脳卒中後の【動かない】の本当の理由は?
お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロンを運営しております、理学療法士の唐沢彰太です。
本記事では、脳卒中後の運動障害で非常に間違えやすい「運動麻痺」と「筋力低下」について書いています。
リハビリの介入にも直接影響する内容ですので、皆さんが担当する患者さんへ還元していただけると幸いです。
1.動かない=麻痺ではない?!
脳卒中には、様々な後遺症があります。
脳卒中による死亡率が激減した今でも、後遺症に悩まれている人は大勢いらっしゃいます。
その後遺症の中でも、【麻痺】は非常に高い割合で出現します。
麻痺は、大きく分けて
- 運動麻痺
- 感覚麻痺
の2種類あります。
運動麻痺は、脳でプログラミングされた指令を筋へ伝える神経が損傷することで生じます。
感覚麻痺は、身体にある受容器に刺激が加わったことを脳へ伝える神経が損傷することで生じます。
これら麻痺は、
「動かない」「力が入らない」
「感じない」「わからない」
と当事者の方は感じます。
ですので、動かそうとしたのに思い通りに動かない現象を、全て【麻痺】と捉えてしまいます。
これはセラピストにとっても同様です。
随意性と呼ばれる身体を動かす能力を評価/検査した結果、動きが悪ければ「○○(程度)の運動麻痺」と判断します。
ですが、これには大きな落とし穴があります。
実際に、どれくらい運動神経(皮質脊髄路)が損傷しているのかは、画像検査をしなければ分からず、動かない原因は他にあるかもしれないからです。
ですので、リハビリにおいて動かないことを【運動麻痺】と呼ぶことはリスクがあり、【運動障害】と呼ぶ方が正しいのです。
つまり、
動かない=運動麻痺
という考え方は、間違えているリスクがあり、患者さんの可能性を狭めてしまう危険性すらはらんでいます。
2.麻痺=筋力不足でもない?!
脳卒中の後遺症をお持ちの方とリハビリを行っていると、
「筋力が足りない」
と話される方が多くいらっしゃいます。
また、脳卒中の運動障害について、
「自分は麻痺が強いから」
と話される方も同じくらい多いです。
よって、これら筋力不足と麻痺を関連付けて考えることは想像に難しくありませんし、実際脳卒中後の運動障害に対して、筋力トレーニングが行われることが多いのが現状です。
ですが、先ほども書いた通り、【動かない】ことの原因には非常に多くの要因が関係しています。
例えば、高次脳機能障害や感覚障害が動かないことに影響していることが多くあります。
これらを見極めるために、観察・評価・分析を行いそれらを統合した結果から原因を考えて行きます。
もし、高次脳機能障害や感覚障害が原因なのであれば、それらを考慮した介入が必要になり、筋力トレーニングでは改善は難しいのです。
3.原因は人それぞれ違う
運動障害といっても、原因は様々であり、原因に合わせたリハビリが必要なことはおわかりいただけたと思います。
そもそも脳卒中は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の総称で、それぞれ異なる疾患です。
このことに加えて、発症部位、程度、治療までの期間、病前の状態などによって、後遺症は異なってきます。
つまり、一人一人【動かない】また【動かしにくい】原因が異なると考えた方が良いことになります。
ですので、一人一人十分な評価や検査を行うことが大切で、介入も工夫していく必要があります。
なぜ動かないのか?
その疑問に対して、多くの評価・検査・観察を行っていくことが経験になりますし、その後の患者さんに還元していける唯一の経験です。
動かない=麻痺
麻痺=筋力不足
この2つの誤解を患者さんにさせないために、セラピストは勉強していく必要があります。
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