そのリハビリ、脳はどう働いてますか?

そのリハビリ、脳はどう働いてますか?

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロンを運営しています、理学療法士の唐沢彰太です。
(自己紹介はこちらから→唐沢彰太って誰?

私は、自己紹介にも書いてあります通り、脳血管疾患の後遺症や慢性的な痛みに悩まれている方のリハビリを中心に行っています。
脳血管疾患も慢性痛も脳が関与している疾患のため、今自分が行っているリハビリは<患者さんが脳のどこを働かせているのか?>をとても重要視しています。
そのことを理解していく手掛かりは患者さんの話されることや振る舞いの中にあります。(こちらもご参考ください⇒患者さんの1人称

そこで今回は、脳の基本的な構造と役割について簡単に整理し、それを臨床に活かしていくポイントを書いていきたいと思います。

脳の歴史とリハビリテーション

脳に関しては学生の頃、解剖学や生理学などの授業で習うと思います。その時に習う脳は「機能局在論」と呼ばれる理論が多いのではないでしょうか?
前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉それぞれに機能があり、ホムンクルスはこの代表例です。この機能局在論の起源は、18世紀まで遡ります。
その頃ヨーロッパを中心に、フランツ・ヨーゼフ・ガル(Franz Joseph Galll, 1758-1828)の「骨相学(phrenology)」と呼ばれる理論が流行していました。
18世紀から19世紀にかけて西洋で流行したこの学問は、専門家たちからは「脳の生理学」と呼ばれていたほどでした。
骨相学については、多くの書物がありますので詳細はそちらをご参考いただければと思いますが、この骨相学が脳の機能局在論の走りと言われています。

脳損傷の新しい視点

その後、ペンフィールドやブローカ、ブレインなど多くの研究者の功績によって様々なことが分かってきた脳ですが、わかってくることが多くなればなるほど脳に関する情報はより細かくなっていきます。
脳に関する研究を行っている研究者は理解できるかもしれませんが、臨床現場で働いている理学療法士や作業療法士たちにとっては、到底理解出来ない困難な情報もどんどん増えてきています。
そうなると、視床はどんな役割があるか、下頭頂小葉は何をしているかなど部分的な知識のみが独り歩きしてしまい、局在的な機能のみの知識が増えて行ってしまいます。。
この様な脳科学の知見は非常に素晴らしく、医学の領域に対する貢献も計り知れなと思います。
ですが、いざリハビリにこのような脳科学の知見を取り入れるのは容易ではありません。
これらの知識は、脳画像との親和性の高さは言うまでもなく、予後予測や症状の予測に役立てるなど全てがリハビリに持ち込むことが難しいわけではありません。(こちらもご参考ください⇒高次脳機能障害と行為の関連

では、脳画像にいかす他にリハビリに取り入れられる場面はあるのでしょうか?
そこで1つ、視点を変えて考えてみます。
脳出血や脳梗塞の様に、脳を直接損傷した場合や、慢性痛などの様に器質的に脳が変化していく場合では、「どこを損傷したのか」「どこが機能不全を起こしてるのか」に着目します。
ですが、脳を損傷したり機能不全を起こしたりしている患者さんは、損傷や機能不全を免れた部位で生きています
つまり、患者さんの振る舞いや一人称(言葉)は、

  • 損傷している脳部位が悪さをしている視点
  • 生き残っている部位が何とか頑張っている視点

の2つの考え方があるのです。

例えば、側頭葉を損傷すると言語による「意味」に関する認知に問題が生じることがあります。(コップを見れば「これはコップだ」と言わなくて頭では理解しています。このように自分の感覚を知覚し、それを認知することを意味付けと言います)
そうなると、「意味付け」をしないように脳は活動していくという考え方です。(コップを見てもコップだという意味付けではなく、水を飲む道具のような具合。もちろん反対も考えられる)
この考え方に基づくと、患者さんの話す言葉や振舞いは、今生き残っている脳でどうにかして意図通りに行為を遂行しようと動いた結果と考えられます。
つまり、患者さんの振る舞いや話す言葉を紐解いていけば、患者さんの生き残っている脳の状態を理解できて、どういうリハビリをすれば患者さんが理解でき改善に向かっていけるのかを考えられるようになります。
反対に、正常の行為や振舞いと患者さんの行為や振舞いを比較することで、実際の患者さんの問題点(ネガティブ面)と得意な点(ポジティブ面)を抽出することが出来るのです。

このことを応用すると、リハビリの介入場面で患者さんの脳のどこが働いているのかを推測できるようになります。

患者さんの思考を思考する

介入中に患者さんが何を考えているのか?想像したことはありますか?
触れている感じが分からない…動いている感じがわからない…動かし方がわからない…患者さんはリハビリをしながらいろいろなことを考えています。
私たちセラピストは、患者さんの感覚-知覚を通して接しています。今患者さんが何をどう知覚しているのか?を考えることは、患者さんの脳を想像することと非常に近しいプロセスになっていきます。

