お読みいただいている皆さんこんにちは。
本サロンを運営しております、理学療法士の唐沢彰太です。
人の脳が、どうやって身体を動かしているのかご存知ですか?
【○○筋を動かす】
のように、筋レベルでコントロールしているのか?
それとも
【膝を伸ばす】
のように、関節レベルでコントロールしているのか?
本記事では、この点について書いていきたいと思います。
筋力トレーニングの落とし穴
歩行獲得を目指す整形外科疾患の患者さんでは、骨折をした側の安定性を向上するために、中殿筋の筋力トレーニングがよく行われます。
歩行中の立脚期において、ふらつかないためには中殿筋が重要だと考えられているためです。
これは、リハビリの中では中殿筋の筋力低下が原因と考えられていることが一般的で、介入においても【中殿筋の筋力強化】が行われます。
これは、学校で教育されており重要な視点です。
このようにリハビリにおいて、ある動きが難しい時にその動きを主動する筋に問題があると考えられます。
問題には、筋力不足や運動麻痺などがあり、それぞれ介入方法が分かれてきます。
一見自然な流れの様に見えるこの考え方ですが、ここで1つ疑問が生じます。
目的志向型の脳
最初に書きました通り、身体を目的に沿って動かすためには、脳からの指令が必要です。
よって、目的に応じて指令が変化するとなると、筋力トレーニングの時は筋力トレーニングのための指令、歩行の時は歩行のための指令があることが分かります。
となると…
【筋力強化で得た、中殿筋の筋力は本当に歩行の時に使用されるのか?】
が気になってきます。
これは、簡単に言えば、横向きで寝ている時に、歩行の時と同じように中殿筋に力を入れてみてくださいと言われても、何を言われているのか分からないのではないでしょうか?
繰り返しになりますが、歩行の時の中殿筋の働きは、歩行の時にしか発揮できないという事になります。
これは歩行中の中殿筋に限らず、立ち上がりをスムーズにするために大腿四頭筋を鍛えることは、立ち上がりの時に使用される大腿四頭筋や大殿筋の筋出力を上げるだけでは不十分な可能性が高いのです。
リハビリに一工夫を
ではどうすれば良いのでしょうか?
神経学の父と呼ばれている、ジョン・ヒューリングス・ジャクソンはこう言っています。
脳は筋の事など知らない。
運動を知るだけである。
つまり、
どの筋を動かすか?
ではなく、
どう動こうか?
を脳はコントロールしているということです。
筋力トレーニングを含めた動作によって脳の指令が異なるのであれば、筋力トレーニングの時に鍛えている筋を意識することに加えて、どの動作の時のどの時のためのリハビリなのかを患者さんは知っていた方が効果が出やすくなります。
脳の知識を整形外科疾患の患者さんに活かしていく。
ここにリハビリの個別性があるのかもしれません。
自分だけの臨床を。