そもそも機能解離(diaschisis)とは何なのでしょうか?
これを理解していくために、脳の不思議について知っておく必要があります。
脳には機能局在が存在しています。
前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられる新皮質に加え、視床、基底核、小脳など様々な部位から脳は構成されています。
この部位別に役割があり、脳損傷ではその損傷した部位の役割が障害を受けるというのが一般的な考え方なのは最初に書いた通りです。
この部位別の役割に加え、脳には別の視点が必要です。
脳は、神経で構成されていてその状態は網目のようにネットワークを構成しています。
つまり、部位内で情報をやり取りしているのはもちろん、部位同士で情報のやり取りをしています。
頭頂葉で処理された情報は前頭葉へと伝達されるといった具合です。
このようなやり取りがありとあらゆるところで行われている脳は、部位別だけで考えるのは到底不可能で、ネットワーク別に捉えていく必要も出てきます。
ネットワークとして脳を捉えていくと、機能解離は理解しやすくなっていきます。
例えば、ABCでネットワークが作られているとします。
脳出血などでAが損傷すると、Aの持つ役割はもちろん障害を受けます。
同時に、ABCのネットワークも働かなくなり、BとCも一時的に機能を停止してしまいます。
これは、Aが機能停止しているのにBとCが活動してしまうと、Aの損傷度合いが更に重症化する恐れがあるからです。
仕組み的には、脊髄ショックのようなものと考えると分かりやすいかもしれません。
この機能解離は、1914年にMonakowによって提唱され、近年ではその詳細がほぼ解明されてきています。