節を動かすことが目的ではないんです。
 そうなると少なくても運動と行為では次のようなことが異なっていることがわかります。

  • 運動は身体に、行為は外部環境に注意を向ける
  • 運動は関節が動いたのかが結果であり、行為は目的が達成できたのかが結果になる

 肘を曲げる時に大切なのは肘が「曲がったのか?」であり肘の感覚に集中し結果を確認します。一方リーチングなどの行為で大切なのは、「手が前に移動したのか」「物体に手が向かっているか」であり、環境と自分の身体の位置関係や動いた関節の知覚など多くの感覚を統合して結果を確認します。つまり、行為は運動と比べても圧倒的に高次であり必要な能力も非常に多くなっています。
 失行症と言われる現象は、この行為をするために必要な能力に問題が生じている状態です。予測が出来ない、結果を確認できない、感覚を統合できないなど原因は様々ですが運動では使われない能力が障害されている可能性が非常に高いです。

 行為を対象に介入することが大切なリハビリにおいて、運動と高次脳機能障害をわけずに行為そのものを観察し分析し介入していく必要があります。
 お読みいただきありがとうございます。

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手と目の協調とは?

手と目の協調とは

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視覚と手の行為は強いつながりを持っています。針の穴に糸を通す、文字を書く、洗い物をする…目でしっかり見ながら行うことで高い精度を実現しているのは言うまでもありません。手に限らず足でも目との協調は重要で、ボールを蹴るなど限定された行為では視覚は必須です。ですが階段を上る、歩くなどリアルタイムで足をみながら行わない行為の方が足では圧倒的に多く、手とは明らかに視覚の使われ方が異なっています。

 そこで今回は、この目と手の協調について患者さんの経験談を踏まえて書いていきたいと思います!!

手と足の視覚の役割の違い

さて冒頭でも書いた通り、手の行為には視覚が大きく貢献しています。見ながら書いた文字と目を閉じて書いた文字のきれいさを考えれば一目瞭然です。一方で足では必ずしも視覚が重要な役割をしているかというとそうでもありません。これはどういうことなのでしょうか?
 そもそも行為において視覚がもつ役割は、物体の位置と意味を知ることです。もう少し分かりやすく言うと、物がどこにあるのか?その物が何なのか?です。
例えば食事中にのどが乾いたら<コップがどこにあるか>が分からなければなりません。これを知るためには視覚がもっとも適切です。またサッカーをしている時ではボールがどこにあるのかを視覚で捉えて足を振りぬきます。

このように、物体に対して手や足を向かわせていく時に視覚は大きく貢献します。ここまで手と足で大きな差はありません。ですが、【物を扱う】つまり【道具を使用する】点で手と足で大きく異なってきます。<ペンで名前を書く>、<箸でご飯を食べる>、<スマホでスワイプ>するなど手は道具を使用します。この時には道具を動かしたことによる様々な【変化】を視覚で捉える必要があります。加えて、道具と環境との作用の状態も視覚で認識する必要があります。
例えば<ペンで名前を書く>では、道具であるペンを動かしペン先が正しく動いているのか、またペン先が動いたことで紙に正しく文字が書かれているかの2つを視覚で確認していることになります。よって手の行為は目と協調することによって精度が上げられのです。

では足ではどうなのでしょうか?ボールを蹴るなどの行為以外において、視覚はどの様な役割を持っているのでしょうか?それは<予測>です。歩行、階段昇降において視覚は「これから歩くところの環境を把握しどう歩くのかを予測する」役割を持っています。これは、歩いている時は数メートル先を見ていることや階段を下るときは数段先を見ていることからも容易に想像できます。

このように手と足では視覚の役割が異なっています。特に手では視覚が行為の質そのものを左右してしまうほど重要になっています。この目と手の協調を実感した患者さんについて書いていきます。

視覚性探索の持つ不思議

補足運動野を損傷すると【病的把握反応】がみられることがあります。握ったら離せない現象が主症状ですが、実は視覚が誘因になる現象が報告されています。目で見た物に無意識でリーチングしてしまう現象です。
 私が経験した症例もこの現象がみられていました。この方は把握反応と視覚性探索反応がみられていました。つまり手の触覚が加われば握ってしまい、目で見たものへリーチングしてしまっていました。この経験は視覚と手の関係性について考えていくには十分なきっかけでした。