例えば、麻痺側の肘関節をセラピストが他動的に屈曲伸展しながら「動いているのはわかりますか?」と聞いたとします。この時セラピストは、患者さんの前頭葉と頭頂葉を中心に働かせていることになります。
患者さんは動いている【だろう】肘関節に注意を向け、感覚を処理する頭頂葉からくる情報を前頭葉で待つことになります。
この時、患者さんには、

  • 肘に注意を向けるべきなのか
  • 肘が動くことで生じる感覚に注意を向けるべきなのか
  • 肘を動かすことで移動する手に注意を向けるべきなのか

の選択肢が生じることがわかります。このどれに注意を向けたのかを患者さんに聞くことで患者さんの注意の癖を掴むことが出来ます。

このように、自分が今脳のどこに働きかけているのかを念頭に置いて、患者さんに質問をしながら、また振舞いを良く観察していくことが脳血管疾患の患者さんや慢性疼痛の患者さんとのリハビリでは特に大切です。

科学が発展する中、リハビリテーションには今以上に情報があふれかえっていきます。
それらの情報をいかに自分の臨床にいかしていけるのかが、今後のセラピスト人生を大きく変えるかもしれません。
自分の臨床にどういう情報がいかされているのかが、自分だけの臨床の基盤になっていきます。
あなたに合った情報はなんですか?

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今回は脳卒中のリハビリで頻繁に遭遇する「感覚障害」がテーマです。

「触っている感じが分からない」
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このような患者さんが感じられるようになるためにはどうすれば良いのでしょうか?。

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脳科学、神経心理学をもとにリハビリの臨床に応用しながら考えて行く、実際に行っている方法をご紹介いたします。
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時間:20:00~22:00(予定)+質疑応答
定員:50名(先着順ですのでお早めにお申し込みください)
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(Peatixのイベントページより入場できますが、トラブルの時のため当日までにメールアドレスへURLをお送りいたします)
参加費:資料の【有り】【無し】で金額が異なりますのでお間違えの無いようご確認の上お申し込みください。

  1. 資料あり:2,000円(前日までに資料をお送りいたします)
    ※3日前以降に参加申し込みをされた方に関しましては、セミナーまでにお送りいたします。
  2. 資料なし:1,000円(セミナー終了後含めて、資料の配布はありませんのでご了承ください)

※本セミナーは、臨床に必要な知識や方法が内容の中心となっております。
※当日、参加出来なかった際の返金にはご対応出来かねますのでご了承の上お申し込みください。また資料をそうした後のキャンセルもご対応出来かねますのでご了承ください。

<講師紹介>


【所属】株式会社ワイズ 脳梗塞リハビリセンター

【略歴】
2010年 理学療法士免許取得 回復期リハビリテーション病院入職
2015年 現職

【執筆】
2016年 「臨床は、とまらない」(協同医書出版)
2020年 「傷ついた、脳の声が聞こえているか」(みらい学芸社)

【講演】高次脳機能障害や脳血管疾患に関する内容を中心に多数(認知神経リハビリテーション学会、MARKSTAR、人間再生研究会など)

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脳卒中がー脳の病気ーであることを忘れない

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骨折などの整形外科疾患と脳出血などの脳血管疾患の最も大きな違いはなんだと思いますか?
このように質問すれば皆さん<体の損傷か脳の損傷か>と答えるのではないでしょうか?
では、整形外科疾患の患者さんと脳血管疾患の患者さんに対するリハビリにおいて、この<体の損傷か脳の損傷か>を意識して介入しているセラピストはどれくらいいるでしょうか?

今回は、脳血管疾患が脳の疾患であることをどうリハビリにおいて考えれば良いのかを書いていきたいと思います。

脳を損傷すると何が起こるのか

脳は情報処理器官です。

その役割の多くは、身体から入力された刺激である感覚を処理することとその身体を動かすことにあります。
また、認知する、思考する、記憶する、判断する、意図するなど運動と感覚に直結する機能も持ち合わせています。
脳を損傷すると、これらすべての機能において障害を受ける可能性があり、損傷部位や程度によって症状が変化してきます。

リハビリでは、この運動や感覚に対する介入を理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が行い、認知や記憶、思考に関しては言語聴覚士(ST)が行います。
ですが、実際の生活や行為の中では、思考しながら歩いたり、記憶するために書いたり、のどを潤すために水を飲んだりと、全てがシームレスに行われています。

つまり、PT・OT・STそれぞれがお互いに何にアプローチしているのか、またそれぞれの介入で運動・感覚と思考や認知などを関連付けることが求められます。
身体に介入していく時に、整形外科疾患とは全く異なる病態であることは間違いありませんし、介入方法が同じであるわけもありません。
それ以上に、脳を損傷するとどういうことが生じるのかを理解することが非常に重要になってきます。

身体にみられている問題の原因はどこにある?

