お読みいただいている皆さんありがとうございます。本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?)
リハビリでは一般的に、運動と感覚をそれぞれ分けて評価をして介入していきます。ですが、人が行為を行う上で運動と感覚はそれぞれ密接な関係にあり、お互いに影響を及ぼし合っています。その証拠に、運動器官である筋は同時に非常に重要な感覚器官であり、その感覚器官である筋紡錘は正確に感覚を受容するために運動を用いています。(α-γ連環)
そこで今回は、感覚のおさらいと感覚障害について書いていきたいと思います!
感覚が脱失していたらスムーズに動けると思う?
私が学生の頃に行わせていもらった臨床実習で、視床出血の患者さんのリハビリを見学していた時の話です。その患者さんは、非常にぎこちなく動いていて、歩行においては平行棒を両手でしっかりとつかんで目で足元を確認しながら行っていました。
その時の私は、「何の疾患なんだろう…?」と疑問に思っていましたが、担当の理学療法士の方が、
「感覚だけに障害があると運動に問題はでないと思う?」
と質問してきました。つまり、運動麻痺がなく感覚麻痺だけがある場合、その人の行為はどうなるのか?という質問だったのですが、私は普通には動けないだろうなと思う程度でした。実際、見学していた患者さんは、脳画像からも評価からも運動障害はなかったのですが、感覚障害によって行為を思い通りに行うことは出来ていませんでした。
このことがきっかけで、私は運動と感覚の深い関係性について考えるようになりました。人は動物である以上動きますし、環境に適応する必要がある以上知覚します。この2つは必然なので、人の身体を対象としているリハビリでは外すことが出来ません。またそれ以上に、人は知覚するために動き、動くために知覚しています。つまり、運動するためには知覚できなければならず、行為において知覚は非常に重要な役割を持っています。
評価をしていく時に、要素ごとに評価してその結果を統合し問題点を抽出していく作業は非常に一般的ですが、私はこの方法をとっていません。この方法をとってしまうと運動と感覚の関係性が見えにくく、実際の患者さんの像と少しずつずれて行ってしまうからです。
ではどうすれば良いのか?それは、運動と感覚を同じカテゴリーに入れられるような分析の方法を行えば良いんです。
行為をベースに考えて行く
私は、臨床の目的は運動を改善することでも、感覚を改善することでもないと思っています。関節が曲がるようになっても、その関節の角度を行為で発揮できなければ意味がないように、動くようになってもまた感じるようになってもその人の生活が良い方向に変化しなければ意味がないからです。つまり、リハビリの臨床においてよく見て、よく考えなければいけないのはあくまで行為であり動作でなければなりません。
更に、臨床における介入では、患者さんの得意な部分を使えるような方法で展開されていくことが大切です。例えば、歩行の時に立脚期が安定していない時、筋力トレーニングをするだけではなく、立脚時の足底の圧感覚を使用した介入も引き出しとして持っておく必要があるということです。
これはなぜかと言いますと、1つは、運動と感覚が関係しあっていて、立脚期の問題が運動だけではない可能性があるからです。
もう1つは、行為の特性を考えていくと、歩行における立脚期では身体を支えている側の足底に荷重され、体幹の立ち直り反応が出現するなどの特異的な関連がみられます。この時に、股関節周囲には確かに筋収縮がみられるのですが、これは立脚期の時だけに見られる収縮で、他の姿勢や運動ではこの収縮を再現することは出来ません。つまり、歩行という行為において、様々な知覚、反応が生じた中で筋が収縮しているのです。
この事を考えると、運動という側面のみから介入していくのでは不十分で、感覚/知覚を交え姿勢や反応を考慮した介入が必要になってくることが分かります。そのために、行為をベースに考えいかにその行為の特性を介入に持ち込めるのか?が勝負になってきます。このことを前提に、観察から評価、分析までを行っていくためには、運動、感覚というコンポーネントではなく、歩行の時の立脚期に必要な能力と、能力同士の関連性を考える必要が出てきます。
もうすぐリハビリが日本に入ってきて100年…そろそろ運動と感覚を分けて考えるのをおしまいにしませんか?
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