 大切なのは介入において、視覚をどう使っていけば良いのか?です。脳卒中においては自分の手をみながら注意深く動かしてしまう、運動器疾患においては痛みに注意をしながら視覚性注意が十分に働いていません。このようにどの疾患においても【視覚をどう活用するか】は非常に重要です。そのことを私はこの患者さんに教えてもらいました。

 皆さんも介入における視覚について考える機会になれば幸いです。

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私が勉強する<理由>

私が勉強する<理由>

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 <生涯学習>

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の世界では呪文の様に唱えられている言葉であり、

勉強することが普通

と思わせるような魔法の言葉です。
 ですが周りを見渡せば毎日勉強している人は稀であり、国家資格を有していることを除けば普通の人と同じ生活を過ごしていると思います。そんな中、なぜ私は毎日論文を読み、講演し本を出しオンラインサロンを運営しているのか…今回はそんな他愛もない話をしていきます。

上には上がいる

 勉強のきっかけは好奇心でした。知識が増えていくことの楽しさ、周囲の人が知らないことを知っている楽しさから勉強を始めていきました。
 ですが日々勉強していくにはモチベーションが必要です。プライベートでは代わる代わる楽しいことがありますし、年齢によってステージは変化していきます。その中で学び続けていくためには何か【理由】がなければ続けることは難しくなっていきます。
 そのことを実感したのは理学療法士になって3年が経過した頃です。勉強してもしても知らないことが数えきれないほどあり、改善出来ない患者さんはたくさんいました。そうなってくると勉強をいくらしても足りない状態に陥ります。そんな中でも私が勉強を続けられたのは、職場外の仲間の存在です。上には上がいます。自分よりもっと勉強している人、知識の多い人との出会いは私の勉強の意欲を駆り立ててくれました。

 また職場を変えたことも自分にとっては非常に良い刺激になりました。人は慣れには勝てません。「こんなもんで良いか」を1度でも許してしまうとずっと続いてしまいます。その状況を打破するためにも環境を変えることは時には必要なのかもしれません。

臨床の変化

情報が変われば行為が変わる

認知神経リハビリテーションで言われている言葉ですが、私にも当てはまりました。知識が増えてくれば、臨床はどんどん変化していきます。時には悪い方向にいく事もありました。ですがそれも今では良い経験です。
 知識とは別に経験も自分の臨床を変化させます。急性期、回復期、生活期で臨床が変わるように、回復期から保険外という変化をした私の臨床は、患者さんが納得できる説明や目標に特化した介入など臨床を大きく変化させました。もちろんセラピストとしての経験年数も影響していたのだと思います。
 勉強していないと不安…そう感じる人もいると思います。患者さんの人生を大きく左右する数か月間を担当するのですから当然です。ですが、不安は患者さんに伝わり介入の効果を下げてしまう事もあるでしょう。
 今持っている技術知識以上のことは患者さんに提供できません。この技術知識は1日でみに付くようなものでもありません。日々の積み重ねです。
 今自分が持っている物は何なのか、何が強みで何が弱みなのか。これを常にメタ認知して臨床に臨むことが大切です。その中で最良の臨床を展開していく思考こそが私の強みです。

 勉強を続けていくことは容易ではありません。時には休むことも必要だと思います。また勉強したいと思って時にこのプロリハ研究サロンが少しでも良い環境になるのなら私はそれ以上の嬉しいことはありません。

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臨床を言語で表現するためには? -ロジカルリハビリテーション-

臨床を言語で表現するためには? -ロジカルリハビリテーション-

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 リハビリの臨床は、理学療法士・作業療法士の体性感覚から得られる情報を重要視する傾向が非常に強いです。抵抗感、硬さなど実際に患者さんに触れなければ分からないことが多いのは確かにあります。ですがそれらを言語化せず「昨日よりやわらかいですね」「動きがスムーズになりましたね」などセラピストの中で完結してしまうと、それは根拠がない事柄になってしまいます。

