半側空間無視を運動と感覚から介入する③【評価・検査編①】

USNを運動と感覚から介入する③タイトル画像

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運動と感覚にそれぞれ関係している【空間】と半側空間無視(以下USN)の関連から、USNを第1回、2回で考えてきました。
 今回は、USNと混同しやすい現象とそれらを鑑別するための評価、またUSNの症状をリハビリで介入していくためにカテゴライズしていく方法を書いていきたいと思います。

第1回⇨半側空間無視の運動と感覚から介入する①【運動編】

第2回⇨半側空間無視の運動と感覚から介入する②【感覚編】

USNと混同しやすい現象と見分け方

脳卒中などによってUSNが生じている場合は、その他にも様々な現象が同時に出現している可能性を常に考えなければなりません。
また、似たような現象や混同しても見分けがつきにくい現象は、高次脳機能障害においては非常に多くあります。

 半側空間無視も例外ではなく、前回まで書いてきました運動障害や感覚障害はもちろん、半盲や身体失認との鑑別も非常に重要になります。
運動・感覚障害とのカテゴライズは次で書きますので、ここでは半盲や身体失認について書いていきます。

1.半盲

 半盲は、眼球に入力された刺激を脳に伝達するための視神経が損傷することによって生じます。
 視神経の左右どちらか、どの段階での損傷かなどによって、見えなくなる視野の場所などが変わってきます。
 その中でもUSNと混同しやすいのが、同名半盲による左側の視野の欠損です。

 症状としても「左側が見えにくい」という訴えで、眼科などで行われる視野検査においても、半盲とUSNの鑑別は非常に困難です。
 実際私が経験した患者さんでも、半盲と診断されたものの視野が大きく改善した方がいらっしゃり、無視の要素が含まれていた方が多くいらっしゃいます。

 私は臨床の中で、半盲とUSNの鑑別には以下を考慮しています。

  • 欠損している視野に対して頚部の回旋などの代償が見られているか
  • 欠損している視野を認識出来ないが、その視野において対象物に対して、正確にリーチできないか
  • 見える時と見えない時がないか

この3つを考慮し、検査を実施します。

①においては、半盲の場合「見えない」という自覚がしっかりとあるため、視野を広くするために通常は代償が見られます。
ですが、USNによる視野狭窄では、見えていない事を自覚できないため、視野を広くしようとする代償は慢性期においては見られる人もいますが、回復期では見られないことが多いです。
この事を考慮すると、視野狭窄の原因にUSNがどれくらい影響しているのかを推測することが出来ます。

②は、盲視という現象を考慮しています。
見えていると自覚することと、見えている物に対して運動することでは使用する脳のルートが異なります。
その為、半盲ではそもそも見えていないためリーチングも難しいのですが、盲視では見えている自覚のみが障害されるため、対象物に正確にリーチングすることが出来ます。

③はそのままの意味ですが、半盲は神経損傷なので、一貫して見えません。
ですが、USNでは注意の影響が大きいため、見える時と見えない時にムラが生じることがあります。

これら3つを考慮して検査や介入を行っていくことで、半盲との鑑別を行っています。

2.消去現象

 消去現象とは、麻痺側に感覚障害がないにも関わらず、非麻痺側と麻痺側両側に感覚刺激が加わると、麻痺側の刺激を認識出来ない現象です。
 実際の臨床では、麻痺側のみと非麻痺側を含めた両側とで、知覚の程度が変化する現象がみられます。

文献上は、消去現象を半側空間無視の症状に含める場合もありますが、臨床上は別々で生じる事もあるので、介入していく上で病態解釈する時には分けた方が良いと思います。

消去現象は、視覚性、触覚性が知られておりそれぞれ視野検査の応用とフィンガータッチによって検査可能です。
 さらに、深部感覚においても消去現象が生じることを忘れてはいけません。

例えば、臨床では消去現象のみられる患者さんに立ち上がりの時に左右の体重比を意識してもらうと、これが全くできないんです。
 これは足底の圧覚で消去現象が生じているからなのですが、膝の角度や速度などを聞いても全く分かりません。
 このことから、運動覚においても消去現象が生じている可能性が高くなってきます。

この消去現象は【両側同時に刺激が加わった時】と限定されていて、USNのように常に一側を無視しているわけではありません。
 つまり、行為によって無視様の症状が見られるかどうかが変化して来るということになります。
 もちろん消去現象とUSNがオーバーラップしていることも多くありますが、行為を獲得していくためにUSNと消去現象どちらの影響が強いのかを見極めて介入していく必要がありますね。

 次回は身体失認との関係について書いていきたいと思います!

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半側空間無視を運動と感覚から介入する②

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前回より半側空間無視(以下USN)について書いています。
USNを、

  • 一側を見ることが出来ない
  • 動けない
  • 感じない

などの単純な病態ではなく、運動と感覚の側面から考えていくことを目的としています。
前回は、運動と空間、またその空間を認知する能力との関係について書きましたが、今回は感覚と空間との関係性から、半側空間無視を紐解いていきたいと思います。

感覚に関わる空間認知

 感覚は、外部からの刺激や関節が動いたことによって生じる刺激を脳で処理することで知覚します。
この時、空間はどう関係しているのでしょうか?