PT・OTのリハビリでは、身体を介して患者さんに働きかけます。
整形外科疾患でも脳血管疾患でもその点は変わらず、関節を動かしたり運動をしてもらったり感覚を入力したりと方法が限られてきます。

ここで重要なのは、最初に書いた通り整形外科疾患と脳血管疾患では問題点となる障害の原因が身体と脳で全く異なっていることです。
同じ身体を介して行われる介入であっても、これらの点を考慮して介入しなければ改善が難しくなってしまいます。

整形外科疾患では、痛みの改善が主目的であり、身体から発せられる痛み信号を取り除く、もしくはその痛みを処理する脳における処理過程を改善するなどが方法として考えられます。
一方脳血管疾患においては、脳が情報処理器官であることを前提に、ただ運動してもらう動作を練習してもらうでは絶対に改善しない領域が存在します。
患者さんに何の情報を処理してもらい、どの様な行動を取ってもらうのかを基本にプログラムを考えて行く必要があるのです。

このように、リハビリは患者さんに言語的または体性感覚的な情報を処理させることが主方法となり、その方法を以下に疾患によって変化させていくのかが肝になってきます。
皆さんはどのような工夫をしていますか?
ぜひ情報交換させてください!!

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脳損傷と機能解離-diaschisis-

脳のネットワークと機能解離とリハビリテーションタイトル画像

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視床出血や被殻出血、中大脳動脈梗塞など脳血管疾患では損傷する部位が特定されます。
基本的には損傷した部位が担う機能が障害を受けますが、実は損傷を受けていない部位の機能も障害を受けているのをご存知ですか?

今回は脳血管疾患において重要な知見である、機能解離(機能抑制)-diaschisis-について書いていきたいと思います。

機能解離という脳の不思議

そもそも機能解離(diaschisis)とは何なのでしょうか?
これを理解していくために、脳の不思議について知っておく必要があります。

脳には機能局在が存在しています。
前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられる新皮質に加え、視床、基底核、小脳など様々な部位から脳は構成されています。
この部位別に役割があり、脳損傷ではその損傷した部位の役割が障害を受けるというのが一般的な考え方なのは最初に書いた通りです。

この部位別の役割に加え、脳には別の視点が必要です。
脳は、神経で構成されていてその状態は網目のようにネットワークを構成しています。
つまり、部位内で情報をやり取りしているのはもちろん、部位同士で情報のやり取りをしています
頭頂葉で処理された情報は前頭葉へと伝達されるといった具合です。

このようなやり取りがありとあらゆるところで行われている脳は、部位別だけで考えるのは到底不可能で、ネットワーク別に捉えていく必要も出てきます。
ネットワークとして脳を捉えていくと、機能解離は理解しやすくなっていきます。

例えば、ABCでネットワークが作られているとします。
脳出血などでAが損傷すると、Aの持つ役割はもちろん障害を受けます。
同時に、ABCのネットワークも働かなくなり、BとCも一時的に機能を停止してしまいます。
これは、Aが機能停止しているのにBとCが活動してしまうと、Aの損傷度合いが更に重症化する恐れがあるからです。
仕組み的には、脊髄ショックのようなものと考えると分かりやすいかもしれません。

この機能解離は、1914年にMonakowによって提唱され、近年ではその詳細がほぼ解明されてきています。

患者さんをみることの重要性

このように、損傷部位以外の障害が実際に生じていることを考えると、脳画像の活用方法や部位別の症状などの臨床における使い方が大きく変化してきます。
あくまで情報の1つとして使用していかなければ、患者さんの重要な点を見逃してしまう可能性があるからです。

そうなってくると、臨床の中で患者さんを観察することの重要性が非常に高くなってきます。
患者さんの振る舞いや言動、更に検査結果や評価結果などから患者さんの特徴を把握していくプロセスがリハビリでは必須です。
この時、○○損傷だから…とバイアスをかけずに、機能解離という知見をもとに損傷部位以外の障害も視野に入れて進めていくことが大切です。

小脳の損傷によって前頭葉の機能が低下することしかり、前頭葉の損傷によって頭頂葉の機能が低下することしかり様々なつながりが脳にはあります。
臨床にこのつながりを取り込んで、広い視野で介入していきたいと思います。

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運動と感覚を分けるのはもうおしまい

運動と感覚を分けて考えるのはもうおしまい

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 リハビリでは一般的に、運動と感覚をそれぞれ分けて評価をして介入していきます。
ですが、人が行為を行う上で運動と感覚はそれぞれ密接な関係にあり、お互いに影響を及ぼし合っています。
その証拠に、運動器官である筋は同時に非常に重要な感覚器官であり、その感覚器官である筋紡錘は正確に感覚を受容するために運動を用いています。(α-γ連環)

 そこで今回は、感覚のおさらいと感覚障害について書いていきたいと思います!

