ここまで書いてきた観察と分析を分けて考える方法は、障害の見落としが減るのはもちろんですが、もう1つ利点があります。
それは、
観察の中で気付いた点や動作の違和感であるため、動作と結びつけやすい
ことです。
「本患者さんには、半側空間無視がある」ではなく、
「歩行の時に麻痺側の振り出しがぶらぶらしているように見えるのは、全身動作において麻痺側に注意喚起が難しいからだ」
と、行為において生じている現象を理解するために、認知機能や注意機能の検査を行っていきます。
介入の一連の流れに、観察を取り入れ、検査の持つ意味合いを少し工夫すると、高次脳機能障害と行為とのつながりが見えやすくなるのではないでしょうか?
もちろん、この観察はすぐに出来るようになるわけではありません。
特に関節運動を中心に観察する方法を学校で習ってきた理学療法士は、観察の方法を工夫したり、時には1から組みなおす必要もあるかもしれません。
ですが、このような観察は訓練の幅そのものも広げてくれると考えています。
動作と高次脳機能障害の関係性が理解できていれば、訓練もおのずと認知的な側面(高次脳機能障害は認知障害であることを前提に)を考慮したものへと変化していきます。
つまり半側空間無視への介入、歩行への介入ではなく、
半側空間無視を呈している人への歩行改善を目的とした介入
です。
つまり、もっと歩きやすくなってもらう為には、患者さんを半側空間無視がある人として捉えて、訓練を工夫していくイメージです。
現在のリハビリでは、
- 歩行を改善していくためには、半側空間無視を改善していかなければならない
- 半側空間無視のあるなし関係なく歩行練習をおこなっていかなければならない
など、いろいろな考え方があります。
その中でも私は、高次脳機能障害を認知の癖として考えて、介入方法や関わり方、コミュニケーションまで全てをプランニングしていきます。
『こんな観察できるようになりたい!!』
『そんな訓練どうやってやるの??』
そう思っていただいた方、一緒に勉強してみませんか?