 そこで今回は臨床を言語化することの大切さとその方法「ロジカルリハビリテーション」について書いていきたいと思います。

なぜ言語化が大切なのか

 エビデンスが重要視されている昨今、セラピストは論文を読まなければ臨床をするのが難しくなってきています。論文は、当然全て言語で表現されていてその中に書かれている文章を臨床に持ち込むことで根拠を作っていくことが出来ます。この言語には専門用語はもちろん数字で構成されていて、根拠を示していくためには言語が必須であることが分かります。

 導入部分で書いた通り、セラピストの体性感覚で感じられた変化は一見言語で表現されているように見えますが、ここで大切なのは数字を用いることです。硬さは硬度計で計測できますし、スムーズさは時間や速度で測ることが出来ます。一方で、数字で表現できない質の部分があることも事実です。この場合は、出来るだけ細かくその時の状況を描写し数字化出来る評価や検査結果と合わせておくことが重要です。

 この時重要なのは、理由を明確に言語化することです。やわらかくなった、スムーズになったのは数字で表現できますが、どうしてやわらかくなったのか・スムーズになったのかは数字では表現できません。言葉で書き記すしかないんです。ですが、この理由だけ言語化しようとしてもなかなか難しいのが実際で臨床すべてを言語化しておかなければなりません。

 例えば患者さんの目標をはじめ、観察結果、評価・検査結果、分析結果、問題点、プログラム全てにおいて言語化していく形です。この方法は意外とやっておらず、一軒難しく感じますが、やり方さえ覚えれば誰でもできます。

ロジカルリハビリテーション

 コミュニケーションの分野で、相手に伝えるためにロジカルシンキングを用いる方法が脚光を浴びています。論理的に順を追って説明していけば、無駄なく絶対に伝わるからです。

 このロジカルシンキングをリハビリテーションに用いたのがロジカルリハビリテーションです。この方法には3つのメリットがあります。

  1. 臨床思考を整理する
  2. 患者さん・ご家族・他のセラピストに伝わりやすい
  3. 根拠を持って臨床を説明できる

 論理的に説明するためには、材料となる情報収集をしっかり行わなければなりません。結果根拠が生まれます。また、1つ1つを言語化していくことで自分の頭の中が整理されて臨床で悩むことが無くなり常に考えて答えが出せるようになります。その結果、説明していく時に順を追って説明できるようになります。

 このように、臨床を言語化して行っていくことは非常にメリットが大きく、自分の成長も目に見えて実感できます。一方で、やり方を知らなければなかなか身につかずいつまでも「なんとなく…」がなくならないリハビリになってしまいます。

 プロリハ研究サロンでは、このロジカルリハビリテーションを軸に筋や関節、脳から高次脳機能までの知識を知ることが出来ます。

 ぜひ1度参加してみてください。

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ついに動画投稿を始めます!その兼ね合いでブログが更新できませんが温かい目で見守っていてください…動画お楽しみに!!

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見えていないけど…視覚と盲視の不思議

見えてないのに… 視覚と盲視の不思議

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脳血管疾患の中で、脳梗塞や脳出血においては半側空間無視や半盲など視覚障害が生じます。運動障害や感覚障害の改善にフォーカスすることが多いため、あまり注目されませんが実は視覚の問題は思っているより多いんです。その中でも盲視と呼ばれる現象は非常に難解で見逃されやすい上に、ADLを大きく障害します。

そこで今回はこの盲視に関する内容とリハビリテーションについて書いていきたいと思います!

視覚の基礎

網膜に写った【光刺激】は電気信号に変換されて視神経を伝達していきます。その過程で、いくつかの経路を通り脳へと到達していきます。その過程を図式化したものが図1になります。この図を見ると、上丘と外側膝状体でまずわかれていて、いわゆる視覚情報は外側膝状体の経路のことを言い、上丘の経路はサッケードと呼ばれる無意識の眼球運動に関与していると言われています。この経路が今回の盲視と関与しているという報告があり、口述します。