感覚が脱失していたらスムーズに動けますか?

私が学生の頃に行わせていもらった臨床実習で、視床出血の患者さんのリハビリを見学していた時の話です。
その患者さんは、非常にぎこちなく動いていて、歩行においては平行棒を両手でしっかりとつかんで目で足元を確認しながら行っていました。

 その時の私は、「何の疾患なんだろう…?」と疑問に思っていましたが、担当の理学療法士の方が、

「感覚だけに障害があると運動に問題はでないと思う?」

と質問してきました。

つまり、運動麻痺がなく感覚麻痺だけがある場合、その人の行為はどうなるのか?という質問だったのですが、私は普通には動けないだろうなと思う程度でした。
実際見学していた患者さんは、脳画像からも評価からも運動障害はなかったのですが、感覚障害によって行為を思い通りに行うことは出来ていませんでした。
このことがきっかけで、私は運動と感覚の深い関係性について考えるようになりました。

人は動物である以上動きますし、環境に適応する必要がある以上知覚します。
この2つは必然なので、人の身体を対象としているリハビリでは外すことが出来ません。
またそれ以上に、人は知覚するために動き、動くために知覚しています。
つまり、運動するためには知覚できなければならず、行為において知覚は非常に重要な役割を持っています。

評価をしていく時に、要素ごとに評価してその結果を統合し問題点を抽出していく作業は非常に一般的ですが、私はこの方法をとっていません。
この方法をとってしまうと運動と感覚の関係性が見えにくく、実際の患者さんの像と少しずつずれて行ってしまうからです。

 ではどうすれば良いのか?
それは、運動と感覚を同じカテゴリーに入れられるような分析の方法を行えばよいのです。

行為をベースに考えて行く

私は、臨床の目的は運動を改善することでも、感覚を改善することでもないと思っています。
関節が曲がるようになっても、その関節の角度を行為で発揮できなければ意味がないように、動くようになってもまた感じるようになってもその人の生活が良い方向に変化しなければ意味がないからです。
つまり、リハビリの臨床においてよく見て、よく考えなければいけないのはあくまで行為であり動作でなければなりません。

 更に、臨床における介入では、患者さんの得意な部分を使えるような方法で展開されていくことが大切です。
例えば、歩行の時に立脚期が安定していない時、筋力トレーニングをするだけではなく、立脚時の足底の圧感覚を使用した介入も引き出しとして持っておく必要があるということです。

 なぜか?
1つは、運動と感覚が関係しあっていて、立脚期の問題が運動だけではない可能性があるからです。
もう1つは、行為の特性を考えていくと、歩行における立脚期では身体を支えている側の足底に荷重され、体幹の立ち直り反応が出現するなどの特異的な関連がみられます。
この時に、股関節周囲には確かに筋収縮がみられるのですが、これは立脚期の時だけに見られる収縮で、他の姿勢や運動ではこの収縮を再現することは出来ません。

 つまり、歩行という行為において、様々な知覚、反応が生じた中で筋が収縮しているのです。

 この事を考えると、運動という側面のみから介入していくのでは不十分で、感覚/知覚を交え姿勢や反応を考慮した介入が必要になってくることが分かります。
そのために、行為をベースに考えいかにその行為の特性を介入に持ち込めるのか?が勝負になってきます。
このことを前提に、観察から評価、分析までを行っていくためには、運動、感覚というコンポーネントではなく、歩行の時の立脚期に必要な能力と、能力同士の関連性を考える必要が出てきます。
 もうすぐリハビリが日本に入ってきて100年…そろそろ運動と感覚を分けて考えるのをおしまいにしませんか?

