私が学生の頃に行わせていもらった臨床実習で、視床出血の患者さんのリハビリを見学していた時の話です。その患者さんは、非常にぎこちなく動いていて、歩行においては平行棒を両手でしっかりとつかんで目で足元を確認しながら行っていました。
その時の私は、「何の疾患なんだろう…?」と疑問に思っていましたが、担当の理学療法士の方が、
「感覚だけに障害があると運動に問題はでないと思う?」
と質問してきました。つまり、運動麻痺がなく感覚麻痺だけがある場合、その人の行為はどうなるのか?という質問だったのですが、私は普通には動けないだろうなと思う程度でした。実際、見学していた患者さんは、脳画像からも評価からも運動障害はなかったのですが、感覚障害によって行為を思い通りに行うことは出来ていませんでした。
このことがきっかけで、私は運動と感覚の深い関係性について考えるようになりました。人は動物である以上動きますし、環境に適応する必要がある以上知覚します。この2つは必然なので、人の身体を対象としているリハビリでは外すことが出来ません。またそれ以上に、人は知覚するために動き、動くために知覚しています。つまり、運動するためには知覚できなければならず、行為において知覚は非常に重要な役割を持っています。
評価をしていく時に、要素ごとに評価してその結果を統合し問題点を抽出していく作業は非常に一般的ですが、私はこの方法をとっていません。この方法をとってしまうと運動と感覚の関係性が見えにくく、実際の患者さんの像と少しずつずれて行ってしまうからです。
ではどうすれば良いのか?それは、運動と感覚を同じカテゴリーに入れられるような分析の方法を行えば良いんです。