また外側膝状体の経路は1次視覚野で更に分かれているのが分かります。図1では1次視覚野から2つに分かれていますが、図2では3つに分かれています。これらは【what】と【How】の経路とも呼ばれていて、側頭葉にいく経路は物の名前や知識に関与していて、上頭頂小葉にいく経路は物の位置など空間の処理や道具の使い方に関与していると言われています。つまり、「これはハサミだな」と「ハサミの使い方はこうだな」は経路が異なるということです。また図2にある真ん中の下頭頂葉に行く経路は背側と腹側の経路それぞれから情報を受け取るハブの役割と手の行為とのつながりが強いと報告されています。

このように視覚と上肢の行為は深いつながりがあり、視覚障害は行為障害の原因となりうることが分かります。

図1 眼球から脳への伝達経路(A Goodale,et al,2004改変引用)

図2 視覚の3つの経路(G Rizzolatti,et al2006より改変引用)

盲視の不思議

盲視とは、視覚の自覚がないにも関わらず物体へ正確にリーチングできる現象のことです。例えば視野検査を行った時、左下の視野にある検者の指が【見えない】と回答したとします。そして、その【見えていないはずの】指を掴むように指示すると正確につかむことができるんです。

 これは、患者さんは【見えない】と自覚している場合においては、階層性が存在する可能性があります。つまり、本当に見えていない場合と見えているけど見ている自覚がない場合があるということです。この現象は非常に難解で、何より見えていない視野の物体に正確にリーチできても、患者さんは一切驚かない点が最もやっかいです。

 盲視に対するリハビリテーションは全く確立されていませんが、見えていない視野を運動覚や触覚からイメージしていく課題で改善した例を数例経験しています。具体的には、左の視野が見えない場合において、閉眼した状態で見えていない視野で図形を指でなぞる課題です。この課題中患者さんは、体性感覚によって図形を無意識でイメージします。いつもは見えない視野と空間的に一致した場所でイメージをするため、視覚情報が構築しやすくなります。

 この様に、視覚障害においても体性感覚を入り口に視覚イメージを有効に活用していくことが有効なケースが存在しています。もし興味がある方は問い合わせやSNSのDMからご連絡ください!!

 

 

引用文献

1.Melvyn A Goodale,David A Westwood.An evolving view of duplex vision: separate but interacting cortical pathways for perception and action.Current Opinion in Neurobiology 203-211,2004

2.G Rizzolatti, V Gallese.Do perception and action result from different brain circuits? The three visual systems.hypothesis – 23 problems in systems neuroscience, 2006

 

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無意識で行っていた行為を再獲得するためのポイント

無意識で行っていた行為を再獲得するためのポイント

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リハビリテーションは、全人間的復権を目指し病前行っていた行為を再獲得することが目的の根幹にあります。基本動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり)、歩行、階段昇降、上肢行為など様々な行為が対象となり患者さんのニーズや文脈によって決定されます。
 そのような臨床の中で大切なのは、セラピストが「もともと無意識で行っていた行為を再獲得するためにはどうすれ良いのか?」を知っていることです。皆さん今日の朝どうやって起き上がったのか覚えていますか?もし脳卒中になったらその起き上がり方思い出せますか?今回はこの点について書いていきます。

意識していた行為が自動化していく

 無意識に行える行為で最も有名なのは歩行です。歩いている時にはCPG(central pattern generator)と呼ばれるリズム生成器のシステムが働き無意識で下肢が交互に振り出されます。ですが、脳卒中や下肢骨折などにより歩行が思うように行えなくなると、前頭葉が本来よりも大きく活動することが分かっています。つまり足をどう出そうか、どう支えようか、どうバランスを取ろうかと考えるためです。
 ここで1つ大切なのは、この前頭葉が過活動している歩行を繰り返していれば自動化するのか?ということです。学習によって本来の歩行のときと同じ脳活動に戻るのか?ですね。答えは戻る人と戻らない人がいるです(ちょっとずるい答えですが…)。ここの違いには高次脳機能障害と歩行能力が大きく関わっています。転倒リスクが高い人や失行症などは歩行の自動化を阻害します。その場合ただ歩く練習を繰り返すだけではいつまでたっても歩行中に前頭葉が過活動し、実用的な歩行の獲得が難しいということになります。

