運動にはイメージが必ず先行する【臨床編】

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プロリハ研究サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。(自己紹介はこちらから→唐沢彰太について

イメージが鮮明なほど行為は洗練化される

前回の基礎編で、運動に先行するイメージがどういうものなのかについて書きました。
その中で、イメージが鮮明に行えるほど行為は洗練化されていくことがお分かりいただけたと思います。

このように運動に先行するイメージを介入時にいかしていくためにはどうすれば良いのでしょうか?今回はこの点について書いていきます!

こちらも合わせてご覧ください!→運動にはイメージが必ず先行する【基礎編】

イメージからいかに知覚を想起させるか

運動のイメージは大きく2つの種類があります。(図1)

  1. 視覚性イメージは、実際に目で見ているかのような感じでイメージします。実際に今座っている所から立ち上がる所をイメージしてみてください。すると、視覚性にも2種類あることが分かります。
    1つは、前や横などから自分を3人称的にみている所をイメージする方法。
    もう1つは、実際の自分の目線で立ち上がる時の視線の移動をイメージする方法。
    立ち上がりの場合は全身運動なので少しニュアンスが変わってしまいますが、肘を曲げる運動をイメージした時に自分が肘をみながら肘を曲げるイメージをすることが出来ます。
  2. 体性感覚性イメージは、運動をした時の感覚をイメージします。肘が曲がるとはどういう感覚か、目の前のひよこに触れるとどんな感じがするかなどです。このように、体性感覚性のイメージにも2種類あり、運動覚にもとづくイメージ(非言語的)と触覚にもとづくイメージ(言語的)があります。
    ただここで注意しなければならないのは、運動覚に基づくイメージは言語化が非常に難しいという点です。触覚はオノマトペがあり、「ふわふわ」「ざらざら」と言語化出来ますが、運動覚に適した言語は存在しないため「手が移動している」など運動覚そのものを言語化することは難しいんです。このことは介入にイメージをいかしていく時に注意しなければならないので覚えておいてください。

図1 運動イメージの種類

このようにイメージには種類があり、人によって得意なイメージと不得意なイメージがあります。担当の患者さんにイメージが介入に有効かどうかを判断するためには、Vividness of Movement Imagery Questionnaire-2(VMIQ2)などの検査を使用するとスムーズに組み立てられます。

イメージは予測の一部であることは【基礎編】でお話しましたが、この予測には更に知覚の要素が大きな意味を持ちます。つまり、目の前のコップに触れると自分の体にはどんな感覚が生じるのか?とイメージすること自体が、行為の予測に繋がるということです。
コップに手を伸ばしていく時の肩や肘、前腕、手首、手指の運動覚、コップに触れた手の部位や感触などをどれくらいイメージに含めることが出来るのかが臨床では大切になります。

よくある間違いで、「イメージした感覚が今したか?」「さっき感じた感覚を探しながら動いてください」などのように、イメージした感覚を使用するとただの感覚のあてっこになってしまい意味がありません。感覚をイメージすることはあくまで予測です。触覚を予測すると言語化されます。目の前の絨毯に触れるとどんな感じがするかをイメージすると「ふわふわするかなぁ…?あ」と言語に置き換えられ、実際に触れた時に「ふわふわしているか?」が大切になります。運動覚をイメージすることは難しいので、手の位置や方向などをイメージすることで活用していきます。

ただやみくもに動くのではなく、予測してから動くことでエラーに気付くことができて、患者さんも学習しやすくなります。ぜひご参考ください!!