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学習と再学習からリハビリを考える

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リハビリテーションにおいて、学習はかかせません。

「○○が出来るようになる」

時には、学習が大きく関与しています。

ですが、リハビリにおける学習はそのほとんどが【再学習】によって行われます。
つまり、1度学習したことを再度学習することがほとんどです。

起き上がりや立ち上がりなどの基本動作は、脳卒中などを発症する前は無意識で行われていた動作です。
これらの動作をもう1度出来るようにするのがリハビリの目的になってきます。

この様にリハビリは再学習であることを意識して介入することは大切なのでしょうか?
今回はこの学習と再学習について書いていきます。

1度出来ていたことのメリットとデメリット

経験したことがないことが出来るようになる学習と、1度で来ていたことの再学習とでは何が違うのでしょうか?
学習にはいくつかの理論があり、学習自体の方法も様々です。
報酬を得るために、予測と結果にもとづいて洗練化していく過程をもつ学習は、今までの経験から様々な試行錯誤を行っていきます。

では再学習はどうでしょうか?
例えば立ち上がりを獲得したい時に、発症前の立ち上がりの記憶は役に立つのでしょうか?
答えはイエスです。
脳が損傷し、運動や感覚が発症前と異なっているとは言え、身体の構造などは発症前と当然変わらず、立ち上がりに必要な手順などの大切なポイントは変わりません。
つまり、発症前にどうやって立ち上がっていたのかを参考に、今の脳でどうやったら立ち上がれるのかを考えることは、再学習においてとても大切になってきます。

ですが、発症前と「同じように」立とうとすると、内反や反射などの異常な反応が出現してしまうため、今の脳で身体を認識出来ていることが重要です。

脳卒中における学習の落とし穴

先ほど書いた通り、学習にはいくつかの理論があります。
これらを参考に、リハビリを組み立てていくことは非常に重要です。
ですが、ここで1つ重要なことが見落とされてしまうことが多々あります。
それは…

【リハビリは病気を患ってしまった方を対象としていること】

 どういうことでしょうか?
つまり、学習理論がそのまま使用出来ない人が多くいるということです。

例えば、学習は今よりも効率よく出来るようになることが大切ですが、脳卒中などの疾患では効率よく出来るようになるではなく、動作をどんな方法でも出来るようになることが目的とされることがあります。

その代表例が分回し歩行です。
股関節や膝関節が上手く動かせず、歩行の時に下肢を振り出せない時に骨盤から動かすことで振り出しを行おうとします。
これは非常に効率が悪いはずですが、学習され定着していきます。

 このように、効率面ではなく動作を何とかして行うことが目的となってしまうのです。

このことに加え、脳に疾患をお持ちの方は、学習そのものが健常者とは異なる方法で行われる可能性があることを考えなければなりません。

  • この患者さんはどうやって学習していくのだろう?
  • 何が手掛かりなんだろう?

と考えて患者さんの解釈をしていくことが大切です。

 論文や知見をそのまま取り入れるだけではなく、患者さんのリハビリの参考にするという意識も大切です。

スペシャルセミナー行います!!

来る7/30に、

パーキンソン病患者に対するリハビリテーションの考え方」というテーマでセミナーを開催します!

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第3回スペシャルセミナー

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失行症の患者さんに悩んだら読むブログ

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お読みいただいている皆さんありがとうございます。
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 脳卒中の後遺症を持つ患者さんのリハビリは悩むことが本当に多いです。
お読みいただいてる皆さんの中で、右半球損傷と左半球損傷とでどちらかに苦手意識をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
 もし苦手意識がない方は非常に素晴らしいですし、お持ちの方も仕方がないことかと思います。

 今回は、左半球損傷の患者さんのリハビリが苦手な方に失行症に焦点を当てて書いていきたいと思います。

左半球損傷=言語障害の先入観をなくそう!

 右片麻痺の患者さんと言えば失語症が浮かぶのではないでしょうか?
失語症の影響でコミュニケーションがうまく取れない方のリハビリは確かに難しいです。
 このような場合は、言語聴覚士がいるのであれば積極的に連携を取っていくのはもちろん、失語症でも全失語でなければコミュニケーションを取ることは十分に可能です。
まずは、コミュニケーションを取ることが出来た経験を積み重ねていってください。

 別の視点で考えた場合では、言語障害の有無にかかわらず、動作や行為、生活を観察し分析していくプロセスは変わりません。
 失語症に気を取られすぎず、いつも通りの介入をまずはしていきます。
 その上で、言語を障害されていることによって動作にどの様な影響が出るのかも勉強していくと、さらにより良い介入が出来るようになってきます。

失行症と考えず、患者さんの特徴を捉えよう!

 失語症とは別に、右片麻痺の患者さん左片麻痺の方と比べて様々な特徴があります。
例えば、

  • 動きがぎこちない
  • 関節の動きに動きすぎ、動かなさすぎなどの違和感がある
  • 介入の効果が持続しない
  • 動作の変化がなかなか見られない
  • などなど

これらのほとんどに影響していることが多いのが、失行症です。

 動作のスムーズさ、効率性、学習など様々なことに悪影響を及ぼし、リハビリの効果を低くしてしまいます。
ですが、よくある間違いとして上にあげたような特徴が見られた時に、失行症に関する検査を行って「この人は失行症だ!」と障害名を付けることが目的となってしまうことです。

 このような手続きをすると、失行症に対するアプローチになり、

  • 失行症について詳しくないとダメ
  • 失行症に対する介入方法を知らないとダメ

となってしまいリハビリが進まなくなってしまうことが多いんです…。

 高次脳機能障害を改善する!ではなく、高次脳機能障害をお持ちの患者さんの生活を変化する!と考えるべきですし、高次脳機能障害がどう行為に影響しているのか?を考えるべきです。
 このことを考えると、失行症があるかどうかは検査するべきですが、患者さんの動きや認知面などの特徴をしっかりと捉えて、その特徴をベースに介入を考えていくことが重要です。もちろん失行症に詳しいことに越したことはありませんが、必要なことから勉強していくことも出来ます。

 ぜひ意識してみてください!!