 ではどうすれば良いのか?通常行為は無意識で行われますが、獲得していく時には身体や環境に注意を向け情報収集し学習していく必要があります。立ち上がる時の両下肢の位置、体幹の前傾など立ち上がりに必要なコンポーネントを文脈に沿って学習していくことで立ち上がりが獲得できるイメージです。ですが立ち上がりの最中に「両下肢の位置…」「体幹をこれくらい傾けて…」と考えてしまうと、自動化が遅くなってしまう可能性があります。もちろん動作練習は動作を習熟させていくためには必要です。ですが、繰り返す=改善ではないことは知っておく必要があります。

無意識の行為は意識出来ることが大切

 歩行中に皮質が全く働いていないかというとそうではなく、しっかりと前頭葉は働いています。前述したような「足をどう振り出そう…」という思考ではなく、いつでも歩行をコントロールできるようにモニタリングしていると考えられています。例えば横から突然人が出てきて止まる、方向を転換する、ちょっとした段差を越える、少しスピードを速くするなどリズムが変わる瞬間には前頭葉が重要です。
 よって無意識で行っている行為でも、人は必要に応じて意識することが出来ます。ここが大事なんです。自分が意識したい所に注意を向け適切な情報を得ることができる。だからこそ行為が自動化しているんです。

 本記事の冒頭で書いたように、今日の起き上がりの仕方は思い出せませんが明日起きたときに意識すればどう起き上がっているのか分かると思います。これは適切に注意を向けられ意識できて記憶できるからです。つまり起き上がりが学習されているからなんです。自動化された行為はいつでもマニュアルに切り替えられます。この両側性が行為には必要です。しかし道具を使用する行為は道具がなければマニュアルに切り替えられない行為も存在します。箸の持ち方などが典型例です。このような行為には接触情報がとても大切です。よって介入でも接触を取り入れた介入が大切になります。

 いかがでしたでしょうか?無意識で行っていた行為を再獲得し自動化するにはいろいろな工夫が必要です。反復に加えて注意を向けるところや意識することなどを考えて介入を組み立てていくと患者さんの学習を促していきやすいと思います。

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論文引用=根拠?

論文=根拠?

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先日理学療法ガイドラインが発行され話題になっていますが、そもそもリハビリテーションにおいてよく耳にする「根拠(エビデンス)」とは何なのでしょうか?人そのものを対象にしている医療に属するリハビリにおける根拠は、人体を対象としている医学の根拠とは分けて考えなければならないと思っています。

そこで今回は、リハビリにおける根拠について書いていきたいと思います。

論文は参考資料

最近の学会での症例発表では、たくさんの論文を引用して臨床を形作っているものを見かけます。私も学会で発表する時には、自分の臨床が客観的に見て効果があるのかどうかを証明するために論文を引用します。これには3つの意味があると思っています。

  1. 自分以外にも同じ意見の人がいる
  2. 自分以外にも同じ臨床をして患者さんが改善した経験の人がいる
  3. 研究などの知見が自分の臨床を後押ししている

自分が一人で言っているわけではない、知見を参考にしているという姿勢を見せるためには論文を引用するのが最も有効な手段になります。

 ですが、私は研究者ではありませんし研究には詳しくありません。さらに、ケーススタディのケースの患者さんには当然会ったこともありませんし見たこともありません。つまり論文の知見はあくまで参考程度に留めておかなければならないと思っています。

 例えば、「歩行の立脚期において中殿筋が活動している」は多くの人の歩行中の筋活動をみたり物理的な観点から説明されたりしています。また「話す時にはブローカ野が活動する」も多くの人で証明されています。このような、「人」である限り共通の【機能を有している】ことで臨床に参考資料として使用できます。ですが、これらの知見も「どう臨床でいかすのか?」については、患者さんの背景や文脈、目標などの個人因子や環境因子が大きく関わり論文の知見をそのまま引用するには限界があります。
 これらのことから、論文をたくさん引用する=根拠があるわけではなく引用しないよりは引用したほうがよく根拠があるかどうかを考えるためにはもっと大切なことがあると思っています。

