そこで、少し例を出して考えて行きたいと思います。
①注意は知覚するためには必須の能力であること
触れている、動いているなどの知覚は注意によって引き起こされます。
例えば、掌がベッドに触れていることを知覚するためには、掌に注意を向けた上で掌を意識しなければなりません。
起き上がる時に、ベッドに掌が触れ、圧が加わっていることが知覚されると、自分がどれくらい掌に体重を乗せているのかを認知することが出来ます。
もし、掌に注意を向けることが出来なければ、掌を意識することも、触れていることを知覚することも、どれくらい体重が乗っているのかを認知することも出来ません。
こういった状態で、掌をベッドに付けてスムーズに起き上がることが難しいのは想像に難しくありません。もしかしたら手をベッドにつかないように起き上がるかもしれません。
このように、自分の身体に注意を向けることが出来ない場合は、知覚が上手く行えない可能性が考えられるため、動作や行為に大きな影響を及ぼします。
②行為を行う時に注意する場所は介入の時とは違うことが多い
リハビリの介入では、セラピストが患者さんに注意して欲しい所があります。
その箇所へ注意を向けてもらうために、声掛けや感覚刺激を入力することは珍しくありません。
ですが、その注意して欲しい場所は実際に行為を行うときに注意する場所とは異なることが多いんです。
その代表例が歩行訓練でしょう。介入では、足底や関節覚など自分の身体に注意を向けるような指示をすることが多いですが、実際の歩行では視覚性の注意を中心に使用しているため大きな差が生まれます。よって、膝に注意を向けていれば上手く歩けるけど病棟ではうまく出来ないといった、難題にぶつかってしまうということです。
この時に気を付けなければならないのは、患者さんが自然歩行の時に何に注意を向けているのかを知ることです。もしそこに、注意障害が影響しているのであれば、そこを考慮して介入を進めていく必要があります。
このように、行為と注意、注意と介入、介入と行為はそれぞれの関係性を考えて観察し評価をし、介入していく必要があるということですね。みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない注意をどう考えていますか?
実は動作から注意を観察することも出来るんです!