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脳卒中後の内反と本人の気付き

内反

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脳卒中後に見られる様々な現象の中でも、動作/行為を大きく阻害する1つが<内反>と呼ばれている現象です。
内反はもともとは、足関節を母指側から背屈方向に動かす運動のことで、脳卒中後を中心とした疾患では、この足関節の運動である内反が意図せず出現してしまいます。
内反は足底と床/地面との接地面を極端に減らし、時には足関節を捻挫してしまうこともあります。
すると、立ち上がりは非麻痺側での過努力性になり、立位ではバランスが低下します。
さらに、歩行中は常に麻痺側の足首を気にして歩かなければならなくなります。
そこで、今回はこの内反に関する内容を書いていきたいと思います!!

内反と尖足

 内反と合わせて良くみられる現象が<尖足>です。
<内反尖足>といったように言われることが多いですが、明確に言うと内反と尖足は別々の現象です。
内反は既に書いた通り背屈方向の動きですが、尖足は底屈方向の動きです。
本来反対方向の動きですが、内反尖足は底屈に回内が含まれている運動と考えた方が分かりやすいかもしれません。
つまり、小指側から底屈をする感じですね。
今回は、この尖足を伴わない内反に関して書いていきますのでご承知ください。

内反に、本人は「どうやって気付いているのか?」

さて、脳卒中の後遺症には、意図していない運動が出現してしまうものが非常に多くあります。
これは内反に限りませんが、これら意図していない運動が出現しないように動作/行為を行えるようになるためには、その現象に本人が気付けているかどうかが非常に重要になります。

そこで臨床では、患者さんに
「○○の時足が力んでしまいこうなってしまっている(内反している)ことに気付いていますか?」
と質問することがあります。
この質問に対して、気付いていない場合は気付いてもらう手続きが必要なのですが、もし気付いていても注意が必要です。

 例えば、リハビリの中で言われたことがある、家族がいつも注意してくるなど知識として内反していることを<知っている>ケースです。
 その他にも、目で見れば分かるなども知識として知っているケースと同様に注意が必要になります。

なぜでしょうか?

内反のような意図しない運動の出現が動作の中で見られている場合、その動作を行った時に出現しないような動作の獲得が必要になります。
その時、自分がその動作をどうやって行っているのか?を体性感覚で知ることが重要になります。
もし、視覚で確認したり聴覚で得た知識でしか分からない場合は、常に目で確認しながら動作をしなければならないですし、誰かに指摘されなければ気付く事すら出来ません。
何より、内反が出ないように動くためには、体性感覚によって気付け、運動を自分で修正していける必要があります。
もちろん運動学習には模倣やコーチングなど、視覚や聴覚によるものもありますが、内反などの意図しない運動を改善していくためには体性感覚が重要なのです。

 これらのことを考えると、介入を進めていく前に、患者さんが内反を体性感覚で感じられているかどうか、もし感じているならどんな感じがするのかを聞くことが大切です。
皆さんの患者さんは内反に気付けていますか?

スペシャルセミナー行います!!

来る7/30に、

パーキンソン病患者に対するリハビリテーションの考え方

というテーマでセミナーを開催します!

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注意の分配性って間違えやすい。大丈夫かな…??

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昨日オンラインサロンのメンバーで症例検討を行っているなかで<注意機能>の話題になりました。

昨日書いたブログにも書きましたが(注意障害には注意が必要?!)、注意機能には様々な種類があります。

その中で昨日話題にあがったのが、<注意の分配性>に関することでした。

注意を分配するってどういうこと?

注意の分配性とは、2つ以上の対象に注意を向けることです。
その2つの対象に対する注意の量は調整することができて、1:1、2:1などどちらかを多くしたり、少なくしたりが出来ます。
この配分量は、何に基づいて決まるかというと、<意図><難易度>によって決まります。

今から自分が何の目的でどう行動するのか?
そしてそれはどれくらい難しいのか?