言語化出来ないことは根拠を証明できない

 私は臨床を言語化する作業をとても重要視しています。なぜそう考えたのか?どうしてその介入をしようと思ったのか?患者さんに何が生じて変化したのか?これらを言語化できるかできないかは、根拠をもって臨床に臨めるかどうかを大きく左右すると思います。
 この言語化するということは、説明できることと言い換えられます。患者さんに説明する、セラピストとディスカッションするなど自分の臨床を説明する場面は多くあります。その中で明確に説明できるかどうかは、根拠を持って臨床出来るかと密接につながっていることになります。つまり、みんなが納得できるかどうか?が重要です。この言語化していく作業の中で、論文の知見を取り入れられることが出来れば、非常に効率的に臨床を組み立てることができます。

 このような私が大切にしている臨床思考を「ロジカルシンキング」を用いて行うことから「ロジカルアプローチ」と呼んでいます。根拠がある臨床を行っていきたい人は是非ご参考ください!!

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認知神経リハを学びたい人におススメの本

認知神経リハビリテーションを学びたい人へおススメの本

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
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(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

私が継続して勉強するきっかけを作ってくれた【認知神経リハビリテーション】ですが、書籍もここ10年でたくさん出版されています。
そこで今回は、認知神経リハビリテーションをこれから学んでいきたいと思われている方向けに、おすすめの本を紹介していきたいと思います!

認知神経リハビリテーションの専門書

1、脳の中の身体 認知運動療法の挑戦

宮本 省三(著)

脳の中の身体

私の認知神経リハビリテーションの入り口となった本。なぜ患者さんが良くならないのか、今のリハビリテーションの課題は何なのか。自分はどこに向かって勉強すれば良いのかを示してくれた本です。非常にわかりやすく私も1年目の時に読んだ本なので一気読み必須です。

2、リハビリテーション・ルネサンスーこころと脳と身体の回復、認知運動療法の挑戦

宮本 省三(著)

リハビリテーションルネサンス

イタリアのサントルソで行われていた、認知神経リハビリテーションを日本に持ち込んだ、現学会長の宮本先生と認知神経リハビリテーションとの出会いから書かれている貴重な本。イタリアで行われるマスターコースに参加したくなります。また、脳科学や神経学などの基礎知識も分かりやすく書かれており、認知神経リハビリテーションの入り口に非常に適した1冊。リハビリテーションの常識が覆されました。

3、認知運動療法ー運動機能再教育の新しいパラダイム 

Carlo Perfetti(著)、小池 美納(著)、宮本 省三(著)、沖田 一彦(著)

認知運動療法 パラダイムシフト

認知神経リハの先駆けとなる認知運動療法と言えばこの本です。通称パラダイム本。初学者には難解な部分も多いかもしれませんが、臨床で試したくなる内容が満載です。また、認知運動療法の基礎概念から人を見る基礎まで幅広く書かれており、いつまで経っても愛される1冊です。

4、脳のリハビリテーション:認知運動療法の提言<1>中枢神経疾患 

Carlo Perfetti(著)

脳のリハビリテーション

パラダイム本よりも分かりやすく書かれている印象を持つ本です。中枢神経疾患に対する、認知運動療法の方法が細かく書かれており、訓練で使用される道具も1部書かれています。より臨床に持ち込みやすい内容になっています。ベーシックコースなどに参加されて臨床で行いたい人におススメの1冊です。

認知神経リハビリテーションの臨床に役立つ

1、妻を帽子と間違えた男

オリヴァー・サックス(著)

妻を帽子と間違えた男

私の臨床における患者の観察方法に大きな影響を及ぼした1冊です。珍しい現象に立ち向かう、作者の思考を中心に内容が展開されていきます。タイトルにもなっている相貌失認では、その奇怪な現象におどろかされます。認知神経リハビリテーションにおいて必要な観察のイロハが見て取れる貴重な1冊です。

2、身体化された心

フランシスコ・ヴァレラ、他

身体化された心

とにかく悩む1冊です。認知神経リハでは哲学が非常に多用されています。その中でもメルロポンティ、ルリアにならび良く名前が出てくるのがこのヴァレラです。【人】を考える学問にはいろいろなものがあり、視点も様々であることを教えられます。難しい本が好きな人は是非。

3、臨床するオートポイエーシス

河本 英夫(著)