 例えば、誰かが後ろから自分の肩を叩いたとします。
この時、なぜ叩かれたのが【肩】だと分かるのでしょうか?
この身体のどこに刺激が加わったのかを認識するためには、身体空間認知が関係してきます。

 もう少し具体的に書いていきます。
脳の中には身体再現がされているのは皆さんご承知の通りで、頭頂葉にあります。
この頭頂葉にある身体再現を、ここでは宮本省三先生のお言葉を借りて<脳の中の身体>と呼ぶことにします。
専門的に言うと、身体表象にあたります。

 この脳の中の身体には、様々な意味がありますがその中の身体地図、つまりどこに肩があって肘があってのような感じのものがあります。
身体に刺激が加わり脳に伝達されると、この脳の中の身体とその刺激を比較して、身体のどこに刺激が加わったのかを判断します。

 この時、肘より外側に手があるといったような、身体の地図は空間的な要素が含まれています。
同時に、

「目を閉じて左肘に集中してください」

と指示をした時、指示された側は

「顔の斜め下ぐらいかな?」

と空間に対して注意を向けます。
このように、身体に注意を向けること自体にも空間の認識が重要になってきます。

半側空間無視と感覚と空間認知

ここまで書いてきたように、感覚を知覚するためには様々な空間の認知が必要です。
よって、半側空間無視の影響で、何らかの刺激を知覚できない時その原因は様々なものが考えられるということです。

 これらを見極めるためには、それぞれの要素が原因であるというための検査や評価を考えられなければなりません。
もちろん既存の検査や評価を使用するのでも大丈夫ですが、患者さんによって含まれる病態も違いますし、年齢や性別などによっても個人差があります。

 よって、患者さん毎に必要かつ有効な検査や評価を自分で考えられる能力が必要になってきます。
そこで次回は、この検査や評価について書いていきたいと思います!

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半側空間無視を運動と感覚から介入する①

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 半側空間無視(unilateral spatial neglect:以下USN)は、右半球損傷における高次脳機能障害のうちの1つです。
あらゆる空間の正中(真ん中)より左側をあたかも無視しているかのように振る舞う現象で、特に回復期において頻繁に出会います。
USNは、ADLに大きな影響を及ぼすため、リハビリテーション(以下リハビリ)では介入において重要なファクターとなります。

近年では、縦上束との関連が指摘され、USNが長期化し残存するかどうかなどの予後が予測できるようになり、リハビリの介入方法についても明確になってきています。
一方で、人が生きていく上で、【空間】という概念は非常に幅広く、様々な場面や文脈で空間処理が求められている影響で、USNの病態も多様化してしまっています。

そこで今回は、USNを視覚ではなく<運動と感覚>という側面で介入に落とし込む方法を、何回かに分けて書いていきたいと思います。
第1回は、USNと運動と感覚との関係について書いていきます。

USNの運動的側面と感覚的側面

 運動と感覚には、空間処理が必須です。
その為、それぞれに関わる空間認知にはUSNが大きな影響を及ぼします。
そこで、運動と感覚それぞれに関わる空間認知からUSNを考えていきます。

運動に関わる空間認知

 前方に手を伸ばす。
いわゆるリーチングをすると、手が外部空間の中を移動していきます。
また、肩・肘・手首・前腕・指などの関節が動き、身体空間そのものが変化していきます。

 通常リーチングの時には、視覚で物体を捉えて位置を把握し、その方向へ運動を行います。
 この時、右手をリーチングしていくのであれば、右肩よりも物体が内側なのか外側なのかそれとも正面なのかによって、肩関節の運動方向が決定づけられます。
 同時に、自分の身体からどれくらいの距離にあるのかによって、肩関節と肘関節の運動距離も決定されます。

 このように、外部空間においては視覚とのマッチングが重要で、USNにおいては

【左側が見えているのにリーチングが出来ない】

という現象はあまり見られません。
一方で、

【左側を視覚で認識出来ず、左側への運動も同時に困難】

という現象は多くみられます。

 では身体空間についてはどうでしょうか?
座っている時よりも立っている時の方が身体空間は広がりますし、上記したようにリーチングをすればリーチした方へ身体空間は広がっていきます。
つまり、左側へリーチングすれば身体空間は左側へ広がっていき、認知しなければならない身体空間は無視側へと広がっていきます。

よって、USNが見られる方の場合、身体空間において無視が見られるかどうかによって、無視側への運動にも大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。
左身体の知覚は出来るのに左側への運動が見られない、歩いている時に左側へ向かうときに体全体で左を見る等の現象が関係しています。

 

 この様にUSNを見ていく時に、どの運動の時に無視が影響しているのか?
どの空間認知に無視が影響しているのか?
これらを考えて行く必要があります。

 次回は、感覚の空間認知について書いていきます!

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