によって、目的を達成するためには何に注意を向けなければならないのか?が決定されるということです。

例えば、食事の場面を想像した時に、左手で茶碗を持ち、右手で箸を操作しているとします。(もちろん左利きの方は反対です)
この時、お茶碗を持っている左手と箸を操作している右手では、右手(正確には箸)の方が多く注意が向けられていると思います。
これは、箸で食べ物を掴み口に運ぶことが目的であり、より難しい操作が求められているためだと考えられます。

この注意の配分と併せて話にあがるのが、ダブルタスク課題です。
このダブルタスク課題は、2つのことを同時に遂行する課題で歩きながら話すなどがそれにあたります。
これも注意の配分の機能が重要で、2つのことに適切な注意を配分する必要がある。と考えられますが…。

意識の制限と注意の分配の矛盾

ここで1つ気を付けなければならないのが、

【人は1つのことしか意識することが出来ない】

ということです。

つまり、歩きながら話すといった2つのことを同時に行っていたとしても、話している時は歩行は意識されていません。
先ほどの食事の時も、箸で食べ物を運んでいる時は、お茶碗を持っていることは意識されていません。

よって、注意の分配を考えていくと、2つのことに同時に注意を向けている中で、それぞれ異なる注意をしているということです。

異なる注意とは何か?ですが、端的に言うと能動的注意と受動的注意になります。

  • 能動的注意とは、自分が意図的に注意を向けている状態で、食事場面でいえば箸を持っている側への注意になります。
  • 受動的注意とは、センサーの様な物で、食事の場面でいえばお茶碗を持っている側への注意で、お茶碗が落ちそうになったり、傾き過ぎたりした時に感知できるように働いています。つまり、いつでも注意を向けられる状態を保つ感じです。

このように、1つのことしか意識できない制限をクリアするために、人はいつでも意識する場所を変えられるようにセンサーを張り巡らせながら行動しています。

この意識の制限は他の方法でもクリアすることが出来ます。
例えば、股関節/膝関節/足関節が同時に動いた時、これらすべての関節の動きを知覚するためには、すべての関節に注意を分配しなければならないように思います。ですが、先ほど書いた通り意識できる関節は一つです。

ではどうすれば良いか…?
それは、下肢全体を視覚的にイメージすれば可能となります。
詳しくはサロン内で話していますが、簡単にいうとイメージが各関節の運動覚に基づいているからと言えます。

このように、注意と意識の特徴を捉えて、その制限をクリアし介入を考えて行く。
そのためには、患者さんを正確に理解し、病態を解釈しなければなりません。

みなさんは目で見える動作や運動だけではなく、目に見えない注意をどう考えていますか?
実は動作から注意を観察することも出来るんです…。

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高次脳機能障害と行為を関連付ける方法

お読みいただいている皆さんありがとうございます。
本サロンを運営している、理学療法士の唐沢彰太です。

今回は、皆さんより多く声をいただいている高次脳機能障害について書いていきたいと思います。
その中でも特に、高次脳機能障害と動作をどう関連付けて行けば良いのか?に焦点を当てて行きたいと思います。

本テーマはトレンドでもあり、先日開催された日本神経理学療法士学会のカンファレンスでも取り上げられていました。
本学会では、半側空間無視と歩行についての関連性についての討論がされており、多くの療法士が悩んでいる現状を知るきっかけにもなりました。

実際、私の職場の療法士も、どうしても高次脳機能障害と動作を分けて考えてしまう人が多く、リハビリも悩んでいるという声を聞いています。
なぜこのような事態になってしまうのでしょうか?
この点を踏まえて書いていきたいと思います。

高次脳機能障害を一言でいうと…?

そもそも高次脳機能障害の診断基準は日本ではどうなっているのでしょうか?
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障碍者リハビリセンターによると、

  1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
  2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。(省略)

とされています。
つまり、高次脳機能障害は、

  1. 何かを認知することが出来ない
  2. 何かを認知しようとすると上手くいかず、エラーが生じる
  3. 認知できることに偏りがある

これらに加え、

  1. 認知した結果を動作に反映できない
  2. ある動作において必要な認知が出来ない

と考えることが出来ます。

リハビリの臨床において、高次脳機能障害を特定していく為には、検査が必要です。
検査結果から、ある高次脳機能障害が疑われれば、追加の検査を実施したりしながら病態の解釈へと進んでいくと思います。
それらを統合し、疑いがある〈高次脳機能障害へのアプローチ〉が開始されていきます。
もちろん正確に高次脳機能障害を理解するためには検査や評価は必須です。
それは言うまでもありません。
ですが、ここには大きな落とし穴が隠されています。それは…