臨床するオートポイエーシス 河本 英夫(著)

私が非常にお世話になっている河本先生の著書です。哲学的観点から、認知神経リハを観察し展開される1冊。オートポイエーシスという観点から、人の回復を考えて行きます。身体化された心と同様、非常に難しい内容ですが、おすすめです。

4、リハビリテーション身体論ー認知運動療法の臨床×哲学

宮本 省三(著)

リハビリテーション身体論

タイトル通り、臨床と哲学を結びつける貴重な1冊。私の中では臨床において哲学をどう生かせるのかの手掛かりを得ることが出来た大きな1冊です。哲学って楽しいと気付かせてもらいました。何人もの哲学者の1言1言を、著者が臨床へいかせるカテゴリまで細分化してくれています。人と人との関りが非常に大切な認知神経リハにおいて、重要な1冊です。

認知神経リハビリテーションの臨床の姿

1、ペインリハビリテーションを生きて

江草 典政、三谷 直子、中谷 俊彦

ペインリハビリテーションを生きて

私も大変お世話になっている、痛みのスペシャリストである江草先生による1冊です。患者さんの思考とセラピストの思考が絡み合うように書かれた内容は、臨床そのもののリアリティを追及されています。難治性疼痛に挑む患者さんとセラピストのリアルな現場を感じたい人におススメです。臨床では自由な発想が求められることを痛感させられます。

2、臨床は、とまらない

唐沢 彰太(著)

臨床は、とまらない

勝負の場は臨床だ。今持っている知識で患者さんをどう考えて行くのかが重要で、その方法と熱量を持っている事がセラピストの役割である。知識や技術で不足している分を頑張って埋めようともがき、患者さんの改善へとつき走る私の臨床を書いた1冊です。知識や技術ではなくリアルな観察や分析、そこに対するEBMを意識した1冊になっていますので是非!!

いかがでしたでしょうか?認知神経リハビリテーションに興味がある方はぜひプロリハ研究サロンへお越しください。

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手のリハビリのポイント

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

骨折や脳血管疾患の方のリハビリで特に難しいのが手のリハビリです。
身体の中でも決して大きくないこの部位は、多くの筋や骨から構成されており、その神経系や血管も複雑な構造をしています。

さて、手の中でも特に重要なのは母指です。つまり親指です。
母指は、他の四指と構造が異なり、人間特有の構造をしています。
この特有の構造の核をなしているのが球関節であるCM関節です。肩や股関節と同じ構造になっており、ぐるぐる回せる構造です。
この母指の機能は手の機能そのものと言えるくらい重要で、つまむ・持つなどには母指が安定性や巧緻性をもたらしています。
つまり、リハビリにおいて、この母指の改善こそが必須課題になってきます。

そこで、母指のリハビリで重要なことは、

「CM関節がなぜ球関節なのか」

肩は手と物体、股関節は足と床のように空間的な位置関係を構築するために重要な関節です。
その肩や股関節と同じ構造を持つCM関節は、母指と他の四指との空間的な位置関係を構築する役割があると考えられます。

例えば、ペットボトルを握った時、母指は他の四指のどの前に位置するでしょう。
ほとんどの人が、中指の前に位置していると思います。
また、小さいものをつまむときは薬指や小指ではなく、示指とつまむと思います。

これらは手の構造が関係していますが、それ以外にも実は理由があります。
皆さん今、テーブルでPCで読んでいただいている方、電車でスマホで読んでいる方がいらっしゃると思いますが、自分のズボンの素材の手触りを確かめてみてください。

何指で触りましたか?ほとんどの方が示指なでるように手触りを確かめたのではないでしょうか。
そうです。示指は材質を確かめる触覚に優れています。

中指は掌や母指と協力して物を安定させることに優れています。

薬指は、物を握った時に物の傾きや摩擦を感じることに優れています。

小指は、手全体の力量のコントロールに優れています。

この様に、4指にはそれぞれ得意分野があり、それを考慮して母指がそれぞれの指と関係性を持っていきます。
手のリハビリではこのような特徴を理解して、介入を考えていく事が求められます。
興味がある方はぜひプロリハ研究サロンへお越しください。

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