1,麻痺側をみた上で、全身をみる
脳卒中の多くは、左右にわかれている脳の一側のみを損傷します。「右」被殻出血、「左」中大脳動脈の梗塞と言った具合です。その為、後遺症の運動麻痺や感覚麻痺の症状が現れるのは、身体の右側か左側の一側だけです。
よってリハビリでは、症状の現れている【麻痺側】をみていくことになります。麻痺側がどれくらい動くのか?感じにくさはないか?などの評価から始まり、動かす練習や感じられるようになるための介入に至るまで、麻痺側へのリハビリがメインになっていきます。
一方で、起き上がりや立ち上がりなどの基本動作は、全身を使用する動作なため、リハビリでは麻痺側だけをみていても足りません。特に、左右の下肢を交互に前に振り出す歩行や、両手を同時に使用する行為は、それぞれに特化した評価や介入が必要です。
2,片麻痺は脳の疾患
多くの片麻痺患者さんが、動かない・感じない症状が見られています。そのため、【身体に問題がある】と考えがちですが、脳卒中は脳の疾患であり、動かない・感じない原因は身体ではなく「脳にある」はずです。話せない・無視してしまうなどの高次脳機能障害は脳との関係性がイメージしやすいのですが、運動障害や感覚障害は簡単ではありません。
この壁を越えるためのポイントは、動かない・感じない原因を出来るだけ細かくしていくことです。失行症を例に考えてみます。失行症は、運動麻痺・感覚麻痺が無いにもかかわらず、目的に合わせて効率的に行為が出来ません。なので、PTやOTが患者さんの動きを観察した時には、麻痺による影響なのか?失行症の影響なのか?分かりにくくなってきます。もし、失行症の影響が強い場合、身体を動かす練習をいくらしても大きな改善は見込めません。つまり、失行症の場合、上手く動けない原因は身体にはありません。患者さんの動作をよく観察して、評価や検査の結果から「なぜ?」を深めていかないと、なかなか改善はみられません。
3,外から見えているのはごく一部
感覚をはじめ、片麻痺患者さんが自分の身体をどう感じているのか?高次脳機能障害の影響で、患者さんの認知機能はどう変化しているのか?は、患者さんの【中】にしか答えはありません。そのため、リハビリの臨床では、患者さんに【聞く】ことが非常に重要です。PT・OTが今までの経験や知見から決めつけてしまうのは非常に危険です。必ず患者さんの中にある答えを聞くようにします。