  1. 検査を行わなかったものに関しては、見逃してしまう可能性がある
  2. 動作との関連性を考えることが非常に難しくなってしまう

この2点をクリアできなければ、本来の目的である生活の改善を目指すことが出来なくなってしまいます。
ではどうすれば良いのか?私なりの考えを書いていきます。

【情報】の落とし穴

リハビリでの介入は、情報収集から始まります。
年齢・性別などの基礎情報に加え、疾患名・障害部位・画像所見などの医学的情報、家族構成・家屋情報・職業などの社会的情報などを包括的に収集していきます。
その中でも、医学的情報の障害部位や画像所見は、介入前に情報を得ることで、患者さんの病態予測を行うことが出来ます。
そして、高次脳機能障害の検査の選択もある程度この時点で目星をつけていきます。
効率的かつ根拠をもって介入していく為には必要な手続きになりますし、必須であることは間違いありません。
ですが、先ほど書いた落とし穴の1番である、障害の見落としが発生する可能性は否定できません。

先入観の無い観察の大切さ

事前情報を最大限に生かしていく為には、【観察】が必要になります。
事前情報は予測する事を可能にしてくれますが、時には先入観となって観察内容に干渉してきてしまうことがあります。
錐体路が損傷していないから運動は問題ないだろうという考えが代表的でしょうか。
運動障害の原因は麻痺だけではありません。
補足運動野が損傷していたり、機能解離1)によって機能停止している場合では、運動を遂行できないケースも存在します。

私は、この様な事態を避けるために、観察と分析を分けて考えています。

  • 観察:観察者の主観を入れずに、患者さんに生じている事象をそのまま記述する手続き
  • 分析:事前情報、観察結果、検査結果などを統合し、病態を解釈していく手続き

この場合、先入観によって観察内容がズレることはありませんが、記述内容には工夫が必要です。
学生の頃に習った様な、「股関節が屈曲し…」の様な、関節運動学に基づいた観察だけではなく、むしろ患者さんの【振る舞い】そのものを記述していきます。
その中には、立ち上がりの時にはどこを見ていたか、何に気を付けていたのかなどの患者さんの1人称による発言も記述していく事も大切です。
この観察の中で気になった事、違和感程度のことでも構いません。それを記録として残しておき、検査の対象にしていきます。すると、検査の対象は、

  • 事前に得た情報に基づいた検査(右の中大脳動脈の梗塞だから、半側空間無視の検査など)
  • 観察や検査、評価を行っていて気付いたこと、違和感を解釈するために必要な検査(単関節では動きは良好なのに、歩行ではぎこちない:失行症の検査など)

と幅が広がっていきます。

高次脳機能障害と行為を結び付ける

ここまで書いてきた観察と分析を分けて考える方法は、障害の見落としが減るのはもちろんですが、もう1つ利点があります。
それは、

観察の中で気付いた点や動作の違和感であるため、動作と結びつけやすい

ことです。
「本患者さんには、半側空間無視がある」ではなく、
「歩行の時に麻痺側の振り出しがぶらぶらしているように見えるのは、全身動作において麻痺側に注意喚起が難しいからだ」
と、行為において生じている現象を理解するために、認知機能や注意機能の検査を行っていきます。

介入の一連の流れに、観察を取り入れ、検査の持つ意味合いを少し工夫すると、高次脳機能障害と行為とのつながりが見えやすくなるのではないでしょうか?
もちろん、この観察はすぐに出来るようになるわけではありません。
特に関節運動を中心に観察する方法を学校で習ってきた理学療法士は、観察の方法を工夫したり、時には1から組みなおす必要もあるかもしれません。

ですが、このような観察は訓練の幅そのものも広げてくれると考えています。
動作と高次脳機能障害の関係性が理解できていれば、訓練もおのずと認知的な側面(高次脳機能障害は認知障害であることを前提に)を考慮したものへと変化していきます。
つまり半側空間無視への介入、歩行への介入ではなく、

半側空間無視を呈している人への歩行改善を目的とした介入

です。
つまり、もっと歩きやすくなってもらう為には、患者さんを半側空間無視がある人として捉えて、訓練を工夫していくイメージです。

現在のリハビリでは、

  • 歩行を改善していくためには、半側空間無視を改善していかなければならない
  • 半側空間無視のあるなし関係なく歩行練習をおこなっていかなければならない

など、いろいろな考え方があります。
その中でも私は、高次脳機能障害を認知の癖として考えて、介入方法や関わり方、コミュニケーションまで全てをプランニングしていきます。

『こんな観察できるようになりたい!!』
『そんな訓練どうやってやるの??』

そう思っていただいた方、一緒に勉強してみませんか?

1)機能解離:限局性脳病変から離れて発生する神経生理学的変化を説明するために、1914年にvon Monakowによって提唱された概念。機能的に連結している部分などの脳血流量の減少や過剰興奮などが観察されている(E Carrera,et al 2014)

脳損傷と機能解離(プロリハ研究サロンblog)

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